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「急ぎの修理」と「見積もりのすれ違い」——赤字でも、得たものがあった話

「急ぎの修理」と「見積もりのすれ違い」——赤字でも、得たものがあった話

先日、とあるパソコン修理のご依頼がありました。企業様からのご相談で、「できれば、すぐにでもシステムを稼働させたい」というものでした。

…この時点で、私はちょっと胸騒ぎを感じていたんです。

パソコンの状態を見ると、システムが起動できず、しかも大切なデータが入っているという状況。急ぎのご依頼ということもあり、細かな打ち合わせもそこそこに、私はすぐに作業に取り掛かりました。

「事前に金額の提示がなかった」と言われて

結果として、データは無事に復旧できました。
クローン作業も済ませ、部品の交換も完了。すべてを終え、私は心の中で「よし、間に合った」と安堵していたのですが——

お客様から返ってきたのは、思いもよらぬ一言でした。

ちょっと、この金額は納得できません

……正直、動揺しました。
もちろん、金額に関して事前に提示できなかったのは私の落ち度です。お急ぎだったことを理由に、先に手を動かすことを優先してしまった。ここは完全に反省しています。

ただ、今回の復旧にかかったコストは、部品代も含めて適正価格の中でもかなり抑えており、他社の1/3ほど。それに、特急対応やクローン作業の追加料金は一切いただいていません。
それでも「高い」と感じられてしまったのは、やはり私が金額を明確にしなかったからでしょう。

お客様が金額を決める事態に・・・

最終的には、お客様に金額を決めていただき、その金額で請求を行いました。
実際のところ、部品代、すべて含めて数万円のマイナス。つまりは赤字でした。

稟議を通さなければならないのですから金額は事前に言って頂きたかったです、ですのでこの金額でお願いできますか?」との事で、そうなれば稟議は通らなく結果としてシステムも復旧出来なかった筈なのにな…と、考えるとさすがに心が折れそうになりました。

それでも、次に進むために

自分の不甲斐なさと、そして少しの無力感。

この仕事を十数年やってきて、こんなにも「空振り三振」みたいな感覚になるとは思いませんでした。

でも、私にとって一番大切なのは「次にどう活かすか」なんです。

今回の件で強く思ったのは、「どれだけ急いでいようと、どんな状況であろうと、必ず見積もりは出す」。それを徹底しなければ、互いに不幸になります。
「データ復旧は成功報酬制」という仕組みも、もう一度見直さなければならないかもしれません。

修理とは何かを考えさせられた

パソコン修理という仕事は、単に壊れたものを直すだけではありません。
「どうしても失いたくない」「すぐに使えるようにしてほしい」そんな切実な想いに応えることでもあります。

だからこそ、情熱が必要ですし、誠実さも問われます。

けれどその情熱が、今回ちょっとだけ冷めてしまったのも事実です。

…いや、まだ冷めてないな。きっとまた、次のご依頼で「よし、やってやるか」と気持ちが戻るんだと思います。今回の出来事も、そのための通過点だったのかもしれません。

もしこれを読んでくださっている方がいれば、「見積もりって大事なんだな」と思っていただけたら、それだけで救われます。

そして私自身も、もっと強く、もっと丁寧に、もっと誠実でいようと思います。