店舗を開業して、様々な事があった。
その中でも、印象的なのが「たけのこ」を瓶につめてご来店されたお客様がご近所にいて、頂いた時は正直戸惑ったが調理を行ったら非情に美味しかったのを覚えている。
私のお店には常連様が多いものの、飲食店とは違ってパソコンが不具合がなければ再びお会いする事がないので、お問い合わせを頂かない事は良いことだと思っている。
それから10年の月日が経った。
私は定休日はもちろん店舗に居ない、そんな時にドアベルが鳴るとスマートフォンに着信が表示され会話をする事が出来るのだが、初めて休日にドアベルが着信する。
「もしもし?」
すると深々と帽子を被った高齢者の方がドアの前に立っていた。
あ、たけのこのおじいさんだ。
そう思い出したのはドアベル越しなのに笑顔で対応している表情をみて、思い出したのだ。しかし、ご本人にはこのテクノロジー(ドアベルの遠隔での対応)をご理解されておらず、よいしょよいしょとドアを開けようとする。
「今日はお休みなので、ここにはいなんですよ」
パソコンのことでさ、聞きたいことがあって
ここには居ない、という事は無事にスルーされたので
「そうですか、では明日ご来店ください」
と返事をするものの、そうですかと、よいしょよいしょとドアを開けようとする。
「今日はお休みなので自宅にいるんです」
あー、そうかそうか
と、振り返り去って行った。
歩き方がちいかわみたいな可愛い歩き方だと画面越しに見守った。
そして翌日、出社前にドアベルが鳴る
きましたよ
まだ、めざましテレビも終わっていない時間帯でのご来店。さすがに私もこの時間は店舗には着いていないので、通話で対処するが、よいしょよいしょとドアを開けようとする。
「もうすぐつきますからね」
急いで向かい、到着すると玄関前に立っていた。
ずっと待っていてくれたのだ。
申し訳ない気持ちもあったがとりあえずは中に入ってもらい、お話を伺う。
今はさ、終活しててさ、色んなものを捨ててるんだ、トラック2台分も捨てたんだよ
それは凄い
勢いでパソコンも捨てちゃってさ、それはしまったと思ったので購入したいと思っているんだよ
それは捨てすぎじゃないか?
「パソコンのお取り寄せをしますね、でも次は捨てちゃダメですよ?」とお伝えする。
大丈夫、捨てるためのトラックも捨てたから
トラックがあれば捨ててしまうのか
なので、たけのこももう取りに行けなくなっちゃった
え・・・それは・・・
覚えていてくれたのか
私にたけのこのをパンパンに詰めた瓶を持ってきて下さった事を。
しんみりと、そしてちょっとだけさみしい気持ちになったが
スーパーで買った方が安いもんね
センチな気持ちを吹き飛ばすお言葉を頂いた。
まぁ、そうですよね。
パソコンの入荷をしたら絶対にお伺いしよう、そう誓った一日だった。
おひさしぶりです