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大人も子どももおじいちゃんも、お祭りになればみんな主人公になっちゃう話【町内祭りの修理屋珍事件】

大人も子どももおじいちゃんも、お祭りになればみんな主人公になっちゃう話【町内祭りの修理屋珍事件】

つい先日、うちの町内で久しぶりにお祭りが開催されました。お祭りといえば、子どもたちの浴衣姿に、焼きそばの匂い、太鼓の音、そしてどこか胸がそわそわするような、あの独特の空気。そんな日に限って、なぜかドラマが起きるんですよね。

その日、事前にご予約いただいていたお客様が来店されました。なんとイギリスから一時帰国中の方で、iPhoneの修理をさせていただくことに。店内はのんびりと和やかムード。ロンドンと日本の違いや、最近の日本の変化について笑顔で語り合っていたその時、事件は起こりました。

突然の高齢者コンビ、緊急依頼で大混乱

ドアがバンと開いて、いかにも「俺たちは今、急いでるんだ!」という勢いでご年配のご夫婦がご来店。お話を伺うと、「お祭りで流す笛の音のデータが入ったSDカードが読み込めない。これを今すぐカセットテープに入れてくれ」というご依頼。

……カセットテープ……ですよ?

私も電子機器を扱って幾年経ちますが、さすがに「今すぐカセットに!」という依頼はそうありません。しかも、当店にはカセットデッキがないので、「SDカードのデータを抜くことならできますよ」と伝えたところ、「じゃあ今すぐやって!」と。

でも目の前には、わざわざ海外から来られたお客様がいらっしゃるわけで。「お客様の対応が終わってからになります」と伝えると……まぁ聞いて下さる様子は無く。「急いでいるんだ!神輿に流す曲が入っているんだからいますぐやってよ!!」とまくしたてられ、結果、「時間がかかるならいいわ」とそっぽを向いてご退店。

いやいや……なんだこの展開。まるで即興劇でした。

お祭りマジックで、みんなが主役気分

そのやりとりを見ていたイギリスのお客様がぽつり。「ああ、こういう人も日本にいるんですね」と。ちょっと気まずそうに笑っておられましたが、私はこう説明しました。

お祭りの日って、誰もが主人公気分になるんですよ」と。

普段は温厚な人でも、お神輿を担いだり、町内のイベントを仕切ったりしていると、スイッチが入っちゃうんです。肩で風を切りながら歩く姿は、まるで『ブレイキングダウン』の入場シーン。自分が朝倉未来にでもなったかのような佇まいで、両脇を友人や後輩たち(たいていは若者)で固めて、町内を練り歩いている……なんて光景もあったりします。

たぶん10年後には、当時の写真を見て「やだ、俺こんなだった?」なんて笑ってくれる日が来るんじゃないでしょうか。

「はずれくじ」の日も、話のネタになる

今回のような一件があると、つい気持ちが沈みそうになるものですが、お客様と「いい経験になりましたね」と笑って終われたのが救いでした。「今日はたまたま“おじいちゃんが主役の日”に来てしまったんですね」と私が言うと、お客様も納得したご様子。

この騒動もまた、きっとイギリスに戻られたあと、友人との話のネタにしていただけることでしょう。「日本のお祭りには、ちょっとしたドラマがあるんだよ」って。

それでも、やっぱりお祭りはいい

正直なところ、私たちの世代はお祭りに対して“外野”のような立ち位置です。町内会のイベントにもなかなか関わりづらくて、気づいたらパシリ役ばかり。それでも、お年寄りや子どもたちが活き活きしている様子を見ると、「まぁ、いいか」となるから不思議です。

あの日の出来事も含めて、お祭りというのは“人間模様”が色濃く現れる貴重な時間。自分も、誰かの「面白い一日」の登場人物になっていたのなら、それはそれで、ちょっと嬉しいことかもしれません。

来年は……できれば静かに過ごしたいけれど(笑)、また何かが起きそうな予感はしています。