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最近よく聞く「パニおじ」って何者?

ここ最近、X(旧Twitter)やYouTubeのコメント欄なんかを眺めていると、
やたら目に入ってくる言葉がありまして。

「またパニおじ来てる」

「朝からパニおじ列できてた」

……パニおじ?なにそれ?と思いながら、プラモデルも大好きな身としては、どうにも気になってしまって少し調べてみました。

私自身、ガンプラも他のキットもあれこれ手を出した結果、例に漏れず立派な「積みプラタワー」を築いている人間です。ただ、時間がなくて積んでるのと、店に迷惑をかけてまで確保しに行くのは話が別ですよね。

というわけで今回は、

  • 「パニおじ」ってそもそもどういう意味なのか
  • ただのネットスラングで済ませていい言葉なのか
  • その裏側で今なにが起きているのか

このあたりを、私なりに整理してみたお話になります。

「パニおじ」の始まりはどこから?

「パニック買いするおじさん」から来た言葉

元々の意味はわりとシンプルで、「パニック買いをするおじさん」=「パニおじ」というスラングだそうです。

コロナ禍の初期に、マスクやトイレットペーパーの棚が一気に空になったあの騒動、覚えている方も多いと思います。あのとき、開店前から並んで、一気に買い込んでいく人たちがニュースにもなりましたよね。その「パニック買い」のノリが、そのままガンプラ売り場にも持ち込まれて、

  • 再販日や新商品の発売日になると、
  • 朝から店に押し寄せて、
  • あるだけ買い込もうとする人たち

この人たちが、揶揄を込めて「パニおじ」と呼ばれるようになった、という流れのようです。

ただのあだ名じゃなく「社会問題のラベル」になってきた

最初は、

「いや〜パニおじまた積みプラ増やしてるよ(笑)」

くらいの、ちょっと笑い交じりの言い方だったと思うんですが、ここ数年の動きを追っていくと、もう笑い話で済まないレベルのことが起きています。

  • 店の前や店内で居座る
  • 子どもから商品を取り上げてトラブルになる
  • 個人店の店主に暴言を吐く
  • 店のバックヤードや配送の荷物を勝手に漁ろうとする

そういった行為までひっくるめて、「パニおじ」と呼ばれてしまっている状況があり、もはや「ちょっとテンション高いお客さん」の話ではなく、社会問題のラベルになりつつあります。

「パニおじ」のレベル別行動パターン

調べていくと、「パニおじ」と呼ばれている行動は、ざっくり段階があるように感じました。

レベル1:積みプラを増やすだけの“自己完結型パニおじ”

いちばん軽いレベルは、

  • 入荷情報を聞きつけて早めに店に行く
  • 見つけたらとりあえず買えるだけ買う
  • 帰って積みプラタワーに追加される

――この程度で完結している人たちです。

正直、これは法律的にも完全にアウトではないし、「お財布と収納スペースが許すなら……」という世界です。私も耳が痛い側の人間ですけど、このレベルの「パニおじ」は、まだ他人に直接の被害を出していないパターンですね。

レベル2:店内の秩序を乱す“迷惑行為型パニおじ”

問題が表面化してくるのは、この次の段階です。

  • 開店直後に来て、品出し前の売り場に居座る
  • 「椅子持ってきて座り込み」みたいなことをする
  • 通路を塞いだり、店員さんにプレッシャーをかけたりする
  • 子どもが手に取った商品を「それ欲しいからちょうだい」と奪うようなトラブル

ここまでくると、もう「趣味の範囲」ではなく、立派な迷惑行為です。

地方だと「知り合いに見られたら恥ずかしい」というブレーキが働きますが、都会の大型店では、いい意味でも悪い意味でも人間関係が希薄なので、

「どう見られてもいいから、欲しいものを取った者勝ち」

みたいな空気が出やすいんですよね。この「都会の匿名性」が、パニおじ化を後押ししている面は確実にあると思います。

レベル3:個人店や店員を攻撃する“ハラスメント型パニおじ”

