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外国人労働者にとって、Wi-Fiは「家具」じゃなくて「ライフライン」

ここ最近、事業主さんからのご相談でじわじわ増えているのが、

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「うちで雇っている外国人スタッフの寮(アパート1棟)に、Wi-Fiを入れたいんですが……何をどうすればいいですか?」

という内容です。実際に話を聞いてみると、皆さん口をそろえておっしゃるのが、

  • ベッドより前に Wi-Fi
  • テレビより前に Wi-Fi

つまり、「ネットがないと生活が成り立たない」という感覚なんですね。

理由はシンプルで、海外の方は日本人ほど「電話回線での通話」を使っていません。代わりに使っているのが WhatsApp というアプリ。日本でいうところの「LINE」です。

  • 家族とのビデオ通話
  • 母国のニュースや情報収集
  • YouTubeやSNSの閲覧

これらがすべて、WhatsApp+Wi-Fi のセットで完結してしまう。だから、住む部屋の条件として「Wi-Fiがあるかどうか」はほぼ必須になっているわけです。

私たち日本人が「お風呂がない部屋はちょっと…」と思うのと同じくらい、外国人労働者にとっては「Wi-Fiがない部屋はちょっと…」なのだと感じています。

アパート1棟まるごとWi-Fi、相談内容はどんどん大きくなっている

昔は、

  • 一軒家に複数人で住むパターン
  • アパートの1室だけを寮として使うパターン

が多かったので、Wi-Fiルーターを1台置いて終わり、でどうにかなっていました。ところが最近は、

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「アパート1棟まるごと借り上げ(もしくは購入)して、そこを全員分の寮にしているので、全戸でネットが使えるようにしたい

というご相談が増えています。ここまでくると、さすがに

  • 家電量販店で5,000円のルーターを買ってきて、
  • 共用部にポンと置く

だけではまったく追いつきません。部屋数が多くなると、

  • 電波が届かない部屋が出る
  • 夜に一斉にビデオ通話や動画視聴で回線がパンクする
  • 「Wi-Fi遅いです」「繋がらないです」という連絡が頻発する

そして最終的に、その矛先はオーナーさん(雇用主)に向かうことになります。

まず整理したい「2つの視点」

ここからが本題です。アパート1棟にネット環境を入れるとき、いきなり

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「業者さんに任せるか、DIYするか」

で悩み始める方が多いのですが、その前にぜひ整理してほしいポイントが2つあります。

1つ目:建物の「物理的な条件」

  • 各部屋までLANケーブルを通すための配管(CD管)があるか
  • そもそも昔ながらの電話線しか来ていないのか
  • 壁の中に新しくケーブルを通せる余地があるのか

こういった「建物の構造」が、工事費用や方式をほぼ決めてしまいます

  • 新しめの物件 → もともとLAN配管が用意されていることが多い
  • 古い物件 → 電話線の配管しかなかったり、そもそも配管が厳しかったり

前者なら、LANケーブルで各部屋まできちんと配線できる可能性が高いですし、後者だと、既存の電話線を使う方式や、露出配線(壁の外側にモールで這わせる)に頼ることになります。

この時点で、DIYが現実的かどうかも見えてきます。

2つ目:誰が「ITヘルプデスク」になるのか

もう一つ大事なのが、運用の視点です。

  • 「Wi-Fiが繋がらないんですが」
  • 「パスワードを忘れました」
  • 「動画がカクカクして見れません」

こういった問い合わせに、誰が何語で何時まで対応するのか。DIYで全部自前でやるということは、

オーナーさん自身が「24時間なんちゃってITサポートセンター」になる

という覚悟が必要です。

これは大げさではなくて、本当に夜の22時とかに

「今日どうしても家族とビデオ通話したいのに、繋がらない」

と連絡が来ることがあります。そのときに、設定を一緒に見てあげられる人が社内にいるのかどうか。ここを見落として「初期費用が安いからDIYで!」と決めてしまうと、精神的にも時間的にも、後から大きくしわ寄せが来るパターンを何件も見てきました。

