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Intel第13/14世代CPUの不安定問題、そして今どうなったのか

第13・14世代Intel CPUの真実:不安定の正体と今できる対処法

店の現場から見えてきた“あの騒動”の行方

最近やたら増えてきたジャンク

先日、お客様から処分を依頼されたジャンクパーツの中に、第13世代のマザーボードやCPUがゴロゴロ混ざっていました。しかも状態の悪いものばかり。思わず「やっぱりな」とつぶやいたのを覚えています。というのも、2023年〜2024年頃にかけて話題になった、Intel第13・14世代CPUの不安定問題――いわゆる「ブルースクリーンが多発する」件ですね。あれの余波が、今になっても続いているからです。

この件、私自身もお客様から何度も相談を受け、実際に何台も検証してきました。そして今(2025年11月)時点での結論を先に言うと、条件付きで安心して使える段階に戻ったと感じています。ただし、その条件を外せばまた地獄を見ます。

あの「落ちるCPU」はなぜ落ちたのか

当初、問題が話題になった頃は「ゲーム中にクラッシュする」「高負荷をかけるとブルースクリーンになる」といった報告が多く見られました。しかし調べていくうちに分かったのは、意外にも原因はアイドル状態や軽い作業中に発生していた電圧の異常。つまり、何もしていない時間にもCPU内部では無駄に高い電圧がかかり続けていたのです。

これがじわじわと内部の「クロックツリー回路」と呼ばれる部分を劣化させ、最終的に安定動作に必要な最低電圧(Vmin)が上がってしまう。結果、ある日突然「WHEA_UNCORRECTABLE_ERROR」などのブルースクリーンが頻発し始める――という仕組みでした。

そしてこの電圧の異常は、Intel側のマイクロコード制御の不具合と、マザーボードメーカーの“盛られた設定(自動オーバークロック)”の合わせ技で起きていたというのが真相です。

Intelの修正と「決定版」マイクロコード

Intelはこの不具合に対して、段階的にマイクロコード(CPUの内部プログラム)を更新してきました。0x125 → 0x129 → 0x12B と改良が重ねられ、2025年半ばに公開された 0x12F が最終修正版となっています。これは過去の全パッチを統合した“決定版”とされており、ようやく「すべての原因を潰した」と言える状態です。

私の店でもこの0x12Fを適用したマシンをいくつかテストしていますが、今のところ再発は確認していません。パフォーマンスの低下も体感できるほどではなく、ようやく“普通に使える”状態に戻ったと実感しています。

それでも条件付きなのはなぜか

最新マイクロコードを入れたからといって、魔法のようにCPUが蘇るわけではありません。というのも、0x12Fは電圧の制御ミスを防ぐパッチであり、すでに劣化してしまった個体の修復まではできないからです。

つまり、過去に“盛られ設定”のまま長期間使われたCPUは、内部が既にダメージを受けている可能性がある。そのため、最新の対策をしても不安定が残ることがあり、その場合はCPUの交換(RMAなど)を検討せざるを得ません。

利用者がやるべき「2つの手順」

この問題を完全に回避するためには、BIOS設定とアップデートが肝になります。

  1. マイクロコード 0x12F を含む最新BIOSに更新する。
    (マザーボードメーカーのサポートページで最新版を確認)
  2. BIOSで「Intel Default Settings」や「Load Optimized Defaults」をロードする。
    これにより、マザーボード独自の“自動オーバークロック”設定(MCEなど)が無効になります。

この「Intelデフォルト設定」に戻すという工程がとにかく重要です。というのも、Intelが設計した安全電圧よりも高く設定されているボードが多く、それが今回のトラブルの共犯になっていたからです。

どんな状況の人がどうすべきか

  • これから購入する方:安心してOK。ただし初回起動前に必ずBIOSを更新し、Intel Default設定を適用する。
  • すでに使っていて問題がない方:油断禁物。内部では劣化が進んでいるかもしれないので、早めの更新と設定変更を。
  • 不安定が出ている方:まず対策をしてみる。それでも直らないなら、CPU交換を検討した方が早いです。

要するに、「予防」が最大の修理です。

店としての実感

現場で感じるのは、「不具合を引き起こす設定」が多すぎたということ。性能を上げることに熱心なメーカーが、“デフォルトで”OC気味の設定を仕込んでいたのも一因でしょう。これでは一般ユーザーが知らずに負担をかけてしまいます。

だから私の店では、組み立て時点で必ずBIOSを最新化→Intelデフォルトを読み込みという手順をルール化しました。これは自作でもメーカー製でも共通です。多少ベンチマークが下がっても、安定して動くパソコンこそ本当の性能だと思っています。

そして、これから

AMDのRyzenが順調に見えるのは、単にこの問題がなかったからであって、Intelが劣っているわけではありません。むしろ、Intelは今回の件で「安全マージンの見直し」という大切な教訓を得たと思います。同じように、私たちユーザー側も「デフォルトを疑う勇気」を持つ時代になってきたのかもしれません。

まとめ

Intel第13・14世代CPUは、今では“普通に使えるCPU”へと戻りつつあります。ただし、それは最新のBIOSと正しい設定が前提。逆に言えば、それを怠ればまた同じ轍を踏むことになります。

もし自分のPCが対象かどうか不安な場合は、CPUを捨てる前に、一度「正常化」の道を試してみてください。案外、それだけでまだまだ現役で走れるかもしれません。