
液晶パネルの交換なんて、もう何百回とやってきました。だけど、今回の案件は一筋縄じゃいかなかったんです。
「液晶が割れた」と持ち込まれたノートパソコン。こちらのお客様、実はご年配の方で「これが命の次に大事な道具でしてね」と、そんな言葉を添えて託されました。ちょっと身が引き締まる思いでした。
無事に液晶パネルは取り寄せできて、いつもどおり交換作業を進めました。ところが――画面が、やけに暗い。「え、何これ?」って思うくらい。新品パネルなのにバックライトがほぼ点いていない。
おかしいなと思って、念のため元のパネルを戻してみてもやっぱり暗い。この時点でようやく、パネルではなく「本体側の異常」だと気づきました。
犯人はヒューズ。たった一つの、米粒サイズの。
液晶コネクタの近く、基板の片隅にある小さなSMDヒューズ。ここが切れていると、バックライト用の電源が遮断されてしまうんです。
テスターでチェックしてみると…案の定、無反応。完全に断線。そこで私は、ジャンパー処理をして、ヒューズの代わりに電気が流れるように橋渡しをしてみました。

すると、画面がパッと明るく表示されました。あの瞬間は、正直ちょっと感動します。まるで心臓マッサージで蘇生したかのような、そんな復活劇。

でも、そんなにうまい話じゃない。
ジャンパー処理にはデメリットもあります。バックライトの明るさが調整できなくなってしまうんです。いわば“常時フルパワー”。エコじゃないし、長持ちもしません。
そこで、ちゃんとしたヒューズを探すことにしました。
が……これがまた、どこにも売ってない。
日本国内ではまず見かけない型番。AliExpressで探しても、出てくるのはほとんどが自動回復型(PTC)。便利ではあるんですが、これが曲者。
自動回復ヒューズの罠
PTCヒューズは、過電流が流れると一時的に抵抗が上がって遮断し、冷えるとまた使える――そんな夢のようなヒューズです。でも、バックライトには向いていません。わずかな電圧の変化が、ちらつきや不点灯を引き起こすからです。しかも、熱を持つ。抵抗も地味に上がっていく。
つまり、「良さそうに見えて、じつは不安定」。これはパネルにとって致命的なんです。
それでも、探し続けた先に…
海外のフォーラムや部品メーカーの資料をいろいろあさって、ようやくアメリカのメーカーが該当品を出しているのを発見しました。今、そのヒューズを取り寄せ中です。
合えば万々歳。でも、サイズが合わなかったら? 規格が微妙に違っていたら?
そのときは、もうジャンパーで行くしかない…というのが正直なところです。
ヒューズが切れる本当の原因
今回のような故障、じつは作業中の電源オン状態での液晶抜き差しが原因になることがあります。あるいは経年劣化、つまり「老化」。電子部品も人間と同じで、年を取ると耐えられなくなる。
だからこそ大切なのは、
「必ず電源を切って」「バッテリーも外して」作業をすること。
これを忘れると、数百円の部品が手に入らないがために、数万円の修理が必要になったりします。
最後に
今回のような症例は、パソコン修理の現場では決して珍しくありません。けれど、ひとつひとつが「一台のパソコンと、使っている人の暮らし」をつないでいる大事な橋なんです。
部品が届いたら、また続きを書きますね。もし「自分も似たような症状で困っている」という方がいたら、ぜひこの投稿をブックマークしておいてください。
もしかしたら、助けになるかもしれません。