
先日、お客様のパソコンをお渡しする際に、とても印象的な出来事がありました。
その方は普段からスマートフォンもXboxも器用に操作されていて、「ゲームに強い人」という印象だったんです。ところが、フォートナイトを入れたいという話になったとき、ふいにこう聞かれました。
「インストールって何ですか?」
――正直、驚きました。だって、スマホにもXboxにも“インストール”という言葉は存在しますし、日常的に触れているはずです。でも、考えてみれば今の時代、アプリはボタンひとつで勝手に入ってくれるし、ゲーム機も自動でダウンロードしてくれるものばかり。「インストール」という行為そのものを意識しないまま使えるのが、今の当たり前なんですよね。
その事実に気付いた瞬間、むしろ私は少し嬉しくなってしまったんです。
新しい世界へ踏み出す瞬間に立ち会える喜び
この方は、ここからパソコンという新しい世界へ踏み込もうとしている。
操作の幅も、覚えることも、苦労することも、そして楽しさも――全部これから。そう思うとたまらなくて、つい熱が入ってしまいました。
もともと専用ハードウェアの世界では操作は単純明快です。YouTubeの配信も、プラットフォームの配信も、ボタンを押せばすぐできる環境が整っています。
ところがパソコンは違う。フォートナイトをするだけでも、
- まずEpicからゲームをダウンロードしてインストール
- 配信用ソフトもダウンロードしてインストール
- そのあと配信プラットフォームのアカウントでログイン
- キャプチャー画面を設定
- そしてようやくゲーム開始
という具合。
「ゲームができるまでの工程」が、完全に別物なんですよね。
周辺機器が“挿すだけ”で動かない世界へ
さらに、パソコンの奥深さを象徴するのが周辺機器。
ゲーム機なら、マイクもキーボードもマウスも挿した瞬間に動いてくれます。でもパソコンはそうはいきません。専用のデバイスであればドライバーだの互換性だの、設定だの、“ちょっと面倒だけど慣れたら楽しい世界”が広がっています。
そのあたりもひとつひとつ、丁寧にお伝えしました。
ゲーム機からゲーミングPCへ
私はこれまで数えきれないほどのパソコンを納品してきましたが、“完全にゲーム専用機から、初めてのゲーミングPCへ乗り換える”というケースは実は意外にも多い。
ですが「プロゲーマー仕様の環境だけ整えているのに、パソコン本体を持っていない」という状態は、なかなか新鮮でした。
だからこそ、今回のご依頼は私にとっても貴重な体験でした。これからの時代、こういったお客様がどんどん増えていく気がします。
これから始まる、お客様だけのPCゲームストーリー
お話をしているうちに、「あぁ、この方はいま新しい扉を開いたんだな」と感じました。
ゲームがただ遊ぶものから、“自分で環境を作るもの”になる瞬間。その立ち会いができるのは、修理屋として本当に嬉しいことなんです。
今回の経験は、私にとっても忘れられない一件になりました。こうしてまた、誰かの“最初の一歩”のお手伝いができることに感謝しながら、今日もお店に立っています。














