
中国製ルーターの不買運動に思うこと
「TP-Linkやめとけ」と聞いて、ふと立ち止まる
「中国製のWi-Fiルーターなんて使ったら情報抜かれるよ」
先日、そんなコメントをYouTubeのレビュー動画で目にしました。対象はTP-Linkという中国のメーカー。個人的には「ああ、またか…」と肩を落としながらも、気になってしまったんです。だって、うちで使ってるの、がっつりTP-Linkなんですから。
しかも、安くて性能もいいし、正直これまで困ったことなんて一度もないんですよ。設定も簡単だし、親にも勧めてしまったくらいで。
それなのに、「やめとけ」だなんて。ちょっと待って、それ本当に「やめるべき」話なの?と、今回の騒動を少しだけ深掘りしてみました。
脆弱性、確かにありました
まず事実として、TP-Link製のいくつかのWi-Fiルーターに脆弱性が発見されました。具体的には、OSコマンドインジェクションという種類の問題で、ルーターに不正な命令を送り、外部から乗っ取られる恐れがあるというものです。
影響を受けた製品は以下の通り:
- Archer AX3000
- Archer AXE75
- Archer AX5400
- Archer Air R5
- Archer AXE5400
- Deco X50
- Deco XE200
ご安心を。これらの問題、すでに修正済みです。
TP-Linkはファームウェアを更新して対応済みで、Web管理画面や専用アプリ(Tether/Deco)からアップデートできるようになっています。もちろん、私も速攻でアップデートしました。ルーターが壊れるよりも、こういうことのほうが怖いですからね…。
TP-Linkが情報を抜いているという根拠は?
国家レベルの指摘は一切なし
まず大前提として、公的な証拠や公式な報告は一切出ていません。
たとえば日本のIPA(情報処理推進機構)やアメリカのNIST(国立標準技術研究所)といったセキュリティ機関から、「TP-Linkが意図的に情報を抜いている」とする発表は、現時点で確認されていません。
セキュリティ研究者たちも、TP-Link製品の脆弱性に関しての調査はしていますが、それはどのメーカーにもある話。「意図的なスパイ行為」などとはまったく異なる内容です。
噂の大半は感情論ベース
「TP-Linkは危ないらしいよ」といった声は、YouTubeのコメント欄やX(旧Twitter)、5ちゃんねるなどでたくさん見かけます。ですが、その多くが「中国製だから」という思い込みに近いもの。裏付けのある話は、ほとんどありません。
私も最初は心配になって検索してみました。でも出てくるのは、噂のコピペばかり。これでは何が本当かわからなくなります。
情報を抜いていないと考えられる理由
脆弱性が見つかるたびに、ちゃんと修正している
TP-Linkは、脆弱性が発見されると、比較的早い段階で修正ファームウェアを公開しています。これは、「やばいから隠す」のではなく、「問題があればちゃんと直す」姿勢の表れだと私は思っています。
仮に情報を抜く目的で作られていたなら、「バレたら直す」なんてこと、かえって怪しさ満点じゃないですか?それを堂々と修正して、公開までしている。これは信頼材料のひとつです。
世界中の認証を取得して市場に出している
TP-Linkのルーターは、欧州のCEマーク、アメリカのFCC、その他各国の認証を通過して販売されています。国をまたいで販売するためには、一定の基準をクリアしなければなりません。
もしも本当に「スパイウェア入りのルーター」を出していたら、さすがにどこかで引っかかるはずですし、国際的な制裁対象にもなり得ます。そういったリスクを負ってまで情報を抜くというのは、かなり現実味に欠ける話だと思います。
スマホアプリの方が、よっぽど情報取り放題です
ちょっと冷静に考えてみましょう。
今や私たちの個人情報のほとんどは、スマホの中にあります。位置情報、通話履歴、マイク、カメラ、連絡先……これらにアクセスできるアプリがあれば、ルーターを経由するよりも遥かに直接的に情報を抜けてしまいます。
つまり、もし本当に「情報を抜きたい人(国)」がいるなら、ルーターを改造するより、スマホかアプリに紛れ込ませた方が早くて簡単なんですよね。
なので、ルーターだけを過剰に疑うのは、少しピントがズレている気がします。
実際のところ、ほとんどが「Made in China」
そもそも今の世の中、中国製品を完全に避けて生活するのって、ほぼ無理です。皆さんが普段使っているスマホや充電器、電源タップにいたるまで、内部を開けてみたら「Made in China」のオンパレードです。
因みに皆様が使っているかもしれないAnkerの充電器、便利で人気ですがあれも中国発ですし、むしろ世界中で使われてる信頼のブランドです。
Ankerは2011年に元Googleのエンジニアだったスティーブン・ヤン氏が、中国で創業しました。本社は中国の湖南省長沙市にあります
日本メーカーのルーターだって、中の基板やチップセットは海外製がほとんど。完成品が「日本製」と書かれていても、パーツ単位で見たら、どこ製なのかなんて判断しきれません。
「買い替え=正義」ではないという話
私のところにも、「TP-Link危ないんですか?今すぐ買い替えたほうがいいですか?」という問い合わせが何件か来ました。でも、ちょっと待ってください。今回の問題は、買い替えるよりも、ファームウェアを更新することのほうが大切です。
確かに中国製品に不安を感じる気持ちは理解できます。でも、TP-Linkの今回の対応を見ていると、「あ、この会社、誠実にやってるな」と私は感じました。安価で高性能、そしてアップデート対応もしてくれる。個人的には評価に値すると思っています。
ちなみに、所持されているWi-Fiルータは現在も修正ファームウェアの提供はされていますか?また、都度アップデートは実行されていますか?もしサポートが終了しているのであれば、お買い換えの時期かもしれません。どのメーカーも、どの機種も、お買い換えの時期は「サポート期間次第」なのです。
人柱としてTP-Link、使ってます
はい、ここだけの話ですが、うちはTP-Linkを3台使ってます。一応、私は「人柱枠」ですので(笑)、色々試してますが、少なくとも今のところ、個人情報が漏れたとか、不審な通信があったという事実は一切ありません。
最後に、今回の一連の話の結論をまとめると、
ルーター選びは、値段やブランドだけじゃなく、サポート体制やファームウェア更新の継続性を含めて、総合的に見て判断すべきです。
そして一番大事なのは、使っている自分自身が、正しく管理しているかどうか。
「怖いから買わない」ではなく、「知って、対策する」。そんな姿勢で製品と付き合っていけたら、もっと安心して暮らせると思いませんか?
今すぐやるべきことリスト
それだけで、今回の問題の大半は回避できます。
ルーターも「家の玄関」です。鍵は、ちゃんと最新にしておきましょう。