代表的な4つの導入パターンをざっくり整理

現場でよく目にするパターンを、あえて乱暴に4つに分けてみます。

モデルA:フルDIY(自作)モデル

  • 法人向けの光回線を1本だけ契約
  • そこから自力で各部屋までLAN配線
  • 部屋ごとにWi-Fiルーターを設置

工具が使える人なら、技術的には不可能ではありません。配線作業は電気工事士の資格も不要な範囲のことが多いです。

ただし問題はここから。

  • 全員が同じ回線を共有
  • 夜に動画・ビデオ通話が集中する
  • 速度がガタ落ちしてクレームの嵐

「とりあえず安くあげたけど、入居者満足度は低い」という結果になりがちで、小規模(2〜3世帯)以外にはあまりおすすめできないのが正直なところです。

そしてもう一つ、地味に怖いのが「プロバイダとの契約条件」。個人向けの安いプランで「第三者への再提供」が禁止されているケースが多く、それを知らずにやると、最悪「契約解除→アパート全戸ネットなし」という事態もありえます。

モデルB:業者に頼むが、共用部に強いWi-Fiを置くだけ

  • 専門業者に依頼して、廊下や共用部に業務用アクセスポイントを設置
  • 各部屋からは、その電波を直接拾う方式

工事は比較的シンプルで、初期費用も抑えやすいです。ただし現実には、

  • 角部屋、奥まった部屋、お風呂・トイレで電波が弱い
  • ドアを閉めると一気に速度が落ちる

という「あるある」が頻発します。

安く済む代わりに、通信品質は妥協が必要というモデルです。「とりあえずネットが全く使えないわけではないけど、快適とは言い難い」レベルを受け入れられるかどうか、という感じですね。

モデルC:業者に頼んで、各戸にちゃんと配線(おすすめ

  • 共用部に主回線を引き込む
  • そこから各部屋までLAN(またはVDSL)で配線
  • 各部屋の中にWi-Fiルーター or アクセスポイントを設置

手間も工事費もいちばんかかりますが、「安定性」と「入居者満足度」でいえばこれが一番強いです。

  • 部屋の中にルーターがあるので電波が安定
  • 有線LANでの接続も可能
  • ビデオ通話や動画視聴が想定の使い方にきちんと耐えられる

正直、外国人労働者向けに「ちゃんとした寮」を用意したい事業主さんには、このモデルを第一候補として考えていただくのがいいかな、と私は思っています。

もちろん、初期費用はそれなりにかかります。ただ、アパート経営や人材確保の観点で見ると、

半年空室が続いたら、それだけで何十万円も売上が飛ぶ

という現実もあります。

「無料Wi-Fi付き」を強みとして出せるなら、空室対策+福利厚生への投資と考えた方が、長い目ではむしろ安くつくことが多いです。

モデルD:一部の部屋だけ導入する「スモールスタート」

  • まずは数部屋だけWi-Fi導入(工事・機器レンタル込みのプラン)
  • 入居者がついてから増設していく

一棟まるごとの工事費をすぐに出すのが難しい場合や、「本当に入居が増えるのか様子を見たい」という時に向いたやり方です。

最初から全力投資するのではなく、

  1. まずは一部分で効果を確認
  2. 入居状況や満足度を見てから、全戸導入を検討

という段階的な進め方も、リスクを抑える意味ではかなり現実的です。

法律まわりは「電気通信事業法」よりも「契約条件」に注意

ここで少しだけ、堅い話も触れておきます。

結論だけ言うと、

  • アパートオーナーが「設備として無料Wi-Fi」を提供する
  • 利用料を別途取らず、家賃や共益費に含めている

という形であれば、電気通信事業法の「事業者」には該当しないとされています。つまり、「総務省に届出が必要な立派な電気通信事業」にはならないケースがほとんどです。

それよりむしろ怖いのが、さきほど少し触れた

「個人向け光回線を、第三者に再提供してはいけません」

というプロバイダ側の利用規約です。DIYで安く済ませようとして、家電量販店の個人プランを契約し、それをアパート全戸に分配してしまうと、契約違反になる可能性が高いです。

