Ryzen Z2は、AMDが2025年1月に発表した、ポータブルゲーミングPC向けの新しいAPU (Accelerated Processing Unit) です。Zen 4アーキテクチャを採用したCPUとRDNA 3.5アーキテクチャを採用したGPUを統合し、高いゲーミング性能と電力効率を実現しています。
Ryzen Z2の性能と種類
Ryzen Z2シリーズは、以下の3つのモデルで構成されています。
- Ryzen Z2 Extreme: 最上位モデル。8コア16スレッドのCPUと16基のRDNA 3.5 GPUコアを搭載し、最大ブーストクロック5.0GHzを実現。
- Ryzen Z2: ミドルレンジモデル。8コア16スレッドのCPUと12基のRDNA 3 GPUコアを搭載し、最大ブーストクロック5.1GHzを実現。
- Ryzen Z2 Go: エントリーモデル。4コア8スレッドのCPUと12基のRDNA 2 GPUコアを搭載し、最大ブーストクロック4.3GHzを実現。
Ryzen Z2シリーズは、前世代のRyzen Z1シリーズと比べて、CPU性能とGPU性能が大幅に向上しています。また、電力効率も改善されており、バッテリー駆動時間の延長に貢献。
Ryzen Z2シリーズを搭載したポータブルゲーミングPCは、2025年第1四半期に登場する予定です。ASUSのROG Allyや、LenovoのLegion Goなどの後継機に搭載される可能性があります。
主な特徴:
- Zen 4アーキテクチャを採用したCPU
- RDNA 3.5/3/2アーキテクチャを採用したGPU
- 最大8コア16スレッドのCPU
- 最大16基のGPUコア
- 最大5.1GHzのブーストクロック
- LPDDR5/LPDDR5Xメモリをサポート
- PCIe 4.0をサポート
期待される効果:
- ポータブルゲーミングPCのゲーミング性能が向上
- バッテリー駆動時間が延長
- より高画質・高フレームレートでのゲームプレイが可能に
Ryzen Z1との性能差
そこでRyzen Z2シリーズは、前世代のRyzen Z1シリーズと比べて、CPU性能とGPU性能が大幅に向上していますがどの程度のものなのでしょうか。具体的な性能比較を調べてみました。
CPU性能
- アーキテクチャ: Z2はZen 4アーキテクチャを採用し、Z1はZen 4アーキテクチャを採用しています。Zen 4アーキテクチャはZen 4アーキテクチャよりもIPC (Instructions Per Clock) が向上しており、同じクロック周波数でもより多くの命令を実行できます。
- コア数/スレッド数: Z2 ExtremeとZ2は8コア16スレッド、Z2 Goは4コア8スレッドです。Z1 ExtremeとZ1は8コア16スレッド、Z1 Goは4コア8スレッドです。コア数とスレッド数は同じですが、アーキテクチャの進化によりZ2シリーズの方が高い性能を発揮します。
- クロック周波数: Z2 Extremeは最大5.0GHz、Z2は最大5.1GHz、Z2 Goは最大4.3GHzです。Z1 Extremeは最大4.9GHz、Z1は最大5.0GHz、Z1 Goは最大4.2GHzです。Z2シリーズはZ1シリーズよりもクロック周波数が向上しており、処理速度が向上しています。
- キャッシュ: Z2 ExtremeとZ2は合計24MBのキャッシュ、Z2 Goは合計10MBのキャッシュを搭載しています。Z1 ExtremeとZ1は合計24MBのキャッシュ、Z1 Goは合計10MBのキャッシュを搭載しています。キャッシュ容量は同じですが、アーキテクチャの進化によりZ2シリーズの方がキャッシュ効率が向上しています。
GPU性能
- アーキテクチャ: Z2 ExtremeはRDNA 3.5アーキテクチャ、Z2はRDNA 3アーキテクチャ、Z2 GoはRDNA 2アーキテクチャを採用しています。Z1 ExtremeとZ1はRDNA 3アーキテクチャ、Z1 GoはRDNA 2アーキテクチャを採用しています。RDNA 3.5/3アーキテクチャはRDNA 2アーキテクチャよりも性能が向上しており、より高いフレームレートでゲームをプレイできます。