さらに深刻なのが、個人経営の模型店などで起きているケースです。

実際に報告されている話としては、

  • 店主に向かって中指を立てて「死ね」と暴言
  • 新品の箱を見て「汚れてるから中古だろ」と難癖をつける
  • 「やっぱり個人店はダメだな」と大声で言って評判を落とそうとする
  • バックヤードの段ボールを勝手に開けようとする
  • 配送トラックの荷台をのぞき込む

など、「お客さんだから何をしてもいい」と勘違いしたような行動が目立ってきています。ここまでくると、もはや「プラモが好きな人」ではなく、ただのハラスメント加害者です。

実際、こうした迷惑行為に耐えかねて、「ガンプラの取り扱いをやめます」と宣言した個人店も出ています。

「客にこれ以上迷惑をかけられません。メーカーには、客に頭を下げる苦労を分かってほしい」

という店主さんのコメントを読むと、現場の疲弊ぶりがひしひしと伝わってきます。

もはや“おじ”どころではないレベル:強盗事件まで起きている

宇都宮のプラモデル店で起きた強盗傷害

「展示物やガラスケースが壊された」という話を追っていくと、もはや「パニおじ」という可愛い言葉では済まない事件にも行き着きます。

宇都宮市のプラモデル店では、4人組が店に押し入り、プラモデルなどの商品を奪い、店長さんに怪我を負わせる強盗傷害事件が実際に起きています。

  • 宇宙戦艦ヤマト
  • ガンダムシリーズのキット

など、まさに“狙われやすい商品”が被害に遭いました。ここまでくると、もはや「行き過ぎたお客さん」ではなく、完全に組織的な犯罪者です。

「パニおじ」と「強盗」には共通する“的”がある

もちろん、「パニおじ」と強盗を同一視してはいけませんが、両者にはひとつの共通点があります。

「希少なプラモデルには、金になるだけの価値がある」

という前提です。

  • パニおじ(迷惑客)は、店頭でルールを踏み越えてでも買おうとする
  • 強盗グループは、暴力を使ってでも奪おうとする

やっていることの重さは全然違いますが、どちらも“異常に高値がついた市場”の上で動いている、という意味では同じ土俵に乗ってしまっているんですよね。

どうしてここまで「パニおじ」化が進んでしまったのか

そもそも物が足りていない

一番大きな原因は、とてもシンプルです。

需要に対して、供給が足りていない。

ガンプラに限らず人気キットは、何ヶ月も前に発注しているのに、ずっと入ってこない。そんな話が模型店からもたくさん上がっています。

もちろんコロナ禍での需要増や、物流の混乱もあったと思いますが、店側からすれば、

「全部コロナのせいで済ませないでほしい」
「客に頭を下げ続けるのは小売なんですよ」

という本音があるわけです。

メーカーの事情もあるとはいえ、現場で矢面に立たされているのは、街の小さなお店たちです。

転売市場が“火に油”を注いでいる

もうひとつの大きな要因が「転売」です。

  • スマホでバーコードを読み取って
  • その場でフリマアプリの相場をチェックして
  • 利益が出ると分かれば即カゴへ

こういう“転売前提”の買い方をする人たちが一定数います。

すると一般のファンは、

「今買わないと、転売屋に全部持っていかれて、二度と定価で買えないかもしれない」

という強烈な不安に追い立てられます。その不安が、

  • レベル1:とにかく買い急ぐ
  • レベル2:店に居座ったり、子どもから奪ったりする
  • レベル3:個人店に当たり散らす

というふうに、人を少しずつ“パニおじ化”させてしまう……そういう悪循環ができているように見えます。

小売店は二重の戦いを強いられている

転売対策と迷惑客対応、両方をやらされる

業界全体では、

  • 抽選販売
  • 1人1点まで
  • 外箱に印をつけて“転売価値”を下げる

といった、いろいろな転売対策が取られています。ただ、これらは基本的に「転売屋」をターゲットにした仕組みであって、

  • 店頭で居座る
  • 暴言を吐く
  • 店員さんに絡む

といったレベル2〜3のパニおじ行為には、直接効かないんですよね。その結果、現場の小売店は、

  • システムとしての転売対策
