
この記事は MiniTool 社から製品ライセンスの提供を受けて書いています(PR)。とはいえ、内容は実際に店の作業機に入れて触ってみたうえでの正直な感想です。できないことも書きます。
「電源は入るんですけど、Windowsが立ち上がらなくて」
店頭でそう言われてパソコンをお預かりしたあと、私が毎回いちばん言いたくないセリフがあります。
「……バックアップ、ありますか?」
だいたい、三秒くらい沈黙が返ってきます。私はこれを勝手に「沈黙の三秒」と呼んでいます。この三秒のあいだに、お子さんの写真とか、去年の確定申告のデータとか、書きかけの卒業論文とかが、お客様の頭のなかを走馬灯みたいに流れていくわけです。見ているこちらもけっこうつらい。
その三秒を、この街から少しでも減らしたい。というわけで今回は、バックアップソフトウェア「MiniTool ShadowMaker」の最新版(V4.8.1/2026年5月27日リリース)を、実際に店の作業機に入れて一通り触ってみました。よろしくお願いします。
先に結論だけ書いておきます
無料版でも、ファイル・システム・パーティション・ディスクのバックアップと復元、ファイル同期、スケジュール実行まで使えます
起動しなくなったPCを、起動用USBから復元するところまで無料版でいけます
システムディスクのクローン(SSD換装)と、別PCへの環境移行は有料版から
「守る」なら無料版で足ります。「引っ越す」なら有料版
修理屋にできるのは、魔法ではなく確率の話
最初に、身も蓋もない話をします。
パソコン修理でいちばん多いご依頼は「壊れた」ではありません。「壊れて、中のデータが取り出せない」です。基板やバッテリーは交換すれば直りますが、ストレージそのものが物理的に力尽きている場合、うちで手を尽くしても戻らないことがあります。
修理屋にできるのは魔法ではなく、確率の高い順に手を尽くすことだけなんです。そして、バックアップさえ取ってあれば、その確率の話が丸ごと不要になる。ここが今日のいちばん大事なところです。
とりあえず入れてみた
起動した瞬間の第一印象は「思ったより静か」。広告でうるさくない。
インストールは日本語で進みます。起動すると左側にメニューが並んでいて、上からホーム/バックアップ/同期/復元/管理/ツール。この6つだけです。この手のソフトにありがちな「専門用語の見本市」になっていないのは、初心者の方にすすめる立場としてはかなり助かります。
実際に一通り触ってみた感想を書きます。びっくりするほど直感的でした。説明書を開かず、画面に出ている言葉を素直に追っていくだけで最後まで行けます。仕事柄この手のソフトはいくつも触ってきましたが、今まで扱ってきたものと比べて頭ひとつ分かりやすい。
バックアップを取ってみる
実際の手順は、拍子抜けするほど短いです。
ディスク丸ごとか、フォルダ単位か。ここで決める。
外付けHDDを挿しておけば、ちゃんと候補に出てくる。
ソースを選ぶ、保存先を選ぶ、「今すぐバックアップ」を押す。以上です。実質3クリック。細かい設定はぜんぶ「オプション」の中に隠れているので、初めての方はここを開かなくても成立します。
毎日・毎週・毎月。夜中に勝手に走らせるならここ。
増分は「前回からの差分だけ」。容量が節約できるやつで、これは無料版でも使える。
パーセント表示があるのは地味に親切。あとどれくらいか分かると人間は落ち着く。
「取る」より「戻す」が本番です
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
バックアップは、取った瞬間ではなく、戻せた瞬間に完成します。店頭でも「バックアップは取ってました」とおっしゃるお客様のうち、実際に復元まで試したことがある方は、体感で二割いません。取りっぱなしのイメージファイルは、開けてみるまで中身が生きているか分からないんです。
取ったものが一覧で見える。ここでイメージのマウントもできる。
戻す練習は、壊れる前にやっておくのが唯一の正解。
それと、Windowsが起動しなくなった状態では、当然ソフトも起動できません。そのためのブータブルメディア(緊急起動USB)を作る機能が「ツール」の中にあります。
これを作っておくかどうかで、いざという日の顔色が変わる。
ここは無料版を評価したい点です。この起動用USBから「復元」だけは、無料版でも実行できます。起動用メディアでバックアップを取ったりクローンしたりするのは有料版の機能ですが、いざという日にやりたいのは復元です。肝心の一手を無料版に残しているのは、この手のソフトとしてかなり良心的だと思います。
ちなみに最新のV4.8.1の更新内容は、多言語表示の改善のほか、セキュアブート有効な環境で起動用メディアが立ち上がらない不具合の修正、ISOをUSBに書き込む際のエラー修正など、この「緊急起動まわり」に集中しています。ひとつ前のV4.8でも起動版とWindows版のUIが統一されました。開発側も、平常時より非常時を厚くしにいっている印象です。
わかりやすさは、機能表に載らないスペックです
ここで、機能比較表には絶対に載らない話をひとつ。
バックアップソフトが本当に効くのは、導入した日ではなく、半年後も動き続けているかどうかです。ところが、操作が難しいソフトは高い確率で途中でやめられます。設定画面を開くたびに小さく気力を削られて、そのうち起動しなくなる。私はこれを「三日でやめる問題」と呼んでいます。
