
最近、妙に多いんです。「SSDをM.2に換装したノートパソコンが、半年も経たずにまた起動しなくなった」というご相談。
お客様からすれば、「え?あの時新品にしたのに、もうダメなの?」という気持ちになるのは当然ですよね。そして私も正直、「またか……」と頭を抱えてしまうのです。
ここでは、私自身が実際に見てきたトラブルと、その後に分かってきた“本当の原因”について、少し肩の力を抜いてお話ししてみたいと思います。
よく見るパターン:「またBIOS画面に戻る」症状
お客様からのご相談で一番多いのは、「電源を入れるとBIOSの画面が開く」「終了してもまたBIOSが立ち上がる」というものです。これ、SSDの問題と思いきや、実はそう単純ではありません。
ASUS製やマウスコンピューター製のノートに多く見られますが、必ずしも「このメーカーが悪い!」という話ではないんです。むしろ、これらのメーカーは近年、コスパが良くて人気がありますし、ASUSのTUFシリーズなんてむしろ耐久性が高い部品を使っています。
では、なぜそんなに再発が多いのか。それが今回のテーマです。
「マザーボードの電圧が不安定説」…本当にそう?
私自身、以前は「マザーボードの電圧が不安定でSSDを壊しているのでは?」と疑っていました。なにせ、SSDを新品に交換してもまた数ヶ月後に同じ症状になるんですから。
でも、いろいろと検証していくうちに、その“電圧不安定説”には確かな証拠がないことがわかってきました。同じ環境で何十台と診断しても、コンデンサーが焦げていたり、電圧に異常が出ていたりするケースはごくわずかなんです。
それよりも、もっと見落としがちな部分が原因になっていました。
犯人は「設定」や「相性」かもしれない
意外に多いのが、BIOS/UEFIの設定ミスです。SSDを換装したときにブート順(起動の順番)をうっかり間違えていたり、クローンソフトで作業した際にMBRとGPTの設定が混在していたり。
これ、外から見ると「SSDが壊れたように見える」んです。でも実際は、物理的には壊れていない。つまり「壊れたように見えているだけ」のケース。特にOSをクローンで移行した場合、ドライバの不整合やファームウェアの非互換性が原因で、起動に失敗 → BIOSへ戻る、というループに陥ることがあります。
そして、それを「SSDが壊れた」と誤解してしまう。私も初期の頃はその誤診をしてしまい、恥ずかしい思いをしたことがあります。
交換しても再発する理由
「SSDを替えたのに、また同じ症状が出る」──これがもっとも厄介なポイントです。
原因は、SSDそのものではなく、周辺の設定やファームウェアにあることが多い。つまり、同じ設定のまま新品SSDを付けても、結局同じトラブルが繰り返されてしまうんです。
いわば、“風邪をひいたまま薬だけ変える”ようなもの。根本原因に手をつけなければ、いくら新品を入れても再発してしまう。これは修理業をしている私にとっても、毎回痛感する部分です。
実際に取るべき「再発防止策」
ここで大事なのは、「すぐにマザーボードの故障を疑わないこと」です。
まずは、
- BIOS設定の確認(ブート順位やモード)
- SSDのファームウェア更新
- OSのクリーンインストール
この3ステップを優先的に行うことをおすすめします。それでも安定しない場合、ようやくマザーボードの物理不良を疑う順番です。そして購入から4年以上経っている場合は、修理よりも買い替えを検討する方が現実的です。部品供給やコストのバランスを考えると、その方が確実に安定します。
修理屋としての正直な気持ち
正直に言うと、「再発するかもしれません」とお伝えするのは、毎回つらいです。せっかくSSDを交換して喜んでいただいたのに、半年後にまた同じ顔合わせをするのは、修理屋としても心が痛みます。
でも、それでも誤魔化したくはない。「交換すれば直りますよ!」と軽く言うこともできますが、現実はそう単純ではないのです。
だからこそ、この記事を書きました。同じような症状でお困りの方が、「あ、うちのもこれかもしれない」と少しでも気づくきっかけになれば嬉しいです。
SSDが悪者ではないかもしれない
M.2 SSDを換装したのに再び起動しない。そのときは、SSDが悪いのではなく、BIOS設定やソフトウェアの相性、ファームウェアの不整合といった“見えない部分”が原因の可能性があります。
修理というのは、部品を替えることよりも「原因を探ること」が本当の仕事。これをお読みの方も、もし同じような症状が出たら、焦らず一度冷静に確認してみてください。
…ええ、もちろん「うちのSSDも壊れたかも」と思ったら、遠慮なくご相談ください。私も一緒に頭を抱えながら、全力で原因を探しますから。