  • 目の前の迷惑客への対応

という二重のストレスを抱え込まされています。

最悪のケースでは、前述のように

「もうガンプラの販売自体をやめる」

という選択肢しか残らなくなってしまう。
それは、真面目に楽しんでいるお客さんにとっても大きな損失です。

私たちモデラー側にできることは何か

ここまで書くと、「メーカーが悪い」「転売屋が悪い」「パニおじが悪い」で終わってしまいがちですが、せっかくなので、私たち“普通のモデラー側”の心構えも少し書いておきたいなと思います。

「パニおじ」になっていないかセルフチェック

例えば、こんなところを自分に問いかけてみると良さそうです。

  • 発売日や再販日に、店員さんを急かしたりしていないか
  • 「まだ出さないんですか?」と圧をかけるような言い方をしていないか
  • 子どもや初心者が商品を手に取っているとき、その気持ちをちゃんと尊重しているか
  • 「転売屋がいるから」とイライラして、関係ない店員さんにぶつけていないか

趣味って、本来は楽しいものであるはずなのに、その過程で誰かを傷つけたり、消耗させたりしたら本末転倒ですよね。積みプラが増えて部屋の隅で自分だけがダメージを受けるくらいなら、まだ微笑ましい「趣味あるある」で済むのですが(笑)。

店員さんへのひと言で世界がちょっとマシになるかもしれない

個人的には、ちょっとしたひと言も大事だと思っています。

  • 「いつも入荷ありがとうございます」
  • 「今日はたまたま出会えてラッキーでした」
  • 「また入れてもらえると嬉しいです」

たったこれだけでも、毎日クレームまがいの言葉を浴びている店員さんにとっては救いになるかもしれません。

「パニおじ」を笑い話で終わらせないために

「パニおじ」という言葉だけを切り取ると、なんとなくネタっぽくて、SNS的には扱いやすい“オモチャ”に見えます。でも、その裏側では、

  • 供給の問題
  • 転売の問題
  • 小売店へのハラスメント
  • そして実際の強盗事件

といった、だいぶ笑えない現実が動いています。私自身、仕事でも趣味でも「物を売る側・買う側」の両方の顔を持っているので、つい店側の気持ちを想像してしまうのですが、

「パニおじ」という言葉で片付けて笑っているうちに、気づいたら大事なホビー文化の土台が削られていた――

そんなことになったら、本当に悲しいなと思います。時間がなくて積みプラが増えていくくらいなら、まだ平和な悩みです。私もその塔の麓で正座している一人として(笑)、

  • お店へのリスペクト
  • 他のファンへの思いやり
  • そして自分の“欲しい”を上手にコントロールすること

このあたりを大事にしながら、これからも楽しくプラモデルと付き合っていけたらいいな、と感じています。

参考記事

積みプラが増える理由とパニおじについて【ガンプラ】 – note
https://note.com/yokopra/n/neaa6765bd582

【ガンプラ】再販日に買いに行ったが,まだガンプラ不足が続いてる…
https://www.youtube.com/watch?v=ZbFbTs-yl5Q  

悪質客の「死ね」発言や迷惑行為で模型店がガンプラ販売中止 (J-Cast.com)
https://www.j-cast.com/2022/02/25431803.html?p=all  

宇都宮市のプラモデル販売店で強盗傷害事件、ガンダムプラモデルなど奪う
https://www.youtube.com/shorts/kjrnh9CsGt8  

抽選販売時の買い占め対策に有効な方法
https://frauddetection.cacco.co.jp/media/fraud-access/13976/  

抽選販売による転売対策の事例(PS5、ポケモンカードなど)
https://frauddetection.cacco.co.jp/media/ec/13205/  

通信販売サイトでのトラブルにご用心! 警視庁
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/nettrouble/jirei/net_order_site.html