なので、

  • DIYにするにしても、回線自体は法人契約にする
  • もしくは、最初からアパート向けの一括導入プランを選ぶ

このどちらかが、安全な選択肢になります。

導入までの「ざっくり流れ」をイメージしてみる

専門業者に任せるパターン(おすすめ側)

  1. 業者候補をいくつかピックアップ
    • アパート一括導入専門の業者
    • 地元のケーブルテレビ会社
    • 大手プロバイダのアパート向けプランなどから、最低でも2〜3社。
  2. 現地調査と見積もり
    実際に建物を見てもらい、構造や配管の状況を確認してもらいます。そこで「各戸配線にできるか」「電話線を使う方式になるか」がほぼ決まります。
  3. プランとサポート内容を比較
    • 初期費用
    • 月額費用
      だけでなく、
    • 入居者からの問い合わせを直接受けてくれるか
    • サポート窓口の時間帯
      なども重要です。
  4. 契約・工事日程の調整
  5. 工事・開通 → 入居者への案内配布
    SSID・パスワードを書いた紙と、「トラブル時はここに電話してください」という連絡先をセットで配ります。

この形であれば、オーナーさんは細かい技術対応からかなり解放されます。

DIYでやる場合のざっくり流れ

  1. 法人向け光回線の契約(ここ重要)
  2. 建物の簡単な配線設計
  3. LANケーブル・工具を揃える
  4. 共用部から各部屋へ配線、部屋ごとにWi-Fi機器設置
  5. ネットワーク設定(IP・SSIDなど)
  6. その後の問い合わせ対応を、すべて自前でやる

正直、「PCやネットワークが本業です」という人以外には、かなりハードめです。さらに、問い合わせ対応が本業の時間を圧迫し始めると、「安くしたつもりが高くついた」パターンに入りがちです。

結局「いちばん安くつく」のはどれか

ここまでをまとめると、こうなります。

  • 「目先の初期費用・月額だけを安くしたい」
    → フルDIYや共用部だけWi-Fi、という選択肢も見えてきますが、通信品質やサポート負荷の面で、後からボディブローのように効いてきます。
  • 「自分の手間・リスクも含めて、トータルで安くしたい」
    各戸配線型の専門業者プラン(モデルC)が、結果的にいちばん「安くつく」ことが多いです。

外国人労働者の方々にとって、

  • 安定したWi-Fiがあるかどうか
  • 家族とストレスなくビデオ通話できるかどうか

は、働き続けるうえでの満足度に直結します。

オーナー側から見ても、

  • 「無料Wi-Fi付き」「スマホ1台あればすぐ使える」
    というのは、求人や入居募集のときに出せる立派な強みです。

おわりに:Wi-Fi設備は「福利厚生」と「空室対策」の中間みたいな存在

私自身、PCサポートという立場でこうした相談を受けていると、

「どこまで自分たちでやるべきで、どこからを専門家に任せるべきか」

という線引きに悩んでいる事業主さんが多いなと感じます。Wi-Fi環境の構築は、その典型例です。

  • 自分でできそうな気もする
  • でも、失敗したときのダメージも大きい
  • しかも「動かなくなったタイミング」が、だいたい仕事が終わった夜

外国人労働者の方々の生活を支えるインフラだと思えば、ここは「安さだけ」で決めるより、

  • 建物の条件
  • 将来の運用負荷
  • 入居者の満足度

このあたりをセットで考えていただくのが良いのかなと、現場でお話を伺いながら感じています。

もし、

「うちの物件だと、どのパターンが現実的なんだろう?」
「とりあえずメッシュWi-Fiで小さく始めるとしたら、何を注意したらいい?」

といった個別のご相談があれば、その物件の間取りや部屋数を教えていただければ、もう少し踏み込んだ形でお話もできるかなと思います。