
先に結論
1
苫小牧の年間降雪量の平年値は145cmです。気象庁が公表している1991年から2020年の平均値です。
2
ただし雪が降る日は年103.5日あります。降る日は多いのに、量が積み上がらない。これが苫小牧の冬の正体です。
3
ついでに分かったこと。苫小牧で霧がいちばん出るのは夏です。年42.6日のうち、5月から8月に32.8日が集中しています。
苫小牧の人は全員、同じことを言います。「うちは雪少ないよ」。
私も言います。16年言い続けています。ところが「なんで少ないの」と聞かれると、途端に答えられません。海が近いから、くらいのことを口にして、相手も納得したふりをしてくれる。あれを毎年やっています。
お盆も明けたので、気象庁のデータを開いて確かめました。思っていたのと、少し違いました。
まず、数字です
145
cm 年間降雪量
103.5
日 雪の降る日数
31
cm 年最深積雪
42.6
日 霧の日数
面白いのは、上の2つを並べたときです。年間で145cm降るのに、降る日は103.5日ある。割ると、1日あたり1.4cmです。
つまり苫小牧は、雪が降らない街ではありません。3日に1日は降っている街です。ただ、そのほとんどが積もらない量で終わる。窓の外は白いのに、朝になると道路が出ている。あの感覚には、ちゃんと数字の裏づけがありました。
最深積雪の平年値も31cmです。一冬でいちばん積もった日ですら、その程度ということになります。月ごとに見ると、いちばん深いのは2月の28cm。降雪量が最も多いのは1月と2月で、それぞれ42cmです。
なぜ、雪雲が届かないのか
豆知識:西高東低と、あいだにある山
冬型の気圧配置になると、大陸から冷たい風が日本海を渡ってきます。海の上で水分をたっぷり吸い込んだ空気が、北海道の西側にぶつかって雪を落とす。倶知安や岩見沢が豪雪になるのはこの仕組みです。
苫小牧は、その山を越えた向こう側にあります。雪雲は山に登る途中で中身を落としきってしまい、太平洋側へ出てくるころには降らせる力を失っている。北海道新聞は2026年2月の記事で、苫小牧を山々が雪雲を遮る「恵まれた立地」と表現しています。
2026年2月27日には、苫小牧市内で元気象庁職員の出村孝弘さんによる講演も行われています。そこでも、西高東低の気圧配置と地形の関係が答えとして示されました。倶知安の年間降雪量が900cm以上であることと並べると、145cmという数字の意味がはっきりします。同じ北海道で、6倍以上の差があります。
ついでに、夏の霧の話が出てきました
雪を調べていて、思わぬところで手が止まりました。霧の日数です。
苫小牧の霧日数は年42.6日。その内訳が偏っていて、5月6.7日、6月9.6日、7月10.1日、8月6.4日。合わせて32.8日が、5月から8月に集中しています。年間の8割近くです。逆に1月は0.0日、12月は0.1日。冬にはほとんど出ません。
日照時間を見ると、この話はさらにはっきりします。苫小牧で日照時間が最も短い月は7月で108.1時間。次が6月の119.7時間です。年間で最も長いのは4月の173.5時間。
真夏が、一年でいちばん日が差さない。これは苫小牧に住んでいる人なら、言われてみれば思い当たるはずです。7月に「今年は夏がない」と毎年言っているのは、気のせいではありませんでした。
風向きも季節でひっくり返っています。9月から4月までの最多風向は北。ところが5月は南西、6月と7月は南南東、8月は南東。夏のあいだだけ、海のほうから風が入ってきます。霧が夏に集中するのと、無関係ではないはずです。
店長より
店の前に立って16年、なんとなく分かっていたつもりのことが、数字にすると全部つながりました。夏に日が差さないのも、冬に道路が出ているのも、同じ地形の話だった。地元にいるほど、こういうことを確かめずに済ませてしまいます。
少ないからこそ、油断が事故になります
ここまで読んで「じゃあ楽だな」と思った方に、先に釘を刺しておきます。移住を考えている方は特にです。
ここは要確認
「少ない」は道内での比較です。苫小牧の年間降雪量145cmは、本州の多くの地域から見れば十分に雪国の数字です。冬タイヤも除雪道具も要ります。ここを勘違いして来ると、最初の冬で痛い目に遭います。
そして、市街地の外に一歩出ると話が変わります。国道276号で支笏湖方面へ上がっていくと、標高が上がるにつれて雪の量がまったく別物になります。市街地が乾いた路面でも、山に入れば別の世界です。千歳・恵庭方面へ北上する場合も同じです。
もうひとつ、3月です。平年値でも3月の降雪量は26cmあり、12月の29cmとほぼ変わりません。真冬に少なかった年ほど、春先にまとめて降ることがあります。「今年は楽だった」と思った3月に足をすくわれる、というのは苫小牧ではよくある話です。(2026年8月確認)
よくある質問
Q
苫小牧は札幌より住みやすいということですか?
A
雪かきの負担という一点に限れば、苫小牧は道内でかなり有利な部類です。ただし住みやすさは雪だけで決まりません。苫小牧は年平均風速が3.2m/sあり、冬は北風が続きます。雪が少ない代わりに、風で体感温度が下がる日があります。数字を見て選ぶなら、雪と風はセットで考えてください。
Q
苫小牧の夏は涼しいのですか?
A
平年値で見ると、8月の平均気温は20.4℃、日最高気温の平均は23.4℃です。7月は平均18.2℃。数字のうえでは涼しい部類に入ります。ただし湿度は7月で88%、8月で86%あり、日照は少ない。カラッと涼しいというより、湿っていて日が差さない夏、と言ったほうが実態に近いはずです。
Q
この数字は、自分でも確かめられますか?
A
確かめられます。この記事の数字はすべて、気象庁の「過去の気象データ検索」で苫小牧を選び、平年値の表を開いたものです。誰でも無料で見られます。他の街と比べたければ、地点を変えるだけです。移住を検討していて雪が気になるなら、候補地の数字を並べてみるのが確実です。
一次情報
この記事の降雪量・積雪・気温・湿度・日照時間・風速・霧日数は、すべて気象庁が公表している苫小牧の平年値です。統計期間は1991年から2020年の30年間。ただし霧日数と雪日数は2004年から2020年、雲量は1991年から2004年と、要素によって期間が異なります。
出典:気象庁「過去の気象データ検索」苫小牧 平年値(年・月ごとの値)(2026年8月確認)
3日に1日は雪が降る。それでも積もらない。夏はいちばん日が差さない。ずっと住んでいると、これが当たり前の景色になります。
当たり前の理由を知っていると、この街のことを人に説明できるようになります。次に「苫小牧って雪少ないんでしょ」と聞かれたら、145cmと103.5日の話をしてみてください。だいたい、驚かれます。
この記事の情報は2026年8月時点のものです。平年値は10年ごとに更新されるため、最新の数値は気象庁の公式ページでご確認ください。実際の降雪量・積雪は年によって大きく変動します。
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