- GPUコア数: Z2 Extremeは16基、Z2とZ2 Goは12基のGPUコアを搭載しています。Z1 Extremeは12基、Z1とZ1 Goは4基のGPUコアを搭載しています。Z2シリーズはZ1シリーズよりもGPUコア数が増加しており、グラフィックス処理能力が向上しています。
- クロック周波数: Z2シリーズのGPUクロック周波数は公開されていませんが、Z1シリーズよりも向上していると考えられます。
その他
- メモリ: Z2シリーズはLPDDR5/LPDDR5Xメモリをサポートしています。Z1シリーズはLPDDR5メモリをサポートしています。LPDDR5XメモリはLPDDR5メモリよりも帯域幅が広く、メモリ性能が向上しています。
- PCIe: Z2シリーズはPCIe 4.0をサポートしています。Z1シリーズはPCIe 3.0をサポートしています。PCIe 4.0はPCIe 3.0よりも帯域幅が広く、ストレージや外部デバイスとのデータ転送速度が向上しています。
性能向上によるメリット
- ゲーミング性能の向上: CPU性能とGPU性能が向上したことで、より高いフレームレートでゲームをプレイできるようになります。
- バッテリー駆動時間の延長: 電力効率が改善されたことで、バッテリー駆動時間が延長されます。
- より高画質・高フレームレートでのゲームプレイ: より高画質・高フレームレートでのゲームプレイが可能になります。
Ryzen Z2シリーズは、Z1シリーズと比べてあらゆる面で性能が向上しており、ポータブルゲーミングPCのゲーミング体験をさらに進化させることが期待されます。
各シリーズの比較
Ryzen Z1シリーズとRyzen Z2シリーズの比較を表形式でまとめます。
特徴 | Ryzen Z2 Extreme | Ryzen Z2 | Ryzen Z2 Go | Ryzen Z1 Extreme | Ryzen Z1 | Ryzen Z1 Go |
---|---|---|---|---|---|---|
CPUアーキテクチャ | Zen 4 | Zen 4 | Zen 4 | Zen 4 | Zen 4 | Zen 4 |
GPUアーキテクチャ | RDNA 3.5 | RDNA 3 | RDNA 2 | RDNA 3 | RDNA 3 | RDNA 2 |
CPUコア数/スレッド数 | 8コア/16スレッド | 8コア/16スレッド | 4コア/8スレッド | 8コア/16スレッド | 8コア/16スレッド | 4コア/8スレッド |
最大ブーストクロック | 5.0GHz | 5.1GHz | 4.3GHz | 4.9GHz | 5.0GHz | 4.2GHz |
GPUコア数 | 16 | 12 | 12 | 12 | 4 | 4 |
メモリ | LPDDR5/LPDDR5X | LPDDR5/LPDDR5X | LPDDR5/LPDDR5X | LPDDR5 | LPDDR5 | LPDDR5 |
PCIe | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 4.0 | PCIe 3.0 | PCIe 3.0 | PCIe 3.0 |
TDP | 未公開 | 未公開 | 未公開 | 9-30W | 9-30W | 9-30W |
発売時期 | 2025年第1四半期 | 2025年第1四半期 | 2025年第1四半期 | 2023年第2四半期 | 2023年第2四半期 | 2023年第2四半期 |
・TDPはThermal Design Powerの略で、CPUの熱設計電力を表します。
・発売時期はあくまで予定です。
この表から、Ryzen Z2シリーズはRyzen Z1シリーズと比べて、CPU性能、GPU性能、メモリ、PCIeなど、あらゆる面で進化していることがわかります。特に、GPUアーキテクチャの進化とGPUコア数の増加は、ゲーミング性能の向上に大きく貢献すると期待されます。
