
今回は、あるお客様からのご相談をきっかけに、「個人でNASを導入するリスクと難しさ」についてお話ししてみようと思います。
話の発端は、既存HDDからのデータ復旧をご依頼いただいた際に、「復旧したデータをNASに移してほしい」という追加のご相談があったことでした。このお客様、初めてNASを購入されたそうなのですが、購入先がハードオフなどの中古ショップ。箱には “簡単設定”“便利”“スマホで写真が見られる” といった魅力的な文言が並んでいたそうです。
ただ……NASは、買って置くだけで使える魔法の箱ではありません。
実際に触るとなると、ネットワークの仕組みや設定をいくつか理解しておかないと、想像以上に難しく感じるものなのです。
なぜ「NASは難しい」と感じるのか
1. ネットワークモードの罠
スマホからNAS内の写真を見たい――よくあるご要望です。ところが、
こういった状態だと、アプリはNASを探せません。「同じ家のWi-Fiに繋いでいるのに見えない…」という典型的なパターンです。
2. 外出先で使えるようにしたい問題
クラウドのように外でもアクセスしたい、というご希望もよく聞きます。しかし、外部公開の設定には
- DDNS
- UPnP or ポート開放
- セキュリティポリシー
- メーカー専用サービスの有効化
など、慣れていないと詰まりやすいチェックポイントが多数。設定を間違えるとセキュリティリスクまで発生します。
3. Windows では見えるけど Mac から見えない問題
これもNASあるある。
- SMBのバージョン違い
- AFP非対応
- 共有フォルダの権限設定
- ファイアウォールの影響
こうした“細かいけれど重要な部分”に気づけないと、意外と簡単に躓きます。
導入は簡単。でも「運用」が難しいのがNAS
NASのいいところは、
ただ、
・家庭のネットワーク環境
・使う端末
・目的(共有/バックアップ/外出先アクセス)
これらによって最適な設定が大きく変わります。つまりNASは、導入そのものよりも、導入後のチューニングで実力が決まる機器なのです。そして、そのチューニングこそが“個人で一番苦労するポイント”になります。
私が個人のお客様にはNASを推奨しない理由
法人であれば、担当者や管理者がいて運用ルールも決められます。バックアップも運用も、仕組みづくりから一貫して行えます。
しかし個人の場合、
- スマホだけで完結したい
- 家族全員が同じように使えるようにしたい
- 難しい設定は避けたい
といった“カジュアルな使い方”を想定されていることが多く、実際のNASのクセとのギャップがとても大きいのが実情です。そのため、当店では個人のお客様にNASをご検討いただく際には、必ず注意点をお伝えするようにしています。
NASは便利、でも人を選ぶ機器
NASは素晴らしい機器です。ただし、「置けば使える家電」ではないということだけ、ぜひ覚えておいていただければと思います。
ネットワークや端末環境が整っていて、必要な設定が理解できている方なら大きな武器になります。反対に、設定が噛み合わなければ、「買ったのに全然使えない…」という残念な結果になりがちです。もし今後NASを検討されている方がいれば、用途・環境・使いたい端末を事前に整理した上で運用方法を考えると失敗しにくくなります。














