
最近、スプレッドシートとにらめっこしてました。RTAイベント『RTAちゃんの夏休み』の全体スケジュール表です。7日間×24時間、ゲームタイトルがびっしり詰まった表を端から端まで読んでいたら、気づいたことがあります。これ、視聴者側の睡眠時間が存在しない。
走者はゲームをRTAする。私たち視聴者は、次の目当ての枠までに睡眠を最速でクリアする。名付けて「睡眠RTA」です。この記事では、8月9日から15日までの約120本を全日程ぶん拾い上げつつ、各日の「睡眠RTA難易度」も添えてお届けします。苫小牧のパソコン屋、ピシコの本田秀行がまとめました。よろしくお願いします。
RTA in Japanといえば、夏と冬に開催される国内最大級のRTAイベント。ですが今年の夏は少し形が違います。RTA in Japanが持つ巨大なTwitchチャンネルを、日本各地の有志RTAイベント団体に半日単位で貸し出し、各団体が持ち時間の中で自分たちのイベントを開催する。それを7日間つなげたのが『RTAちゃんの夏休み』です。
つまり中身は「複数のイベントの詰め合わせ」。時間帯によって主催団体もノリも選曲…じゃなくて選ゲームもガラッと変わります。テイルズだけの夜があり、Celesteだけの朝があり、アトリエが咲き乱れる木曜があり、音ゲーで幕を閉じる土曜がある。1週間で夏フェスを7本ハシゴするようなものです。

初日の日中枠はFukuoka RTA Forumが担当するオンオフ混合開催。そして1発目が『メジャーWii パーフェクトクローザー』です。通称ダメジャー。伝説の怪作野球ゲームで夏の祭典が幕を開けるという、この采配だけで主催の本気(の方向性)が伝わってきます。日曜の朝8時、寝坊したら開幕投手を見逃します。
夜はホラー・不思議系の流れから、深夜に『ドラゴンクエストVII Reimagined』の長丁場へ。2025年発売のリメイク版がもうRTAイベントの深夜枠を張っているの、走者コミュニティの研究速度が怖い。初日の睡眠RTA難易度は「低」。DQ7を朝まで観たい人だけ覚悟してください。
2日目、午前は前夜からの流れで『黄昏ニ眠ル街』『ビューティフル塊魂』『Arcaea』『救国のスネジンカ:Sentinel Girls2』と続きます。そして昼12時頃、突然「開会式」が現れます。イベント2日目の昼に開会式。リレー形式なので各イベントごとに開会式があるだけなんですが、表で見ると完全にバグった時空です。この枠は夕方の「閉会式」まで、インディーゲーム中心の濃いラインナップが続きます。
夜20時からはテイルズ専門イベント「Tales of Speedrun Showcase」の枠。ベルセリア→エクシリア2→デスティニーDCと、夜通しテイルズ3連戦です。RPGのRTAは戦闘の最適化と移動ルートの練り込みが芸術の域なので、シリーズファンは寝られません。月曜の夜という好立地に置かれた夜行列車、これが睡眠RTA最初の関門です。難易度は「中」。
テイルズ夜行が明けた朝6時頃から、今度は高難度アクション『Celeste』だけの枠が始まります。その数、なんと6本。Any%レースが3本、All Red Berriesレース、さらにカスタムマップのTAS Showcaseが2本。1つのゲームを6枠並べて全部見せ方を変えてくるの、コミュニティの練度が高すぎる。Celesteに人生を捧げた人たちの朝がここにあります。
夜はソニックとNFSでスピード感を上げてから、深夜のサガフロへ。GeoGuessrのRTAは「地球のどこかに置かれて場所を当てる」ゲームを最速で回すという意味不明な競技で、地理オタクの脳の回転を生で見られます。私はGeoGuessrで自宅の近所を外したことがある人間なので、走者の正体が知りたい。睡眠RTA難易度は「中」です。
水曜未明は『Titanfall 2』『Owlboy』『Dead Cells』と海外タイトルの良作が続く時間帯。朝には『ポケットモンスター 緑』という初代直球も待っています。そして昼のブロックがまた濃い。『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のゲームをRTAで観られる機会、人生でそう何度もありません。夜は『Clair Obscur: Expedition 33』という2025年の話題作まで飛び出します。
水曜の夜からは、木曜まる1日を使ったガスト・コーエーテクモ系タイトルの長い長い夜が始まります。睡眠RTA難易度は「中」ですが、アトリエファンにとってはここからが本番なので、水曜のうちに仮眠を仕込んでおいてください。

