
お客様の「もう一人の相談相手」はスマホの中にいる
最近、とても不思議な体験をしました。
パソコン修理店を営んでいる私の前で、お客様が私の説明を聞きながら、その場でChatGPTに確認をとるんです。
「修理代はいくらぐらいですか?」と聞かれたので答えると、すぐにお客様はスマートフォンに向かって「この金額って言われたけど妥当?」とChatGPTに質問。AIが返してきた内容を見てから、「じゃあお願いします」と修理をお決めになられました。
…目の前にいるのは私なんですが、実際に会話しているのはChatGPT。なんとも複雑な気持ちになります。「あれ、私は今AIと会話をしているのかな?」と苦笑いする瞬間です。
でも大丈夫、私もAIを利用して予習をしていたことで「じゃあお願いします」に繋がったのです。
AIを前提にした接客が必要になった時代
これは私の店だけの話ではなく、きっとアパレルや自動車販売、ホテルのフロントでも同じことが起きているでしょう。お客様はスマホを片手に、「店員の説明+AIの意見」で判断する時代になりました。
つまり「お客様と対話している」つもりが、実際は「お客様とAIと三者面談している」ような状況。こちらが人間ならではの経験や直感を大事にしても、AIの回答と矛盾すれば、どうしても比較されてしまいます。
私自身もAIを「相棒」にしている
もちろん私もAIを避けては通れません。
修理の下調べではGeminiを、文章の組み立てやご案内の整理ではChatGPTを使っています。二重課金にはなりますが、もう必要経費と割り切っています。
なぜなら、お客様がAIを使ってくる以上、こちらもAIを使って事前に答えを準備しておかないと不利になるからです。「AI対抗」ではなく「AI対処」。AIをこちら側の武器にしなければならない時代になったのです。
今後のサービス業に求められること
ここからは少し一般的な視点で補足しておきます。
- AIを敵視しない
「AIのせいで仕事が奪われる」と思うとネガティブになりますが、実際はAIを活用できる人の方が信頼を得やすい - AIに任せられない部分を磨く
価格比較や基本的な仕様説明はAIで済みます。でも「このお客様にはどの選択肢がベストか」という個別判断は人間にしかできません。ここを伸ばすべきです - リスク説明や免責事項の明確化
AIを駆使したお客様ほど「事前に言っていなかった」とクレームにつながりやすい。だからこそ、免責事項を丁寧に共有しておく必要があります - 外国人観光客対応
翻訳アプリやAIを使う観光客は今後ますます増えます。この北海道苫小牧という人口18万人程度の土地でも例外ではありませんでした。だから「AI翻訳ありき」の接客準備は必須です
AIと共存する未来を見据えて
お客様がAIを使うのはもう止められません。
ならば、サービス業を営む私たちもAIを前提に動くしかない。
「AIにはできない人間らしい対応」+「AIを活用した正確で迅速な情報提供」。この二つを両輪にすることが、これからのサービス業の生き残り方だと私は思います。
少し大げさに言えば、「ChatGPTを知らない店員さん」より「ChatGPTを使いこなす店員さん」の方が選ばれる。そんな未来が、もう目の前まで来ているのです。