
Liquid Glassの魔法と、Siriに置き去りにされたような気持ち
毎年恒例のWWDC。私はいつも「もういいかな」と思いつつも、やっぱり再生ボタンを押してしまう。まるで付き合いの長い友人のように、期待と失望を繰り返しながら、それでもどこかに“魔法”を信じている自分がいます。
あのガラスのようなUI──Liquid Glassに息を呑んだ瞬間
まず最初に語らずにはいられないのが、今年の目玉「Liquid Glass」。これを見た瞬間、「やっとAppleが動いたか」と思いました。
画面に浮かぶような半透明のインターフェース。照明の反射、背景の色、ユーザーの動きに応じて変化する美しいUI。“魔法のような操作体験”という言葉に、思わず納得してしまいました。
12年前のiOS 7以来の大刷新。フラットデザインがずっと続いてきた中で、やっと次のステージに進んだ感覚。これはもう、芸術に近いと思いました。私も正直、基調講演の最中に口を開けたまま見入ってしまっていたほど。
でもねぇ・・・
でも……Siriの未来は、また来年ですか?
Liquid Glassの美しさに浸っていたその直後、私のテンションをすっと冷ましてくれたのが、Siriの“非発表”です。
去年のWWDCで発表された「Apple Intelligence」。正直、「今度こそSiriが覚醒する!」と期待していた私には、今回の「Siriの強化は来年です」の一言は、思った以上に堪えました。
あの瞬間、私の頭の中には「これ、また“来年”で終わるやつじゃ……」という悪い予感しかありませんでした。会場からも溜め息が漏れていたそうで、なんだか妙に共感してしまったのを覚えています。
ChatGPTやGeminiが日常の一部になりつつある中で、「Appleは本当にこのままで大丈夫?」と本気で心配になりました。でも、Craig Federighi氏という方が、“自社開発のAIモデルを育てている”とのこと。あえて派手なデモをせず、水面下で精度を高めている……うん、Appleらしい。
でもなぁ……もうちょっと、ワクワクさせてくれてもいいじゃないですか。
そっと支えるAI、その哲学に救われた
とはいえ、AppleのAI戦略は一貫して「ユーザーのそばで、静かに支える」スタイル。派手なチャットボットではなく、日常の流れの中で自然に便利さを実感できる機能を積み上げているようです。
例えば、電話に出られなかったときにAIが要件を要約してくれるとか、ノートの写真を撮るだけで試験問題を作ってくれるとか。確かに、これはすごい。しかもクラウドじゃなく、端末内で完結するっていうのがAppleらしい安心感をくれます。
地味だけど着実。使い込むうちに「前より賢くなってる」と思わせてくれる進化。これはこれで、じわじわ効いてくる。漢方薬みたいなAI戦略。私、けっこう好きかもしれません。
それでも、欲しいんです。折りたたみの“ワクワク”を
あとね、やっぱり私は「折りたたみデバイス」に期待してるんです。
打ち合わせでも、ファミレスでも、ちょっとしたすき間時間でも気軽に開けて使えるモバイル端末。Galaxy Foldを見てると「Appleもこういうの出してくれないかな」と何度思ったことか。
あくまでも噂レベルですが2025〜2026年に何か出るかも、とのこと。でもAppleのことですから、出すときは“折り目のない奇跡の画面”を携えてくるんでしょうね。しかも価格は超弩級。でも、それでこそApple。
「遅れている」のではなく、「今までにない完成度で来る」──これは私がまだAppleを信じている理由のひとつです。
毎年変わらないものと、変わりつつあるもの
昔は毎年iPhoneを買い替えてました。でも今は、形も操作も変わらないから、数年に一度の買い替えで十分になってしまった。理由は単純で「形に飽きたから」。
それでも、WWDCのたびに「今年こそ何かが変わるかも」と思ってしまう自分がいる。そして実際に、Liquid Glassのような“心に残る一発”を見せられると、やっぱりAppleってすごいな、って思っちゃうんです。
9月の発表も、多分そんなに驚きはないかもしれない。でも、それでも楽しみにしてしまう。これはもう、呪いに近い信仰かもしれませんね。
──私たちは、Appleに“未来”を見せてほしいのだと思います。
それが、たとえまだ開かれていない折りたたみの未来でも、開かれたUIの美しさでも。どこかでまた、「あっ」と声を漏らすような瞬間が訪れることを、今年もやっぱり、私は願っているのです。