
「スマホで音楽聴くのに、音質ってそんなに変わるの?」って思う方、多いんじゃないでしょうか。ぼく自身も「まあ聴ければいいか」派なんですが、先日ちょっと気になるニュースを見かけまして。
中国のイヤホンブランド「MOONDROP(水月雨)」が、音質に全振りしたAndroidスマートフォン「MIAD01」を国内で発売しました(2026年5月、税込77,400円)。PCショップとしてはスマホをメインで扱うわけじゃないんですが、「この発想おもしろいな」と思ったので、今日はそこを掘り下げてみます。
「音質特化スマホ」って言葉、ちょっと矛盾してるみたいで面白いんですよね。普通のスマホって音質をあまり重視しないじゃないですか。そこにあえて全力を注いだ製品です。
MOONDROPは中国のオーディオメーカーで、もともとはイヤホン・ヘッドホン専業ブランドです。日本でも「e☆イヤホン」などのオーディオ専門店で取り扱いがあって、音楽好きのあいだでは結構知られた存在です。
そのイヤホンメーカーが「じゃあスマホ作っちゃえ」と参入してきた、というのがMIAD01の立ち位置です。普通のスマホメーカーが音質にこだわるんじゃなくて、音にこだわる会社がスマホという形を借りた、というほうが正確かもしれません。
まずざっとスペックを見てみましょう。難しい用語は後で解説します。
| 画面 | 6.7インチ 120Hz フレキシブルOLED(2,460×1,080) |
|---|---|
| チップ(SoC) | MediaTek Dimensity 7050(ミッドレンジ帯) |
| メモリ / ストレージ | 12GB / 256GB(microSD最大2TB対応) |
| DAC | Cirrus Logic「MasterHIFI」× 2基(デュアルDAC) |
| 出力端子 | 4.4mmバランス + 3.5mmステレオミニ(両方あり) |
| 音質指標 | ダイナミックレンジ132dB、S/N比117dB |
| Bluetooth | SBC / AAC / LDAC対応 |
| バッテリー | 5,000mAh(バランス出力で連続27時間再生) |
| カメラ | メイン6,400万+800万画素 / サブ3,200万画素 |
| OS / 通信 | Android 13 / 5G対応(nano SIM×2) |
| 価格 | 77,400円(税込) |
スペック表の中でいちばん聞き慣れない言葉が「4.4mmバランス端子」じゃないかと思います。ここを丁寧に説明します。
スマホやパソコンでよく見る丸いイヤホンジャック、あれは「3.5mmステレオミニジャック」といいます。左右の音声信号と、その基準となるグラウンド(GND)という3本の線でできています。
これに対して「バランス接続」は、左右それぞれに独立したGNDを持ちます。つまり信号線が合計4本(左+/左−/右+/右−)になります。これが「4.4mm」という少し太めの端子が必要な理由です。
左右が干渉しないぶん、音のクロストーク(混線)が減り、定位感(音がどこから来るかの感覚)や分離感が向上するとされています。ヘッドホン・イヤホン好きな方の間では「バランス駆動」として広く知られた接続方式です。
スマホで4.4mmバランス端子を搭載しているのは、ほぼソニーのウォークマン・Xperiaくらいしか思い当たらないくらい珍しいです。MIAD01はそれを当たり前のように載せてきました。
もうひとつのキーワード「DAC(ダック)」についても触れておきます。
DACとは「Digital-to-Analog Converter」の略で、デジタルデータの音楽ファイルをアナログ音声信号に変換するチップのことです。スマホはもちろんPC・タブレットすべてにDACが入っています。ただ多くの機器はコスト優先の小さなDACチップで済ませているため、音質的には最低限の性能です。
MIAD01はCirrus Logicという音響用チップで有名なメーカーの「MasterHIFI」というDACを2基搭載(デュアルDAC)しています。左右それぞれに専用チップを当てることで、バランス接続との相性もよく、S/N比117dBというスペックを実現しています。
S/N比(シグナル・トゥ・ノイズ比)とは「音の信号」に対して「ノイズの小ささ」を表す数値です。数字が大きいほど静かな環境でもクリアに聴こえます。
あまり取り上げられていませんが、ぼくが一番「本気だな」と思ったのはここです。
5G通信は電波の周波数が高く、スマホ内部の回路に電磁ノイズが乗りやすいという特性があります。普通のスマホはオーディオ回路がほかの回路と同じ基板上にあるため、通信中に「ジーッ」というノイズが音に混ざることがあります。
MIAD01はこの問題に対して、6層イマージョンゴールド音響プリント基板+独立シールド構造というアプローチで対策しています。つまり、オーディオ回路を電磁的に壁で囲って守っている、ということです。
スマホで通話しながらスピーカーから「ブツブツ」音がしたことありませんか?あれが電磁干渉です。MIAD01はそれをハードウェアレベルで本気で対策しています。
音質に全振りした代わりに、割り切っているところも当然あります。
搭載チップ「MediaTek Dimensity 7050」は、処理性能でいえば中堅クラスです。同じ7〜8万円台のPixelやiPhoneのような最上位チップには及びません。重量級のゲームをバリバリ動かしたい用途には向きません。
発売時点でAndroid 13というのは、最新のAndroid 15と比べると2世代前です。セキュリティアップデートの継続期間が気になるところです。
画素数は高いですが、カメラ性能は音質の優先度には遠く及びません。「スマホカメラで写真を撮りまくる」用途の方には向いていません。
- 有線イヤホンで高音質を楽しみたい
- DAPとスマホの2台持ちをやめたい
- 4.4mmバランス対応イヤホンを持っている
- 音楽再生が使用時間の大半を占める
- スマホでゲームをよくプレイする
- カメラ重視でスマホを選んでいる
- Bluetoothイヤホンしか使わない
- 音質にこだわりがない
音質特化といえば「DAP(デジタルオーディオプレーヤー)」という専用機器があります。ウォークマンの上位モデルやAstell&Kern製品がその代表格です。
77,400円という価格は、ちょうど中〜上位DAPとかぶります。「じゃあDAPを買えばいいのでは?」という話になりますが、DAPはスマホの機能(通話・各種アプリ)を持ちません。
MIAD01の価値は「スマホとDAPを1台にまとめられること」です。外出時に2台持ちしなくていい、というシンプルさが最大の強みです。一方で、専用DAPと純粋な音質で比較したとき、専用機のほうが有利な場面もあります。どちらを重視するか、という選択になります。
MIAD01は「普通のスマホとして買う製品ではない」というのが正直な感想です。処理性能やカメラよりも、音をとことん真剣に聴きたい人のための専用デバイスがスマホの形をしている、という理解が正確です。
一方で、スマホメーカーが音質をどんどん軽視してきた(イヤホンジャック廃止がその象徴です)流れに対して、「本気で音をやる」と言い切った製品として、ぼくはわりと好感を持ちました。
「4.4mmバランス端子って何?」というところから始まって、スマホの音質設計がここまで奥深いと知ってもらえたら、この記事を書いた甲斐がありました。スマホやオーディオ機器の選び方で迷ったときは、いつでも気軽にご相談ください。
ピシコはPC修理がメインですが、スマホやガジェット全般の「これってどういう意味?」という素朴な疑問も大歓迎です。まずはご相談から、お気軽にどうぞ。
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難しいことを難しくなく伝えるのがピシコの得意なことのひとつです。
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