
先日、修理を終えてコーヒーを一口。ふぅ、と息をついた瞬間にドアが開いて、ご年配のお客様が早足でご来店。「ログインができない!」——開口一番、その一言に私の心拍数は一気に上がりました。
お話を伺うと、マネックス証券にログインする際の「二段階認証」で止まってしまうとのこと。しかも登録の電話番号がご本人の携帯ではなく、奥さまの番号。届くのはSMS(ショートメッセージ)なのに、その受け取り方がわからない……という状況でした。
正直に言うと、証券会社やECサイトのログイン絡みは「最終的にはご本人確認」が必要になるため、店側でできる範囲に限りがあります。とはいえ、困っている目の前の方を前に、ただ「証券会社に電話してください」では私の良心が落ち着きません。そこで、その場で仕組みをほどき、今後の“迷いにくい道順”を一緒に作ることにしました。
まずは用語をやさしく整理
二段階認証(MFA)ってなに?
パスワードに加えて、もう一つの鍵を使う仕組みです。具体的には
- スマホの「認証アプリ」で出る6桁のコード
- 携帯電話に届く「SMSのコード」
- 登録メールに届く「ワンタイムパスワード」
のどれか。お財布を二つ持つようなもので、片方を落としてももう片方で守るイメージです。
固定電話にSMSは届かない
ここが今回の“詰まりポイント”。SMSは携帯電話向けの仕組みなので、家の固定電話には届きません。「固定電話に音声で読み上げてくれる仕組みは?」と思われる方もいますが、少なくとも現状のマネックス証券のログイン用MFAに“音声読み上げ”はありません(注文機能での音声入力は別物)。
店頭で見えた“つまずき”の正体
- ご本人のログインID・パスワードは合っている
- 二段階認証が「SMS」に設定されている
- しかし登録番号は奥さまの携帯、または固定電話
- 結果、コードが“見られない/届かない”で行き止まり
若い人からすれば「奥さまのスマホに届いたコードを聞いて入力すればOK」ですが、画面表示がいつもと違う・メッセージアプリがどこにあるかわからない——それだけで不安が積み重なります。
今日すぐ役立つ「緊急対応フロー」
第1段階:状況を整理(3分)
- 登録している電話番号は「誰の、どの端末」か確認
- その端末でSMSを“確実に”見られるか確認
- 連絡用メールアドレスに“今ログインできるか”確認
第2段階:迂回路で突破(5〜10分)
- メール認証が使えるなら、ログイン→届いたメールの6桁コード入力でクリアを目指す
- 迷惑メールに入ることがあるので、フォルダもチェック
第3段階:自力で無理なら“コールセンター”(最短ルート)
- ログインできないとサイト上でMFA設定は解除できません
- 本人確認のうえ「MFAリセット」を依頼するのが唯一の抜け道です
- この時に「今後はメール認証にしたい」まで相談しておくと次がスムーズ
ご家族・知人が“助っ人”になるときのコツ
やること
- 画面のどこで止まっているかを、一緒にゆっくり確認
- SMSが届く端末を手元にそろえる(充電・通信OKか)
- メール認証に切り替える方針なら、使えるメールを事前に確認
- コールセンターに電話する前に、口座番号/氏名/生年月日/登録住所などの本人確認情報をメモ
やらないこと
- パスワードを口頭で言わせる(盗み聞き・聞き間違いのリスク)
- 端末を勝手に触ってアプリを削除・初期化(戻すのが大変)
- あいまいなまま複数回ログイン失敗(ロック延長の恐れ)

余談ですが、私は“助っ人過保護”のタイプで、つい全部やってあげたくなります。が、後日同じ所でつまずくので、手順を一緒に読む・一緒に押すのが正解だと学びました(自戒)。
アカウントが戻ったら、再発防止の“作戦会議”
1)認証方法は「メール」を第一候補に
- スマホの機種変更・アプリ引き継ぎが不安な方には特におすすめ
- PCでもタブレットでも確認できる安心感
2)登録情報を“現住所”にそろえる
- 使っているメール・電話番号が今の生活と一致しているか点検
- 変更はコールセンターに相談しながら確実に
3)「認証手帳」を作る(おすすめ)
- お薬手帳のように、連絡先・手順・注意点を書いたノートを1冊
- 例:
- ログイン先URL
- 認証方法:メール
- 困ったら:コールセンター番号、受付時間
- 家族連絡先(助っ人の名前と電話番号)
※ パスワードの“そのもの”は書かず、ヒントの運用に
それでも不安なときは
- 画面共有やリモートサポートで“見守り型”の支援も有効です
- 端末の「メッセージアプリの場所」「迷惑メールの見方」など、一度だけ一緒にやると、次から驚くほどスムーズになります
- 店頭に持ち込みづらい/遠方の方は、電話での段取り作りだけでも大歓迎です
まとめ:強くなる“セキュリティ”と、寄り添う“段取り”
二段階認証の強化は、お金を守るための大切な壁。でも、その壁を越えるための“踏み台”——わかりやすい案内や代替手段、そして人の手助け——が足りないと、必要な人ほど足止めを食います。
- 固定電話にSMSは届かない
- 自力で解除は難しいときはコールセンターでMFAリセット
- 復旧後はメール認証を第一候補に
- 「認証手帳」で家族と共有
私も、新しい画面に出会うたびに内心ザワっとします(機械屋なのに)。だからこそ、次は迷わないための“段取り”を一緒に作りましょう。もし同じようにお困りの方がいれば、この記事をそっと渡してください。「なんだ、私だけじゃなかったんだ」と肩の力が少し抜けるはずです。
固定電話や、見られない番号が登録されていれば、そこでストップ。技術の問題なので「設定が悪い」わけではありません。ここをハッキリ伝えると、ご本人も気持ちが軽くなります。