
最初に白状します。これは、たぶん、いや、きっと愚痴です。
先日、A様にパソコン本体+初期設定まで含めたお見積もりをお渡ししました。お見積もりはあくまでご検討材料。決まっても決まらなくても、こちらは静かに結果を待つだけ――そのつもりでした。
ところが、とある“初対面”の設定業者さんから突然の電話。
頭の中で、つい本音がよぎります。「え、他社の見積もりを本人に聞く? バカなのか?いやいや、落ち着け自分」。ここで感情のネジが一本飛びかけましたが、「お答えできかねます」と丁寧に回答。
すると相手は畳みかけます。

では、御社の見積は虚偽記載ですね?
やっぱバカでしょ(笑)
…二本目のネジが飛びました。でも口では「そのような事実はございません」とだけ。逆の立場なら、こんな電話3秒で切られます。結局、「当店は他のお客様にも同条件でご提案しています」とだけ伝え、通話終了。
数時間後、何故かお客様のA様から電話があり

その業者さんが、もっと安くできるって言ってたから、あっちでお願いするつもりだったから、設定内容も教えてあげて?
えっ!!それ本気で言ってるんですか???(笑)
うーん……結果すべてお断りさせて頂き完了しました。
量販店の「取り違え事件」
似た話で、家電量販店で購入したPCの初期設定をご依頼いただいたとき、設定完了後に量販店から「間違った機種を引き当ててしまいました!」と連絡が。
先方はお詫びとして「設定費用はこちらで負担します」とのことでしたが、そもそも“間違ったPC”の設定は無効。ここはお代をいただかず、案件をきれいにリセット。お客様に「当店で代替機のご提案も可能です」と選択肢をご用意した結果、当店でご購入いただく流れに。争わず、感情で動かず、手順で整える。結果として、みんなが傷を最小限にできました。
繁忙期はどこも冷静さを欠きがち。もちろん私も例外ではありません。だからこそ「気合い」より「仕組み」。経験はブレーキになりませんが、チェックリストはブレーキになります。
口約束をやめて“時系列ログ”で残す
- 作業を始める前に、依頼内容・到達点・除外範囲をメモ化
- 作業中は工程ごとに短文でメモ(例:初期設定→Windows更新→Office認証→プリンタ登録…)
- 終了時にそのままLINEで共有(「本日ここまで。残りは〇〇到着後に実施」)
口でどれだけ伝えても、翌日には“お互いに”忘れます。
文章は冷静さの貯金。時系列を残すだけでトラブルの8割は消えます。
音声→テキストで“微暴録(びぼうろく)”
- スマホで音声メモ→AIでテキスト化→要点だけ整形
- 固有名詞(Wi-Fi名、プロダクトキー等)は伏字か写真で別送
- 「やったこと」「やってないこと」「次回やること」を3行でまとめる
例)
・やった:初期設定/Windows更新/プリンタ追加
・やってない:メール移行(旧PC未着のため)
・次回:旧PC到着後にメール・写真データ移行
作業シールで“現物に貼る”
- 名刺サイズの作業シールを1枚用意
- 日付/担当/実施項目/注意点を手書きでPC裏に貼付
- お客様→私→未来の私、みんなが救われます
「見積もりの防波堤」を最初に敷く
- 見積には前提条件を必ず明記(在庫の変動、ライセンス有無、旧PCの状態など)
- 比較相談は歓迎、内訳の技術ノウハウの譲渡は不可と事前に宣言
- 値下げ交渉の代わりに、作業範囲の再設計で調整(「今回はメール移行を後日に」など)
なぜ他社に“見積もり”は教えられないのか
情報には重さと責任がある
見積もりは、その店の在庫状況、仕入れルート、保証体制、人的コストまで含んだ“設計図”。
他社の図面をそのまま渡すのは、当店の信用を同時に手放すことになります。
お見積はあくまでもお客様にお渡しするものであって、他社に利用され助言するものではありませんからね、その点だけは履き違えないようにご理解を頂ければ幸いです。
比較は大歓迎、ただし“同じ土俵”で
- 価格だけでなく、作業範囲・保証・データの扱いまで並べて比較してください
- わからない用語は、その場で遠慮なく聞いてください。専門用語の翻訳係は私の仕事です
- そして、もし他社さんを選ばれても、いつでも戻ってきてください。私たちは“地域の保守担当”でありたいのです
愚痴から始まった話ですが、最後は“仕組み”に着地しました。
人は焦るとバグります。私もです。だからこそ、冷静さを外付けする。チェックリストと時系列ログ、それだけで現場は驚くほど穏やかになります。
そして、もし見積もりで迷子になったら――その時は遠慮なく相談してください。
ネジのゆるんだ日もあるけれど、締め直す方法は、ちゃんとここにあります。
A様の見積書、どうやったらこの価格になるんですか? 設定内容も教えてください