
ゲーミングモニターの残像が、思ったより減らない。144Hz や 240Hz のモニターに買い替えたのに、横に流れる景色や素早く振り向いたときの敵が、少しにじんで見える。昔のブラウン管のほうがくっきりしていた気がする。そう感じている方は少なくないはずです。
これは故障ではなく、今の液晶や有機EL(OLED)の光り方そのものから来ています。その残像をソフトで減らす方法として、Blur Busters が公開した「CRTビームシミュレーター」と、それを Windows で動かす無料ツール「ShaderBeam」が話題になっています。何ができて、どんな環境なら効果があり、どこに気をつけるべきかを、公開されている資料に沿って整理します。
先に結論:ゲーミングモニターの残像は、ブラウン管の「一瞬だけ光る」動きをソフトで再現する CRTビームシミュレーターで減らせます。Blur Busters によると、60fps の映像なら 240Hz のモニターで最大 75%、120Hz で最大 50% 減らせます。
Windows で試すなら無料の ShaderBeam(ベータ版)を使います。100Hz 以上のモニターが必要で、240Hz 以上が推奨です。画面が細かく点滅するしくみなので、光に敏感な方は使わないでください。
ゲーミングモニターの残像はなぜ起きる?ブラウン管との光り方の違い
ブラウン管は、電子ビームが画面の上から下へ一列ずつ走り、当たった所だけが一瞬光ります。光ったあとはすぐに暗くなり、次のコマでまた光る。つまりブラウン管の映像は、ほとんどの時間が「暗い」のです。目は、その一瞬の光だけを拾うので、動いている物がくっきり見えます。
液晶や有機ELは違います。1 コマ分の絵を出したら、次のコマに切り替わるまでその絵を光らせ続けます。ところが、私たちの目は動く物を追いかけて視線を滑らかに動かしています。視線は動いているのに、画面の絵は止まったまま。このずれが、網膜の上では「にじみ」になります。
用語:ホールド型表示とは、1 コマの絵を次のコマまで表示し続ける光り方のことです。英語では sample-and-hold と呼ばれ、今の液晶や有機ELの多くがこの方式です。応答速度がどれだけ速くても、この光り方による残像は残ります。
有機ELは画素の切り替えがとても速いので、液晶より残像が少ないと言われます。それでも「ホールド型」であることは同じなので、60fps のゲームを遊ぶと、どうしても 1 コマ分の時間だけ絵が止まって見えます。リフレッシュレートを上げると残像が減るのは、1 コマを光らせ続ける時間が短くなるからです。
問題は、ゲームそのものが 60fps までしか出ないときです。古いゲームや、フレームレートの上限が 60 に固定されたタイトルでは、モニターが 240Hz でも同じ絵を 4 回続けて出すだけなので、残像はあまり減りません。ここを補うのが、次に紹介する CRTビームシミュレーターです。
ゲーミングモニターの残像を減らす「CRTビームシミュレーター」とは
CRTビームシミュレーターは、ブラウン管の電子ビームが画面を走る様子を、ソフト(シェーダー)で再現する仕組みです。モニターの高いリフレッシュレートを使い、60fps の 1 コマを細かく分けて、上から順に明るい帯が流れ、通り過ぎた所は暗くなっていくように描きます。光っている時間が短くなるので、ブラウン管に近いくっきり感が出ます。
CRTビームシミュレーターは、CRT の電子ビームをリアルタイムで再現するシェーダーで、Blur Busters の Mark Rejhon 氏と Timothy Lottes 氏が作り、MIT ライセンスで公開している。60fps の映像の残像は、120Hz のモニターで最大 50%、240Hz で最大 75%、480Hz で最大 87.5% 減らせるとしている。
出典:Blur Busters「crt-beam-simulator」(GitHub)
数字を表にすると、リフレッシュレートが高いほど効くことがよく分かります。1 コマを細かく分けられるほど、「光っている時間」を短くできるからです。
| モニター | 60fps の残像 | 倍率 |
|---|---|---|
| 120Hz | 最大 50% 減 | 2 倍 |
| 240Hz | 最大 75% 減 | 4 倍 |
| 480Hz | 最大 87.5% 減 | 8 倍 |
表の「最大」は、条件がそろったときの上限です。Blur Busters の TestUFO のページでは、モニターのリフレッシュレートと映像のフレームレートの比が最低 2 倍、できれば 4 倍以上を勧めています。つまり 60fps のゲームなら 240Hz のモニターがひとつの目安になります。
ブラウザで試せるデモも公開されています。TestUFO の CRT のページを高リフレッシュレートのモニターで開くと、手持ちのモニターでどう見えるかを確かめられます。ここで違和感が強いなら、ShaderBeam を入れる前にやめておく判断もできます。