木曜未明から朝にかけては『ユーディーのアトリエ』『BLUE REFLECTION TIE/帝』『ライザのアトリエ2』とガスト作品が連なります。錬金術士たちが釜をかき混ぜている間、視聴者は睡眠と視聴を調合できずに爆発します。そして午前のブロックが終わると、昼のリストに『Fate / Grand Order』の文字が。ソシャゲのRTAって何をどう走るんだ、と思ったあなた。私も同じ気持ちです。だから観るしかない。
夜は『THE 自動車教習所DS』で免許を最速取得する謎の時間から、『Hollow Knight』『カービィのエアライダー』を経て、深夜の『炎姫』へ。この日の睡眠RTA難易度は「高」。アトリエで夜明かしした人が、木曜深夜にまた炎姫で起きている。もう夏休みの生活リズムじゃなくて夏休み最終日の生活リズムです。
金曜未明は『ミラーズエッジ カタリスト』『バイオハザードRE:3』、夜明け前に『Bloodborne』。獣の狩人が朝日と共に去っていくの、ヤーナムの住人的にも正しい生活リズムです。朝8時からは『スーパーマリオブラザーズ』で正気に戻り、そこから昼にかけて『チャタンヤラクーシャンク』『ウンコテクニカ』という、文字を打っているだけで会社のPCが心配になるタイトルが並びます。どちらも実在するゲームです。ここは真剣もふざけも全部本気の枠。
夜は転覆した豪華客船から脱出する『セプテントリオン』、2025年リメイクの『空の軌跡 the 1st』、そして深夜のスターフォックス64。金曜の睡眠RTA難易度は「高」。翌日が最終日なので、ここで無理をするか温存するか、走者ならぬ視聴者の戦略が問われます。
最終日。未明は『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』(前日に続いて2度目の登場。別イベント・別走者・別カテゴリで観比べられるのはリレー形式の役得です)、『Overcooked! 2』『シャドウゲイト(NES版)』などを経て、朝の『デビルワールド』へ。そして日中は圧巻の音楽ゲーム大行進です。ノスタルジア、crossbeats、Crackin’ DJ、DDRが2本、締めにbeatmania IIDX INFINITAS。RTAイベントのフィナーレをリズムゲームの物量で締める、最高に夏祭りっぽいエンディングです。
『ケツバトラー』もこの日です。メディアの紹介記事でも名指しされていた注目(?)タイトル。『Fit Boxing feat. 初音ミク』のRTAに至っては、走者が最速でエクササイズをこなすという、もはや観ているだけで健康になれそうな枠です。最終日の睡眠RTA難易度は「無」。だってこの日で終わりだから、悔いなく完走してください。
全部書き出して改めて思うんですが、この表、色の切り替わりが「日本各地のRTAコミュニティの継ぎ目」なんですよね。福岡の団体が走り、テイルズ専門イベントが夜を担ぎ、Celeste勢が朝を明け渡され、ガスト愛好家が丸一日をもらう。半日単位のチャンネル貸出という仕組みが、全国に散らばる小さなコミュニティの熱を一本の配信につないでいる。大きなイベントを一つ作るのではなく、小さなイベントの集合体として夏を成立させる。これはインフラの設計として相当に賢い。地方で商売をしている身としては、この「中央のリソースを地方に開放する」構造にちょっと感動すらしました……という話を始めると本業のIT談義が止まらなくなるので、この辺でやめておきます!

8月9日の朝8時、ダメジャーの始球式から、8月15日の20時、IIDXの最後のノーツまで。約120本のRTAが、日本各地のコミュニティの手で7日間つながります。全部観るのは無理です。無理なので、狙いを定めて、あとは潔く睡眠RTAを走ってください。伝えたいことは書きました。今年の夏休みの宿題は「よく観て、よく寝る」。それだけです。








