
今回は、ちょっと驚いた…いや、正直ちょっと残念だった「ネットワークビジネスの勧誘を受けた出来事」について、私の実体験を交えてお話したいと思います。
きっかけは“純粋なお客様”だった
ある日、パソコンの電源ケーブルをお探しの青年がふらりとご来店されました。
お話を伺うと、「自分でジャンクパーツを集めてパソコンを組んでいる」とのこと。
これ、私にとってはめちゃくちゃ嬉しい話なんです。
だって、今どき自作PCに挑戦する人って減ってきてますし、しかも“ジャンク”から構成を学んでいくスタイルは、私自身の原点と重なるものがありました。
思わず会話も弾み、ついつい「使わないジャンク部品ありますけど、良かったらどうぞ」と、マザーボードやCPU、PCケースなどをお渡ししました。廃棄予定だったので、むしろ活かしてくれるなら本望です。
そこから話は妙な方向へ…
その後は、プラモデルや修理業の話で盛り上がり、「自分も独立してみたい」と夢を語るその姿に、私も少し嬉しい気持ちになっていました。
……が、徐々に違和感が。
「近いうちに〇天に代わるECサイトが出るんです」
「食事でもしながら、詳しく話しませんか?」
「元ゲーム会社の方が登壇するセミナーがあるので、ご一緒にどうですか?」
……ん?これ、まさか。
胸の奥にうっすら浮かんだ不安が、名刺をいただいた瞬間に確信に変わりました。
名刺に書かれていたのは「LINE IDと携帯番号だけ」
一枚目の名刺は、ご本人が今勤めている大手企業のもの。しかし、もう一枚の名刺には会社名も所在地もなし。ただLINEのIDと携帯番号、そして団体名だけが書かれていました。
すぐにネットで調べてみたところ、その団体名は「ネットワークビジネス系」として有名なものでした。これには正直ショックでした。最初は本当に、パソコンや技術の話で盛り上がったのに、最後には“ビジネス勧誘”に変わってしまっていたなんて…。
こういった勧誘は、「親しみやすい話題」や「夢のある話」から少しずつ距離を詰め、最終的にはセミナー参加や商品の紹介へと誘導することが多いのが特徴です。とくにフリーランスや自営業をしていると、「仲間意識」を利用されがちなので注意が必要です。
だからこそ、その青年の話を聞きながら、少しだけ違和感を覚えてしまったんです。
「購入」はご自身で決めるということを前提に
私も以前は営業販売の仕事をしていたことがあります。でもそのとき学んだ一番大事なことは、「人に買わせるんじゃなくて、自分で決めてもらうこと」でした。
うちの店にパソコン修理をお願いしに来てくれるお客様も、誰一人として無理やり連れてこられた人はいません。ご自身で「この店に頼もうかな?」と思って、わざわざ時間を作って足を運んでくれる。つまり、それだけの“動機”があるということ。
商売って、本来そういうものだと思うんです。
ミセス・グリーン・アップルが売れた理由で例える
少しだけ脱線しますが例えば、ミセス・グリーン・アップルというバンドがなぜここまで有名になったのか、考えたことがありますか?
ものすごく単純な理由を言えば、「誰かが曲を買ったから」ではないでしょうか。誰かが、初めて彼らのCDや配信を購入して、「このバンド、いいな」と思ったから。最初の一人がいて、そのあと二人目、三人目が続いて、やがて大きな支持になった。
逆に言えば、誰一人として買わなければ、どれだけ良い音楽を作っていても、彼らは今ここにはいなかったと思うんです。
仕事って、どんな形でもいい。「誰か一人に選ばれる」ことができれば、それはもう立派なスタートです。そして、その“最初の一人”がくれた信頼を大事にすることで、人はプロになっていくんだと思います。
若者の熱意を否定するつもりはありません。ただ、現場で毎日お客様と向き合っている身としては、「勧誘し取り込む努力を行うよりも、選ばれる理由」をもっと大切にしてほしいなと思いました。
だって、今こうして私がこの仕事を続けられているのも、最初にうちを選んでくれた“たった一人”のお客様がいたからですから。
それでは、また次回のブログでお会いしましょう。