
その「なんとなく遅いWi-Fi」、本当の原因は?
「動画が止まる」「Wi-Fiマークは出てるのに繋がらない」「Zoomが固まる」——。お客様からそんな相談を受けるたびに、私はルーターを見ます。
そして9割の確率で出てくるのが、“Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)”のままのルーター。見た目は問題なさそうでも、中身は2013年の技術。スマホの性能が年々進化しているのに、通信の入口だけ12年前のまま、というケースが本当に多いのです。
私も昔、「まだ動くし大丈夫」と言いながら同じルーターを7年使っていました。でも、ある日気づいたんです。——“繋がる”ことと“守られている”ことは別物なんだ、と。
理由①:通信が渋滞している — Wi-Fi 5の“構造的欠陥”
Wi-Fi 5の時代は良かった。でも今は、家の中が「小さなデータ交差点」になっています。スマホ、ノートPC、スマートスピーカー、プリンター、テレビ、IoT照明。
Wi-Fi 5は、通信を「1台ずつ順番に」処理しています。つまり、10台繋がれば“10台分の順番待ち”が発生、これが「なんか重いな…」の正体です。
Wi-Fi 6では、この構造を根本から変えました。OFDMAとMU-MIMOという技術で、「同時に話せる」仕組みを実現。リビングで動画を観ながら、子ども部屋でオンライン授業をしても、お互いに干渉しない。
私の店のバックヤードも、監視カメラとクラウドPCが同時に動くのですが、Wi-Fi 6に変えた瞬間に“音が静かになった”ほどです。通信エラー音や接続再試行のログが、ピタッと止まったのです。
理由②:あなたのネットは守られていない — WPA2の落とし穴
Wi-Fi 5の頃に主流だった暗号方式「WPA2」。これが実は、2017年にKRACK攻撃という大きな脆弱性を突かれました。
簡単に言えば、「暗号鍵を再利用するタイミングを狙って通信を覗かれる」リスク。つまり、あなたの家のWi-Fiに外部からアクセスされる可能性がゼロではないということです。
Wi-Fi 6では、これを根本的に解決するWPA3が標準搭載されました。仕組みはまったくの別物で、通信の“パスワードそのもの”が流れません。たとえるなら、レジでクレジットカードを渡す代わりに「本人確認だけ」して支払いを済ませるようなもの。
さらに、「管理フレームの暗号化(PMF)」という守りの盾も追加。誰かが“強制切断”を仕掛けてきても、跳ね返すようになっています。
もう「WPA2のまま」は、古い鍵をつけたまま出かけるようなものです。
理由③:Windows 11の力を引き出せ — 今こそWi-Fi 6環境に
Windows 11は、セキュリティも通信制御も非常に賢いOSです。しかし、その実力を引き出せるかどうかは「ルーターとアダプタ」の相性で決まります。
まずやるべきは、ルーターの交換。Wi-Fi 6/WPA3対応ルーターに変えるだけで、通信の質が劇的に変わります。
次にチェックしてほしいのが、PCのWi-Fiカード(NIC)。「802.11ac」と表示されている場合、それはWi-Fi 5です。「ax」になっていればWi-Fi 6対応。
古いノートPCでも、USB接続のWi-Fi 6アダプタを使えば即アップデート可能です。実際、私も古いノートをこれで生き返らせました。Zoom会議での音ズレがなくなり、ファイル転送速度が3倍に。まさに“ネットの酸素が濃くなった”ような感覚でした。
実体験:Wi-Fi 6に変えた日、店の空気が変わった
店のネットワークをWi-Fi 6に変えた日のことは、今でもはっきり覚えています。設定を終えて一息ついた瞬間、ルーターのランプが静かに光り続けていました。
「……あれ、いつもより静かだな」
そう思ってログを確認したら、再接続エラーが一つもない。以前ならスマホのバックアップ中に“切断→再接続”が頻発していたのに、それがゼロ。たったルーターを変えただけで、ここまで違うのかと正直驚きました。
Wi-Fiって“空気”みたいなものだと思うんです。普段は意識しないけど、悪くなると一気に生活が苦しくなる。だからこそ、空気を新しくする感覚でWi-Fiを変える。それが「今」の暮らしには必要なんだと思います。
Wi-Fi 7を待つより「今」を守る選択を
確かにWi-Fi 7も魅力的です。でも、現実的に見ればまだ高価で、対応機器も少ない。
多くの家庭やオフィスにとって、今もっとも安全で現実的な選択がWi-Fi 6です。高速・安定・安全、そして静か。これが揃うだけで、毎日のストレスが確実に減ります。
もし今、Wi-Fi 5ルーターをお使いなら——それは「安全期限の切れた空気清浄機」を使っているようなもの。動いてはいるけど、守ってはいない。
この秋は、Wi-Fiの“衣替え”をしてみませんか?Windows 11が、本当の意味で快適になるのは、そこからです。