
「真夏は24時間エアコンをつけっぱなしだから、うちのパソコンは大丈夫」
そう考えている方は、実は非常に多いのではないでしょうか。確かに、室温を快適に保つことはPCの熱対策において最も重要な要素の一つです。しかし、私たちプロの視点から見ると、「エアコン頼み」だけでは防ぎきれない、隠れた危険が潜んでいます。
なぜエアコンの効いた涼しい部屋でも、PCは「熱暴走」を起こすことがあるのか?
今回はその理由と、本当の意味でPCを夏から守るための、プロが実践する包括的な熱対策をご紹介します。
「エアコン神話」の落とし穴 なぜ涼しい部屋でもPCは熱くなるのか?
エアコンが効いていてもPCが熱くなる主な原因は、PC内部の「熱交換」がうまくいっていないからです。その理由は主に3つあります。
1. 最大の原因は「内部のホコリ」
これが最も多い落とし穴です。PCは室内の空気を取り込み、CPUなどの熱い部品に当てて冷やし、温まった空気を外に排出します。しかし、内部のファンや冷却フィン(ヒートシンク)にホコリがびっしりと詰まっているとどうなるでしょう?
それは、涼しい部屋で分厚いダウンジャケットを着ているのと同じ状態です。いくら周りの空気が涼しくても、熱が体にこもって汗だくになりますよね。PCも同様で、内部に溜まったホコリが断熱材となり、熱交換を妨げ、熱暴走を引き起こすのです。
2. PC周りの「局所的な温度上昇」
部屋全体の温度は25℃でも、PCが置かれている場所の”微気候”はもっと暑いかもしれません。
- PCデスクの棚の中: 空気がこもり、排出した熱が再び吸気されてしまいます。
- 壁際や家具の隙間: 排気口が壁で塞がれ、熱が逃げ場を失います。
- 窓からの直射日光: エアコンで冷やされたPCケースが、直射日光によって熱せられ、内部温度が上昇します。
3. 意外な伏兵「高負荷な作業」
エアコンの冷却能力を、PCが発する熱が上回ってしまうケースです。最新の3Dゲーム、動画の書き出し(エンコード)、大量のデータを扱う作業などは、PCに非常に高い負荷をかけ、CPUやグラフィックボードは瞬間的に100℃近い熱を発することもあります。ホコリが溜まった状態なら、なおさら危険です。
プロが実践するPC熱対策の「三種の神器」
では、どうすれば万全な対策が取れるのか?プロは「室温管理」「空気の流れ(エアフロー)」「内部清掃」の3つをセットで考えます。
神器①:室温管理(エアコン+α)
基本中の基本ですが、室温は25℃~27℃程度に保つのが理想です。 【プロのひと手間】 エアコンと合わせて**サーキュレーター(扇風機でも可)**を使い、部屋の空気を循環させましょう。これにより、部屋全体の温度が均一になり、PC周りのよどんだ空気を動かすことができます。
神器②:空気の流れ(エアフロー)の確保
PCがスムーズに「呼吸」できる環境を整えます。
- デスクトップPC: 壁や家具から最低10cmは離して設置しましょう。特にPCの背面や側面にある通気口を塞がないことが重要です。
- ノートPC: 絶対に布団やソファの上で使わないでください。吸気口が塞がり、一瞬で熱がこもります。必ず机などの硬く平らな場所で使い、PCスタンドで底面に空間を作ると効果は絶大です。
神器③:内部清掃(最重要)
これがプロの対策の核です。定期的な内部清掃に勝る熱対策はありません。
【安全な清掃手順】
- PCを完全にシャットダウンし、電源ケーブルなど全ての配線を抜きます。
- (静電気対策)作業前にドアノブなど金属に触れて、体に溜まった静電気を逃します。
- エアダスターを使い、PCの通気口やファンのホコリを吹き飛ばします。
- ノートPC: 外側から、吸気口・排気口に向かって「シュッ、シュッ」と短く噴射します。
- デスクトップPC: 側面のパネルを開け、CPUファン、グラフィックボードのファン、ケースファンなどに溜まったホコリを優しく吹き飛ばします。 ※ホコリが舞うので、ベランダなど屋外での作業がおすすめです。
半年に一度、最低でも一年に一度は内部をチェックする習慣をつけましょう。
それでも調子が悪い時は…
上記の対策を全て行ってもPCの動作が遅かったり、ファンが異常にうるさかったりする場合は、CPUと冷却ファンの間で熱を伝える「サーマルグリス」という部品が経年劣化している可能性があります。
この交換作業は専門的な知識が必要なため、無理せずプロの修理業者に相談することをおすすめします。「色々試したが改善しない」という場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
エアコンは強力な味方ですが、それだけに頼るのは危険です。
「エアコンで環境を整え、PCの置き場所で空気の流れを作り、内部清掃でPC本来の冷却性能を引き出す」
この3つの対策を組み合わせることで、初めて万全な熱対策と言えます。大切なPCを熱によるダメージから守り、厳しい夏を快適に乗り切りましょう。