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お金がなかったから、全部自分で作った

店舗写真

今日は少し、技術の話から離れて雑記として書かせてください。

開業当初の私は、正直に言ってお金がありませんでした。パソコン修理屋を名乗ってはいましたが、立派な設備や専用機材なんてものはなく、あるのは中古パーツと知識と、あとは「なんとかするしかない」という気持ちだけ。

だから、修理やデータ復旧に使う機材のほとんどは自作でした。既存のパソコン部品を寄せ集めて、試して、失敗して、また組み直す。今思えば、よくそれで商売を始めたなと思います。

15年前の自分に、もし声をかけられるなら、「そのやり方、間違ってないから続けていい」と、たぶん私はそう言うと思います。

開業したばかりで、お金もなく、立派な機材もなく、それでも目の前のパソコンとデータに必死に向き合っていた、あの頃の自分にです。

大手には、どうやってもかなわなかった

当時から、大手のデータ復旧会社さんの存在は知っていました。専用クリーンルーム、専用機材、専門スタッフ。どう考えても、同じ土俵に立てるわけがありません。

それでも、「じゃあ諦めるか」と言われると、そうもいかない。目の前には困っているお客様がいて、「データを何とかしたい」という声がある。

だったら、自分にできるやり方でやるしかない。それが、手探りの自作データ復旧環境でした。

思いがけず、評価された“変な機材”

数年が経った頃のことです。とある大手のデータ復旧会社さんの方が、当店に来店されました。

正直、最初は少し身構えました「こんな環境を見せて大丈夫だろうか」と。ところが、私のデータ復旧用のハードを見た瞬間、

「これは面白いですね」
「かなりユニークです」

そう言って、興味を持ってくださったのです。

サテライト店という形でつながったご縁

その後、改めてお話をいただき、当店をサテライト店のような形でお願いできないか、というご相談を受けました。

開業当初、必死で作った機材が、まさかそんな形で評価されるとは思ってもいませんでした。

その関係は今でも続いていて、できることは当店で、難しいことは大手さんで、お互いに補完し合う形を取らせていただいています。

アイアンマンの“最初のスーツ”みたいな存在

今の私のデータ復旧環境は、当時と比べればかなり進化しました。性能も安定性も、段違いです。それでも、あの最初の機材を、私は手放せずにいます。

例えるなら、アイアンマンのプロトタイプスーツ。ゴツゴツしていて、効率も悪くて、今の基準で見れば非効率。でも、あれがなければ今はない。

今でも、その機材を使って復旧を行うことがあります。理屈ではなく、感覚として「分かる」機材だからです。

準備が万全じゃなくても、勝てる場所はある

開業して15年。今では資金もそれなりに整い、良い機材を導入することもできます。それでも、大手と真正面から張り合おうとは思いません。理由はシンプルで、張り合う必要がないからです。

小さい店だからこそできること。特に「スピード」と「距離感」は、大手には真似できません。

目の前で作業をし、「できるだけ早く直してほしい」というお客様の気持ちと、こちらの姿勢が噛み合う。その結果、市内だけでなく、市外からのデータ復旧依頼も、今なお多くいただいているのだと思っています。

できないことは、無理をしないという選択

もちろん、復旧できないケースもあります。魔法使いではないので、どうにもならないこともある。そんなときは、無理をせず、大手企業様のサポートをお願いする形を取っています。

意地を張らない。抱え込まない。それも、長く続けるための技術だと思っています。

手作り感のある店に、なぜか惹かれてしまう

最近は、パソコン修理屋に限らず、飲食店やアパレルのお店を見ることも増えました。面白いな、と感じる店は、だいたい「手作り感」が強い。資金が潤沢ではない分、その人の考え方やクセ、工夫がそのまま店に出ている。

私は、ピカピカの大型店より、カウンターだけの店のほうが落ち着くタイプです。

お金がないことは、必ずしもマイナスじゃない

これから開業を考えている方にとって、「お金がない」という状況は、相当な不安だと思います。

でも、個人的にはこうも思っています。お金がないからこそ、考える。工夫する。結果として、人と人がつながる。

それでお客様とつながれたなら、もう十分“勝ち”じゃないでしょうか。

これからも、意固地にならずに

これからも、原点は忘れずに。
意固地にならず、柔軟に。

一つ一つのご相談に、丁寧に向き合いながら、自分なりのやり方で、続けていければと思っています。

派手じゃなくていい。
でも、ちゃんと届く仕事を。

そんなことを、あらためて実感した今日の雑記でした。