
SSD 4TBの価格を調べて、そっとタブを閉じた方。こんにちは、仲間です。去年の私は「まだ2TBで足りてるしな」と言って買うのを見送りました。その判断は今、しっかり請求書になって返ってきています。私はこれを見送り税と呼んでいます。
この記事では、いくら払うことになったのかという現在の相場と、なぜこうなったのかという理由、そして今から買う人が損をしにくい判断のしかたを順番に書きます。数字はすべて出典付きです。感情の部分だけ、少し多めに入っています。
まず現在地を確認します。日々の最安値を追いかけているデータベースの数字がこちらです。感想は後にします。
比較対象を置きます。2025年2月には、AKIBA PC Hotline!が「4TB SSDが一時3万円割れ」という見出しで特価を報じていました。あれから約1年半で、同じ4TBが78,980円。ざっと2.6倍です。
パソコンのパーツは黙っていれば安くなるもの、というのが長らく業界の常識でした。私もその常識で生きてきました。去年見送った差額はおよそ5万円。これが見送り税の税額です。納付先はどこにもなく、ただ払い損ねた分だけ将来の自分が高く買うという、なかなか良くできた制度になっています。

SSDの値段は、中に入っている記憶用チップの値段でほぼ決まります。そのチップの相場が、とんでもない動き方をしました。
半導体市場を追っているExa Technologiesの分析によると、TLCと呼ばれる種類のNANDは2024年を通じて1個あたり5〜8ドル台、2025年前半は5ドル台の底値圏に沈んでいました。それが2025年10〜11月を境に急騰し、2026年3月には約30ドルに到達しています。わずか5カ月で約5倍です。
理由は大きく三つに整理されています。ひとつ目は、AIのデータセンター向け需要が爆発したこと。同分析では、企業向けSSDの契約価格が2025年だけで50%以上上がったとされています。ふたつ目は、メーカー側がシェア争いをやめて利益率を優先し、生産量を絞ったこと。三つ目は、大口の顧客が数年単位の長期契約で押さえてしまい、市場に出回る自由な在庫が減ったことです。
つまり私たち個人が買うSSDは、値上がりの主役ではありません。AIサーバーの取り合いに巻き込まれた、隣の席の人です。
ここからが、今回いちばんお伝えしたい話です。冒頭の最安値を1TBあたりの単価に割り直すと、この相場の本当の異常さが出てきます。
1TBが19,980円、2TBが19,835円、4TBが19,745円。1TBあたりの単価が、容量を増やしてもほぼ横一線になっています。かつては容量が倍になるほど単価が下がるのが当たり前で、だからみんな少し背伸びして大きいものを買っていました。その割引が、事実上なくなりました。
さらにおかしいのが8TBです。1TBあたり26,392円と、小さい容量より3割以上も割高になっています。大容量ほど得だった常識が、上下ひっくり返っています。
大容量モデルは、1枚の基板にNANDを詰め込む数が多いぶん、チップ相場の上昇をそのまま何倍にも受けます。加えて、AIサーバーが欲しがるのはまさに大容量帯です。個人向けの8TBは、企業向けの高値と同じ土俵で在庫を取り合う位置にいます。だから小容量より先に、そして深く値上がりする。ここまで書いていて自分でも良い分析だなと思いましたが、分析が冴えたところで78,980円が安くなるわけではないので、話を戻します。

現状は「急騰の真っ最中」ではありません。前出のExa Technologiesの分析では、2026年5月時点で上昇の勢いは鈍り、高値のまま横ばいという局面に入っています。冒頭の最安値も、直近1週間は動いていませんでした。上がりきって、そこで固まっている状態です。
では下がるのか。ここは断定できません。同分析では、意味のある生産能力の拡大は早くても2027〜2028年で、2026年いっぱいは供給不足が続く見込みとされています。一方で2027年後半には供給が改善するという予測もあり、専門メディアの間でも時期の見方は割れています。確かなのは「今年中に半額になる材料はない」というところまでです。
そして、需要側がまだ止まっていないことを示すニュースが今月出ています。
AI業界がNANDに新しい使い道を追加している最中に、個人向けの在庫がだぶついて値崩れする。その絵は、今のところ描きにくいです。
用途で切り分けます。ご自分がどちらに当てはまるかで読み進めてください。

見送り税の話をさんざんしておいて何ですが、税を払わずに済ませる道もあります。買うか待つかの二択に、もうひとつ足してください。そもそも4TBが必要かどうかを疑う、という道です。
店頭で容量不足のご相談を受けたとき、私が最初に見るのは何がディスクを埋めているかです。実際に確認してみると、遊んでいない大容量ゲーム、二重に取り込まれた写真フォルダ、クラウドとの同期設定で全ファイルをパソコン側に置いたままになっているデータ。この三つで数百GBが動くことは珍しくありません。ここを整理するだけで、買い替えが数年先に延びる方もいます。
それでも足りない場合は、役割を分けるのが今の相場に合っています。起動ドライブと現役のデータはSSDに置き、見返すだけの写真・動画・過去の案件は外付けHDDへ。SSDの1TBあたり約2万円に対し、HDDはまだ桁がひとつ違います。速さが要らないデータに、いま最も高い部品をあてがう必要はありません。
見送り税というのは、要するに「必要になる前に決めなかったこと」への課税です。相場が下がるかどうかは私たちには決められませんが、自分のパソコンに何が入っているかを把握しておくことは、今日できます。