搭載モバイルゲーミングPCの予想
Ryzen Z2シリーズはまさにモバイルゲーミングPC向けに設計されたAPUなので、今後搭載される見込みは非常に高いですよね。AMDは、Ryzen Z2シリーズを搭載したモバイルゲーミングPCが2025年第1四半期に登場する予定と発表しています。
具体的な機種としては、以下のものが考えられます。
- ASUS ROG Allyの後継機: 初代ROG AllyはRyzen Z1 Extremeを搭載して人気を博しました。その後継機にRyzen Z2 Extremeが搭載される可能性は高いでしょう。
- Lenovo Legion Goの後継機: Legion GoもRyzen Z1 Extremeを搭載した強力なモバイルゲーミングPCです。Ryzen Z2シリーズの搭載が期待されます。
- AYANEOなどの新型機: AYANEOは、Ryzen 6000Uシリーズを搭載したゲーミングPCを複数発売しているメーカーです。Ryzen Z2シリーズを採用した高性能モデルが登場する可能性があります。
- Steam Deckの後継機: Valveは、Steam Deckの後継機にRyzen Z2シリーズを採用する可能性について、まだ明言していません。しかし、Ryzen Z1シリーズを採用した実績があることから、可能性はゼロではありません。
- その他メーカーの新機種: RazerやGPDなど、他のゲーミングPCメーカーもRyzen Z2シリーズを採用したモバイルゲーミングPCを発売する可能性があります。
Ryzen Z2シリーズは、前世代のRyzen Z1シリーズと比べてCPU性能とGPU性能が大幅に向上しており、モバイルゲーミングPCの性能をさらに引き上げるポテンシャルを秘めています。今後、Ryzen Z2シリーズを搭載した様々なモバイルゲーミングPCが登場し、市場が活性化することが期待されます。
NVIDIA製GeForceシリーズとの比較
最後に、Ryzen Z2シリーズに搭載されているGPUの性能をNVIDIA GeForceと比較するとどうなのか?と考えましたが、アーキテクチャや搭載されているモバイルゲーミングPCの熱設計などが異なるため単純な比較は難しいですが、いくつかの情報源と推測を基に、おおよその目安として以下の通り考えてみました。
Ryzen Z2 Extreme (RDNA 3.5, 16CU)
- GeForce RTX 4060 Laptop GPU: RDNA 3.5アーキテクチャの性能向上とCU数の増加を考慮すると、RTX 4060 Laptop GPUに近い性能を持つ可能性があります。
Ryzen Z2 (RDNA 3, 12CU)
- GeForce RTX 3060 Laptop GPU: RDNA 3アーキテクチャの性能とCU数を考慮すると、RTX 3060 Laptop GPUに近い性能を持つ可能性があります。
Ryzen Z2 Go (RDNA 2, 12CU)
- GeForce GTX 1650 Laptop GPU: RDNA 2アーキテクチャとCU数を考慮すると、GTX 1650 Laptop GPUに近い性能を持つと考えられます。
・上記はあくまでもおおよその目安です。実際の性能は、ベンチマークテストの結果などを見る必要があります。
・Ryzen Z2シリーズのGPUは、モバイルゲーミングPC向けに最適化されています。そのため、消費電力や発熱を抑えながら、高い性能を発揮するように設計されています。
・GeForce Laptop GPUは、様々なメーカーのモバイルPCに搭載されています。そのため、同じGPUを搭載していても、PCの熱設計や電力供給によって性能が異なる場合があります。
Ryzen Z2シリーズのGPUは、モバイルゲーミングPC向けに最適化されているため、単純な性能比較だけでなく、消費電力や発熱も考慮する必要があります。今後のベンチマークテストや、Ryzen Z2シリーズを搭載したモバイルゲーミングPCのレビューに注目することで、より正確な性能評価が可能になるでしょう。
今から楽しみですね!!