
えー、今日はですね。パソコン修理屋をやっていると、たまに出会うんです。「いや、君は悪くないんだよ。でも、設定がね……」と、パソコンに話しかけたくなる瞬間。
今回も、まさにそれでした。
ある日、突然のブルースクリーン
Dell製ノートパソコン。第8世代CPU。Windows 11をクリーンインストールして、初期設定も完了。動作確認も問題なし。
「よし、ここまで順調だな」
そう思って Windows Update を実行し、再起動をかけた、その瞬間です。画面に現れたのは、
inaccessible_boot_device(0x7B)
……はい、出ました。
このエラー、名前だけ聞くと強そうです。「ブートデバイスにアクセスできません」なんて言われると、SSDが逝ったのかと思ってしまう。でも、経験上、このタイミングで出る0x7Bは“壊れていない”ことが多い。なので、まずやることは決まっています。
BIOSを開く。黙って設定を見る。
Dellの場合、F2。そして確認するのがここ。
SATA Operationの設定が……RAID On
はい、出ました。ここが一番ややこしいところです。
普通に考えれば、「じゃあSATA設定は関係ないですよね?」そう思いますよね。でも、Dellでは違います。
Dellの「SATA Operation」は名前が嘘をついている
Dellのこの設定、実態はこうです。
SATAだけでなく、ストレージ全体の動作モード
NVMeであっても、
という違いが生まれます。つまり今回のNVMeは、
NVMe SSD
↓
Intel RST(仮想RAID)
↓
Windows
という、少し遠回りな構成になっていました。
なぜアップデート後に死んだのか
流れを整理します。
結果、inaccessible_boot_device(0x7B)理屈としては、非常に素直です。
やったことは、正直シンプル
- BIOSを開く
- SATA Operation
- RAID On → AHCI
- 保存して再起動
結果はどうだったか
一発でした。
「ああ、君は悪くなかったんだね」そう声をかけたくなる瞬間です。
じゃあ、なぜDellはRAIDをデフォルトにしているのか
ここからは少し考察です。
理由① 法人・管理用途を前提にしている
Dellは、個人向けPCメーカーというより“業務機メーカー” です。
- 法人向け大量導入
- 同一構成での管理
- Intel RST前提のイメージ配布
こうした現場では、
- RAID On
- Intel RST
が「標準」になります。
理由② NVMeでも“統一した管理”ができる
RAID On にしておくと、
- SATAでも
- NVMeでも
- 同じ管理体系に乗せられる
これは管理者目線では便利です。
ただし――個人利用では、ほぼメリットがありません。
理由③ 「トラブルが起きにくい」ではなく「管理しやすい」
ここ、誤解されがちですが、
- RAID On は
- トラブルが少ない設定ではない
- 管理しやすい設定
なんです。個人ユーザーや修理現場では、
- Windows Update
- ドライバ自動更新
という「想定外」が入りやすく、結果、今回のような事故が起きます。
修理屋としての結論
- Dell × Windows 11 × NVMe
- 個人利用・長期安定運用
この条件なら、
SATA Operation:AHCI 一択
RAIDを使う理由がないなら、最初から外しておくのが正解です。今回のトラブル、Windowsが悪いわけでも、SSDが悪いわけでもありません。ただ、
設定が、使われ方と噛み合っていなかった
それだけの話です。同じ症状で悩んでいる方がいたら、Windowsを入れ直す前に、ぜひ一度 BIOS を覗いてみてください。
そこに答えがあるかもしれません。
Dell・Windows 11・NVMe 環境で 0x7B が起きる技術的背景
ここから先は、一般ユーザー向けではありません。BIOS・ドライバ・ブート構成をある程度触ったことがある方向けの補足です。
1. Dell における「SATA Operation」の実体
Dell BIOS の SATA Operation は名称が誤解を招きますが、実際には以下をまとめて制御しています。
- SATA コントローラの動作モード
- NVMe を含む ストレージコントローラ全体の抽象化方式
- Intel RST(VMD含む)の有効/無効
特に RAID On の場合、NVMe SSD は OS から直接は見えず、
- Intel RST(仮想 RAID / VMD)
- その配下のストレージ
という形で認識されます。
2. RAID On + NVMe 構成の内部構造
RAID On 時の論理構造は概ね以下です。
NVMe SSD
↓
Intel RST / VMD
↓
Windows(iaStor / RST ドライバ)
この構成では、
- ブートローダ
- BCD
- ストレージドライバ
すべてが「Intel RST が正常に初期化されること」を前提に動作します。
3. クリーンインストール直後は動く理由
Windows 11 のインストーラは、
- Intel RST が有効でも
- Microsoft 標準の互換ドライバで
- 一時的に起動を成立させる
ことがあります。そのため、
- インストール直後
- 初回起動
- 軽い動作確認
までは 問題なく見える ケースが多いです。
4. Windows Update で破綻するポイント
問題が起きるのはここです。Windows Update により、
- Intel RST ドライバの差し替え
- バージョン不整合
- 依存関係の更新
が発生すると、
- 起動初期段階で
- ストレージがまだ初期化されていない
=ブートデバイスが見えない
この状態で止まり、結果として 0x7B が発生します。
5. AHCI に切り替えた瞬間に起動する理由
AHCI に変更すると構造がこうなります。
NVMe SSD
↓
Microsoft 標準 NVMe ドライバ
↓
Windows
そのため、
でも そのまま起動できる ケースがあります。今回がまさにそれです。
6. 本来「再インストールが必要」と言われる理由
一般論として、
の場合、
になるため「再インストールが必要」と言われがちです。ただし今回のように、
条件が揃うと、Windows側が AHCI / NVMe ドライバを既に持っており切り替えだけで通る場合があります。
7. 実務的な指針(技術者向け結論)
- Dell × Windows 11 × NVMe
- 個人利用・小規模業務
- 長期安定運用
この条件では、
- RAID On:❌(管理者前提・更新リスクあり)
- AHCI:✅(最小構成・更新耐性高)
- Disabled:❌(論外)
RAID を使う明確な理由がない限り AHCI が最適解という判断になります。
8. 同業者向けワンフレーズ
Dell の SATA Operation は名前に反してNVMe を含むストレージ制御全体に影響する。RAID On は Intel RST 依存となり、Windows Update 後の 0x7B を招きやすい。NVMe 単体構成では AHCI が最も事故が少ない。














