
先日、いつものようにBTOパソコンの納品にうかがいました。
最近のBTOはWi-FiもBluetoothも標準装備で、配線いらずのスッキリ環境が当たり前。お客様のデスクをより快適に、という思いで、私はロジクールの MK250(型番:MK250GRD) ―Bluetooth対応と紹介されていたキーボード&マウスのセット― を一緒に納品しました。
「これで完璧だ」と思っていたのですが、その数日後にお客様から一本の電話。
「マウスが動かないんです」
とのご連絡。キーボードは正常に動作しているのに、なぜかマウスだけが反応しない。あの瞬間の「え、なんで?」という胸のざわつき、修理屋としてはちょっとした悪夢です。
現場での確認:キーボードは動くのにマウスが沈黙
実際に確認すると、確かにBluetoothキーボードは問題なし。しかし、同じ接続であるはずのマウスが一切動かない。電池交換・ペアリング解除・再接続…と、考えられる限りの手を尽くしましたが結果は同じ。
念のためWindows 11の最新バージョン(24H2〜25H2)関連の情報を調べてみたところ、どうやら 一部のBluetoothマウスが認識されなくなる不具合 が報告されているようでした。ただし、今回のケースはそれに当てはまる確証もなく、最終的には「特定機種との相性問題」と判断せざるを得ませんでした。
Bluetooth接続の「思わぬ落とし穴」
Bluetoothというと、「ケーブル不要でどの機器にもつながる便利な規格」という印象があります。ですが実際には、機器ごとに通信方式や省電力の制御が微妙に異なり、同じBluetoothでも“通じない相手”がいるんです。
MK250GRDはUSBドングルのない、いわゆる“純Bluetooth接続”モデル。つまり、PC内蔵のBluetooth機能を使って直接通信するタイプです。この“直接”というのがクセモノで、OS側のBluetoothドライバー、マウス内部のファームウェア、電波干渉などの“微妙なズレ”が生じると、まるで口げんかをしているかのようにお互いの信号を聞き取ってくれません。
対処法を探してたどり着いた「曖昧な答え」
今回の件では、いくつかの対策を試みました。
- Bluetoothデバイスの削除と再ペアリング
- Bluetoothアダプタの省電力設定を無効化
- ドライバとファームウェアの更新
- 電波干渉を避けるため、配置を変更
- 高速スタートアップの無効化
それでも結果は変わらず。マウスだけが、まるで無言の抗議でもしているかのように沈黙を続けるのです。
返品という判断、そしてその意味
最終的に、私はこの MK250GRDを返品する という決断をしました。これは「製品が悪い」と断定したわけではありません。ただ、私自身が実際に現場で不具合を確認し、「この製品をお客様に安心して納品できない」 と感じたことが理由です。
ロジクールというブランドは信頼していますし、おそらく環境やWindowsのバージョンによっては正常に動作するケースも多いはずです。それでも「一部条件下で動作しない可能性がある」とわかってしまった以上、私たちの立場としては、お客様の前で“確実に動く”製品を優先せざるを得ません。
今後の対応と教訓
今後、BTOパソコンの納品時には、Bluetooth製品の動作確認をより入念に行う予定です。また、初期設定段階では有線マウスや専用レシーバー方式のワイヤレスマウスを推奨し、Bluetoothは安定性が確認できてから導入するという手順に切り替えるつもりです。
特にWindows 11(24H2〜25H2)はBluetoothまわりの仕様変更が多く、ドライバーや省電力設定の影響を受けやすい時期。現場で使う側としては、“最新”が必ずしも“安定”ではないことを、今回の件であらためて痛感しました。
最後に:便利さの裏には、現場の知恵あり
「Bluetooth対応」と書かれているだけで安心してしまう。その油断を、今回のトラブルは見事に突いてきました。
でも、こうした小さな失敗が、お客様により確実で安心できるサポートを提供するための糧になる――そう信じています。
MK250GRDを返品した今も、あのマウスを見かけると少し複雑な気持ちになります。「きっと、どこかの環境ではちゃんと動いてるんだろうな」と思いつつ、次にBluetooth製品を選ぶときは、もう少し慎重にいこう――そう静かに誓いました。