
ある日、一本のお電話がありました。
声の主は、とても丁寧で優しげな、若いお母さん。お子さんが高校に入学されたばかりで、授業や課題に使うためにメルカリでWindowsタブレットを購入されたというご相談でした。
「バッテリーが、もう全然持たなくて…なんとか交換できませんか?」
とにかく少しでも安く済ませようと、一万円前後の中古品を選ばれたそうです。でもそれが“7年前のモデル”。バッテリーも当然寿命を迎えていて、結論から言うと「交換は現実的にかなり難しいです」と、やんわりお断りさせていただきました。
この瞬間、お母さんはぽつりとこう言ったんです。
「やっぱり、ちゃんとしたのを買った方がよかったのかな…でも、高くて手が出ないんです」
胸が痛みました。実際、同じような悩みを抱える親御さんは少なくありません。
教育現場で“推奨”されるSurfaceの落とし穴
そこで私は、教育機関でもよく使われている「Surface」シリーズをおすすめしました。軽い、性能も申し分なし、そしてタブレットにもノートにもなる2in1設計。
でも、おすすめしたあとに訪れる“沈黙”──これもまた、いつものパターンです。
だって、高いんですよ
新品で16〜18万円。中古で探しても10万円はザラ。お母さんの予算とは天と地の差。だからこそメルカリを選んだというのも納得でした。
“推奨スペック”が現実とズレている件
ここからは、私自身のぼやきです。
教育機関が掲げる「推奨スペック」。これがまた、なかなかハードルが高い。
- タッチ操作対応
- メモリ16GB以上
- CPUはCore i5以上
- 軽くて持ち運べる
- タブレットとしても使える
……それ全部入れると、そりゃ15万円は超えますよ。
そもそも、パソコンって「贅沢品」だった時代もあったんです。私が学生だった頃は、パソコンなんて家にあるだけで「おおっ」と言われる時代でした。それが今じゃ、学生一人一台が当たり前。すごい進化ですよね。
でも、それに伴って親の負担も増えている。補助金でもなければ、なかなか身の丈に合った選択肢が見つからないのが現実です。
補助金制度は企業だけでなく、学生にもこそ必要では?
企業向けのデジタル補助金、よく耳にします。インボイス制度に合わせた補助とか、クラウド導入支援とか。
でもね、思うんです。
なんで高校生や大学生には補助金がないの?
未来を支える若者が、学びのために使うツールにこそ、国や自治体が手を差し伸べるべきじゃないでしょうか。もちろん、悪用する人も出るかもしれない。でもそれって企業も同じ。いらない機器を安く仕入れて転売されてる話、業界ではよく聞きます。
個人的には、Surfaceを購入した学生が「どう使ったか」を報告するような制度を導入して、その代わりに一部補助を受けられる仕組みがあってもいいと思うんです。
学生向けのパソコン・タブレット購入補助制度について
「全国(国レベル)GIGAスクール構想(高校段階)による補助」
国は高校生の1人1台端末整備を進めており、公立学校を通じて地方自治体に補助金(1台あたり約4万5千円)を交付しています。ただしこれは学生本人が直接申請できるものではなく、学校経由の制度です。
地域ごとに制度内容が大きく異なるため、在住自治体や進学先の学校を通じて早めに情報収集することが大切です。多くの制度は住民税非課税世帯や準非課税世帯を対象にしており、補助率も高くなっています。一方で「すべての家庭」が補助を受けられるケースは少なく、所得制限があるのが一般的です。制度の多くは新入学時限定のため、タイミングを逃すと対象外になります。
中古Surfaceは“賭け”。バッテリー問題が避けられない
さて話を戻します。お母さんは、結局またメルカリでSurfaceの中古品を探されるそうです。でもここで、ひとつだけ言わせてください。
Surfaceの中古品、ほぼバッテリー交換はできません。
バッテリーは本体内部、それも画面の裏側に接着されています。剥がすのも、戻すのも、職人芸レベル。もしこれを修理するとしたら、新品を買うのと同じくらい費用がかかることも…。
つまり、5~6年落ちのSurfaceは「もはや寿命が近い」と覚悟して使うべきです。
据え置きでACアダプターをつなぎっぱなしで使う分にはまだいいですが、「学校に持ち運ぶ」という前提では、バッテリーが持たない=もう役に立たない可能性もあります。
修理屋として、これからできること
正直なところ、私たちパソコン修理業者にとって「Surfaceのバッテリー交換不可」は悩ましい問題です。修理できないこと自体が、お客様の選択肢を狭めてしまうからです。
でも、無理なものは無理。だからこそ、正しい情報提供と、予算に応じた提案を続けていくことが、私たちの役割だと考えています。
中古が悪いわけではありません。けれど、“現実的な寿命”と“使い方に合っているか”をしっかり見極めてから選んでほしい。
そう願いながら、今日もまた、お客様にそっとアドバイスを届けています。
この補助金まわりをちょっと調べて見たよ