メモ:Blur Busters は、有機ELは黒や白がつぶれない設定なら相性が良いとしています。一方、エリア駆動(ローカルディミング)や Mini LED のバックライトは、画面の書き換えに遅れると不具合が出ることがあるため、エリア駆動は切って試すよう案内しています。

Windowsで試せる無料ツール「ShaderBeam」
ShaderBeam は、ShaderGlass というツールの作者でもある Mausimus 氏が GitHub で公開している、Windows 用の無料ツールです。デスクトップ全体の上に重ねて表示する「オーバーレイ」として動き、全画面のゲームや動画にも CRTビームシミュレーターをかけられます。2026 年 1 月 24 日に v0.2.1 が公開されていて、まだベータ版です。
役割は動きのくっきり感だけに絞られています。ブラウン管らしい走査線の見た目は ShaderBeam では再現せず、そちらは姉妹ツールの ShaderGlass の担当です。レトロな雰囲気を足すツールではなく、残像を減らすためだけの道具だと考えると分かりやすいと思います。
必要なもの:100Hz以上のモニター(240Hz以上が理想)とWindows 11
動かすための条件は、作者の説明(README)にまとまっています。家のゲーミングPCで試せるか、先に確かめてください。
- モニターのリフレッシュレートが 100Hz 以上か(240Hz 以上を推奨)
- Windows 10 か 11 か(11 を推奨。10 では画面の端に黄色い枠が出る)
- G-Sync・FreeSync などの可変リフレッシュレートを切れるか
- 試す間、モニターを 1 台だけにできるか
- 内蔵グラフィックスなど、2 つ目の GPU があるか(あると安定しやすい)
可変リフレッシュレート(VRR)を切るのは、ShaderBeam がモニターの書き換えに合わせて動く必要があるためです。ふだん G-Sync や FreeSync を使っている方は、試し終わったら元に戻すのを忘れないようにしてください。
2つ目のGPU(内蔵グラフィックス)を使うとちらつきが減る
ShaderBeam は、ゲームと同時にシェーダーの計算をします。ゲームでグラフィックボードが手いっぱいになると、シェーダーの計算が間に合わず、不規則な点滅やずれが出ます。そこで作者は、シェーダーの計算を別の GPU に任せる使い方を勧めています。
多くのゲームで点滅やずれをなくすいちばんの方法は、シェーダーを 2 つ目の GPU で動かすことで、解像度やリフレッシュレートが低めなら CPU の内蔵グラフィックスでもよい。モニターはメインの GPU につないだまま、ShaderBeam の設定で「Shader GPU」に 2 つ目の GPU を選ぶ。
出典:mausimus「ShaderBeam」(GitHub)
CPU に内蔵グラフィックスがあるかどうかは、型番で決まります。グラフィックボードを積んだゲーミングPCでも、BIOS の設定で内蔵グラフィックスが止まっていることがあります。設定画面にある「Benchmark」のボタンで、使う GPU がどのくらいの速さでシェーダーを処理できるかの目安も見られます。
試す前に知っておきたい注意点と、試す手順
CRTビームシミュレーターは、画面を高速で明るくしたり暗くしたりして残像を減らします。つまり仕組みそのものが「点滅」です。ここを分かったうえで試してください。
注意:ShaderBeam の作者も Blur Busters も、点滅する映像が出ることを明記し、光に敏感な方への注意を促しています。光の点滅で気分が悪くなった経験がある方は使わないでください。試している途中で目の疲れ・頭痛・気分の悪さを感じたら、Ctrl+Shift+Q ですぐに終了してください。
もうひとつは明るさです。光っている時間を短くするぶん、画面は暗く感じます。PC Games Hardware は、リフレッシュレートが低いほど明るさが落ちやすく、作者が 240Hz 以上を理想としているのはそのためだと伝えています。
試すときは、作者の README に沿って次の順で進めます。
- GitHub の ShaderBeam のページから、Windows 用の zip をダウンロードして展開する。
- G-Sync・FreeSync を切り、モニターを 1 台だけつないだ状態にする。
- ShaderBeam を起動し、表示するモニターを選ぶ。有機ELなら「Monitor Type」で LCD Anti-retention が無効になる種類を選ぶ。
- 2 つ目の GPU があれば「Shader GPU」に選び、入力元(Capture Input)にはデスクトップ全体ではなくゲームのウィンドウを選ぶ。