機能がどれだけ豊富でも、飽きられたら守れるデータはゼロです。逆に、機能が普通でも半年動き続けたソフトは、ちゃんと守ります。続けられることは、機能表に一行も書かれないまま、実効性能のほとんどを決めてしまう。
その意味で、ShadowMakerの「読めば分かる画面」は、地味に見えて一番効くところを押さえていると思いました。少なくとも私は、途中で面倒になりませんでした。
ここで少しだけ、修理屋の話をさせてください
バックアップの世界には「3-2-1ルール」という考え方があります。データは3つ持ち、媒体は2種類に分け、うち1つは別の場所に置く、というものです。
なぜ「別の場所」なのか。火事・水害・盗難、そしてランサムウェアがあるからです。外付けHDDをパソコンに挿しっぱなしにしていると、ウイルスに暗号化されるとき、バックアップも仲良く一緒に暗号化されます。つなぎっぱなしのバックアップは、バックアップではなく、ただの二つ目の被害者です。
だからバックアップ用のドライブは、取り終わったら外して、引き出しにしまう。それだけで生存率がまるで違って……
……と、ここまで書いて気づきました。これはもうソフトの紹介ではなく、修理屋の説教ですね。やめておきます。話を戻します。
無料版でどこまで、有料版で何が増えるか
ここは、はっきり線を引いておきます。
機能無料版Pro版
ファイル/システム/パーティション/ディスクのバックアップと復元○○
ファイル同期と検索○○
日次/週次/月次のスケジュール実行○○
増分バックアップスキーム○○
完全/差分バックアップスキーム×○
イベントに基づくバックアップ(起動時・ログオン時など)×○
非システムディスクのクローン○○
システムディスクのクローン(SSD換装など)×○
起動用メディア(WinPE)からの復元○○
起動用メディアからのバックアップ・クローン・同期×○
ユニバーサル復元(別のPCへ環境を移す)×○
リモートPCの管理/コマンドラインでのバックアップ×○
ひとつ補足しておくと、Windows Server への対応は無料版でもPro版でも×です。サーバーで使いたい場合はさらに上位のエディションが必要になります。個人のパソコンなら関係のない話ですが、小さな事業所さんだとまれに引っかかるので、先に書いておきます。
ざっくり言うと、「守る」は無料版、「引っ越す」は有料版です。今のパソコンを守っておきたいだけなら、無料版で必要なことはひと通りできます。逆に、HDDからSSDに換装したい、新しいパソコンに環境をまるごと移したい、という方はシステムディスクのクローンやユニバーサル復元が要るので有料版になります。
クローンについて一点だけ補足を。データ用の外付けHDDやDドライブを丸ごとコピーするだけなら、無料版でもできます。有料版でないとできないのは「Windowsが入っているディスク」のクローンです。ここを混同すると無駄な出費になるので、線を引いておきます。
値段の話もしておきます。有料版は年払いなら月あたり456.5円(税込)から、買い切りタイプのPro Ultimateが12,045円(税込)でした(いずれも執筆時点のキャンペーン価格です。時期で変わるので、購入前に公式サイトで確認してください)。
この手のソフトとしては、かなりリーズナブルな部類です。データが飛んだあとの復旧作業にかかる金額と手間を毎日のように見ている立場から言うと、桁がひとつ違います。「悩む時間のほうがもったいない」くらいの価格帯なので、必要だと分かっているならサクッと入れてしまうのが正解だと思います。
なお有料版には30日間の無料体験が用意されているので、クローンを一度だけ使いたい方は、そこで見極めるという手もあります。うちの店でも、換装のご相談をいただいたときに一度は必ずお話しする選択肢です。
バックアップソフトは「入れた日にいちばん退屈なソフト」です。何も起きないので。でも、何も起きない状態を維持するために存在するソフトなんですよね。だからこそ、退屈でも触るのが苦にならない画面かどうかが効いてきます。
沈黙の三秒が来る前に
冒頭の話に戻ります。
「バックアップ、ありますか?」と聞いたあとの、あの三秒。あれは、パソコンが壊れた瞬間に生まれるものではありません。壊れるずっと前の、何も起きていなかった日々に生まれています。
今日、外付けHDDを一台つないで、3クリックしておく。それだけで、その三秒は来なくなります。ソフトはまず無料版で構いません。使ってみて、SSD換装まで進みたくなったら有料版を考える。その順番で十分です。
そして、続けられそうなものを選んでください。三日でやめないソフトだけが、半年後のあなたを助けます。
伝えたいことは書きました。みなさんも、引き出しの奥で眠っている外付けHDDを今日こそ引っ張り出してください。データバックアップは、転ばぬ先の杖です。
まずは無料版から
バックアップは、取っておいた日には一円の得にもなりません。効くのは、忘れた頃です。無料版なら今日から始められるので、外付けHDDを一台つないで3クリックしておくところから、どうぞ。
MiniTool ShadowMaker 公式サイト









