
正直に言います。このニュースを見たとき、私は修理作業の手を止めて、しばらく呆然としてしまいました。2025年12月3日。PCパーツを愛する私たちにとって、あるいは街の修理屋さんにとって、あまりにも衝撃的な発表がありましたね。
あの「Crucial」が、一般消費者向けの市場から撤退する
長年、自作PCや修理の現場で「とりあえずCrucial買っとけば間違いないから」と、まるで実家のような安心感を与えてくれたあのブランドが、私たちの目の前から姿を消そうとしています。今回は、この寂しすぎるニュースと、狂ったように高騰するメモリ価格の中で、私たちがどう立ち回るべきか。いちPC好きとして、そして現場に立つ人間として、心の揺れ動きを隠さずに語らせてください。
頼れる相棒がいなくなる喪失感
「ふつう」が一番難しくなる時代
みなさん、Crucialのメモリにはどんな思い出がありますか?私は、お客様のパソコンの調子が悪いとき、まず疑う余地なくCrucialのメモリを挿していました。なぜなら、彼らは「標準(JEDEC準拠)」の王様だったからです。
派手なLEDも、ゴツゴツしたヒートシンクもない、あの緑色の基板。でも、どんなパソコンに挿しても文句一つ言わずに動いてくれる。あの「当たり前の信頼」が、もう手に入らなくなるんです。例えるなら、毎日通っていた定食屋さんが、突然「明日から高級フレンチの専門店になります」と言い出したような置いてけぼり感。
Micron社は言いました。「AI向けのサーバー需要が凄すぎるから、そっちに集中するね」と。私たちの手の届く場所から、巨人が去っていく。これが、時代の変わり目というやつなのでしょうか。
ラストランは2026年2月まで
別れの時間は刻一刻と迫っています。発表によると、私たちがお店で新品のCrucialを買えるのは、実質2026年の2月末まで。これを過ぎると、市場にある在庫限りの「早い者勝ち」になります。
「まだ時間はある」なんて思っていたら、痛い目を見るかもしれません。すでに私の周りでも、「保守用に確保しておこう」という動きが出始めています。いつものECサイトのカートから、あの見慣れたロゴが消える日は、そう遠くないのです。

なぜこんなに高くなる?「シリコンの共食い」という悪夢
AIが私たちのメモリを食べている
最近、メモリの値段を見て「眼鏡の度数が合わなくなったかな?」と疑ったことはありませんか?私はあります。32GBのキットが数ヶ月前の倍近い値段になっているのを見て、そっとブラウザを閉じました。
この高騰、単なる一時的なブームではないんです。専門用語で「シリコン・カニバリズム(共食い)」なんて怖い言葉が使われていますが、要はこういうことです。
AIを動かすための超高性能メモリ(HBM)を作るのが大変すぎて、工場がそっちにかかりきりになっているんです。HBMを作るには、普通のメモリの何倍もの場所と手間がかかります。結果、私たちが使う普通のDDR5メモリを作るラインが、物理的に減らされている。
AIが進化するのは嬉しいけれど、その裏で私たちの自作PCライフが圧迫されるなんて、なんだか複雑な気分ですよね。
2026年も、たぶん楽にはなりません
「そのうち安くなるでしょ」と、希望的観測を持ちたいところですが、現実はかなりシビアです。Micronが抜けた穴を、SamsungやSK Hynixが埋めてくれるかといえば、彼らもまた「AI特需」に夢中だからです。
安売り合戦をするライバルがいなくなれば、価格は下がりません。むしろ、この高値が「新しい普通」として定着してしまう恐れすらあります。円安の影響も相まって、日本市場での価格は、見ていて胃が痛くなるレベルです。
「静観」はリスク。「中古」こそが賢者の選択
待てば待つほど、手に入らなくなる
よく「今は時期が悪いから様子見(静観)しよう」という声を聞きます。普段なら私もそうアドバイスします。でも、今回ばかりは声を大にして言いたい。「待っても救世主は来ないかもしれない」と。
Crucialという「品質のアンカー(基準)」がなくなることで、市場は「超高い純正品」か「どこの馬の骨とも知れない怪しい格安品」の二極化が進みます。安心して買える中間層がごっそり抜けるんです。
32GBを1万円で手に入れたあなたの勝利
そんな中で、私が「これだ!」と膝を打ったのが、中古市場の活用です。実は先日、ユーザーの方が「中古の未使用品32GBを1万円で手に入れた」という話を聞いて、思わず拍手してしまいました。これこそが、今の乱世を生き抜く最適解です。

メモリというパーツは、HDDや電源と違って、動く部分がありません。つまり、物理的に壊さない限り、中古でもリスクが極めて低いんです。
新品の値段が高騰していても、中古市場(ヤフオクやメルカリ)には、まだ「過去の相場観」が残っています。企業が放出した良品や、個人のアップグレード余り品。ここにはまだ、良心的な価格の「お宝」が眠っています。
派手さより「緑の基板」を愛そう
もしこれから中古でメモリを探すなら、一つだけアドバイスをさせてください。
「ヒートシンクで着飾った派手なメモリ」よりも、「基板がむき出しの地味なメモリ」を狙ってください。特に緑や黒の基板のやつです。これらはJEDEC準拠といって、相性問題が出にくい「優等生」である可能性が高いんです。
Crucialがいなくなるこれからの時代、この「地味だけど確実なやつ」を見極める目こそが、私たちのPCライフを守る武器になります。
結論:見つけたら、迷わず掴み取れ
Micronの撤退は、一つの時代の終わりです。でも、嘆いてばかりもいられません。私たちにはまだ、中古市場というフロンティアがありますし、今のうちに確保するという手段も残されています。
「いつか買う」は禁句です。必要なメモリがあるなら、新品・中古を問わず、適正価格で見つけた瞬間に保護する。これからは、そんな狩猟民族のようなマインドが必要になるでしょう。
PCを愛する皆さん、一緒にこの「メモリ冬の時代」を、賢く、しぶとく生き抜いていきましょうね。私も、店の在庫用のCrucial、今のうちに少しだけ買い足しておこうと思います(笑)。