- 映像がカクつくときは、RivaTuner Statistics Server でゲームのフレームレートを ShaderBeam の「Content FPS」と同じ値に制限する。設定画面は Ctrl+Shift+B で出し入れできる。
ゲームによっては ShaderBeam の表示がゲームの後ろに隠れることがあり、その場合は Ctrl+Shift+G で前面に出せます。ずれが出たら Ctrl+Shift+A でやり直せます。画面にゆっくり動く横じまが出るときは、ガンマの調整で直ることがあると README に書かれています。
ここ、見落としがちです:ShaderBeam は、ゲームのフレームレートが「Content FPS」と同じ値で安定しているときに効果が出ます。フレームレートが上下するゲームでは点滅が不規則になりやすいので、重いゲームより、60fps で安定して動くゲームから試すと違いが分かりやすくなります。

これからゲーミングモニターを選ぶなら見たいところ
ShaderBeam のようなツールは、手持ちのモニターに「ブラウン管の光り方」を足す方法です。これからモニターを買うなら、そもそもこの方式に向いたモニターかどうかを見ておくと、あとで試すときに困りません。
- リフレッシュレート:60fps のゲームを中心に遊ぶなら 240Hz 以上を目安にする
- パネルの種類:有機ELは Blur Busters が相性が良いとしている
- エリア駆動:Mini LED などエリア駆動のモニターは、切って使えるかを確かめる
- パソコン側:CPU に内蔵グラフィックスがあるか、モニターをつなぐ端子が高いリフレッシュレートに対応しているか
ただ、私はこのツールを「モニター選びの決め手」にするのは、まだ早いと考えています。ベータ版で、動かす条件も細かいからです。ゲームが 60fps 以上で安定して出るなら、まずはモニターのリフレッシュレートそのものを上げるほうが、点滅のない素直な方法です。CRTビームシミュレーターは、60fps に固定されたゲームやレトロゲームをくっきり遊びたいときの、追加の手段として考えるのがよさそうです。
なお、高いリフレッシュレートは、モニターを買い替えただけでは出ないことがあります。Windows の表示設定でリフレッシュレートが 60Hz のままになっていたり、ケーブルや端子が対応していなかったりするためです。ShaderBeam を試す前に、まず Windows の「ディスプレイの詳細設定」で今のリフレッシュレートを見てください。

よくある質問
普通の60Hzモニターでも、ShaderBeamで残像を減らせますか?
60Hz のモニターでは使えません。ShaderBeam は 100Hz 以上のモニターが必要で、作者は 240Hz 以上を推奨しています。Blur Busters も、モニターのリフレッシュレートが映像のフレームレートの 2 倍以上、できれば 4 倍以上あることを勧めています。
CRTビームシミュレーターを使うと、ちらつきは気になりませんか?
仕組みが画面を細かく点滅させるものなので、ちらつきを感じることがあります。ShaderBeam の作者も Blur Busters も、点滅する映像が出ることと、光に敏感な方への注意を明記しています。目の疲れや気分の悪さを感じたら、すぐに使うのをやめてください。
ShaderBeamを入れると、パソコンが壊れたりゲームが重くなったりしませんか?
パソコンが壊れるようなツールではありませんが、ゲームと同時にシェーダーの計算をするため、GPU に余裕がないと不規則な点滅やずれが出ます。作者は、CPU の内蔵グラフィックスなど 2 つ目の GPU でシェーダーを動かすことを勧めています。まだベータ版なので、動作が不安定なときは Ctrl+Shift+Q で終了してください。
まとめ
ゲーミングモニターの残像は、液晶や有機ELが 1 コマの絵を光らせ続ける「ホールド型」の表示から来ています。Blur Busters の CRTビームシミュレーターは、ブラウン管のように一瞬だけ光る動きを高いリフレッシュレートで再現し、60fps の映像なら 240Hz のモニターで最大 75% 残像を減らせるとしています。Windows では無料の ShaderBeam で試せます。
ただし ShaderBeam はベータ版で、100Hz 以上のモニター、VRR を切ること、できれば 2 つ目の GPU といった条件があり、仕組み上の点滅と明るさの低下もあります。おすすめできるかどうかは、モニターと遊ぶゲーム次第で、私もまだ決めきれていません。まずはブラウザのデモで自分の画面に合うかを確かめ、合わないと感じたら無理に使わない。それで十分だと思います。ゲーミングPCの構成や設定を一緒に見てほしいときは、ご来店・出張でご相談ください。











