
セキュアブートを有効にできない。BIOSを開いて、Secure Bootという項目までちゃんとたどり着いたのに、灰色になっていて選択すらさせてもらえない。WarzoneやBlack Ops 7を遊ぶためだけにここまで来たのに、最後の一歩で門前払いを食らっている人が、いま相当な数いるはずです。
先に申し上げておくと、そのグレーアウトは故障ではありません。むしろPCは正常です。正常に、あなたのPCが「まだ資格を満たしていません」と言っているだけです。Secure Bootは設定じゃなくて、称号なんです。
まず、なぜ急にこんな話になったのか。原因はゲーム側の要件変更です。Activisionが最新のCall of Dutyシリーズで、TPM 2.0とSecure Bootの両方を必須にしました。公式サポートページの情報を先に置いておきます。
ここ、ネット上の解説がかなり雑に混ざっているところです。Black Ops 7とWarzoneは「遊べるけど、ランクプレイなど一部が閉ざされて、同じ条件のプレイヤーだけの部屋に入れられる」。Modern Warfare 4のベータは「オンラインが丸ごと遊べない」。同じ必須要件でも、殴られ方が違います。
つまり要件を満たしていないと、ゲームは起動する、ロビーにも入れる、でも本気で遊びたい場所には入れない。これがまさに「称号」の扱いです。持っていない人を追い出すのではなく、持っている人だけが入れる区画を作る。ランク戦の入り口に立った瞬間、BIOSの設定が身分証として提示される時代になりました。

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。多くの人がいきなりPCを再起動してBIOSに突っ込んでいくのですが、その前にやるべきことがあります。Activisionが「Call of Duty Secure Attestation Wizard」という判定ツールを無料で配布しています。自分のPCが要件を満たしているか、満たしていないならどこが引っかかっているかを、Windows上から数十秒で教えてくれます。
ボス戦の前に公式が攻略本を無料で配っているのに、誰も受け取らずに素手で突っ込んでいる。そういう状況になっています。まずは順番に、現状を確認してください。

で、本題のグレーアウトです。Secure Bootが押せないのは、その機能が壊れているからでも、マザーボードがケチだからでもありません。Secure Bootという称号には、授与条件が2つ前提として置かれているからです。
Activision公式が挙げているSecure Bootの要件は3つです。BIOSのブートモードがUEFIであること(Legacyではないこと)、ディスクのパーティション形式がGPTであること(MBRではないこと)、そしてBIOSでSecure Bootを有効にすること。この3つは並列ではなく、下から順に積み上がっています。
土台がGPT。その上にUEFIブートモード。いちばん上にSecure Bootのスイッチ。土台のGPTが崩れていると、その上のUEFIに切り替えても起動しなくなるだけで、いちばん上のスイッチには永遠に手が届きません。グレーアウトしているのは、あなたが押しそこねているからではなく、まだ順番が回ってきていないからです。
もう1つ、忘れられがちな前提があります。Call of Dutyが求める対応OSは、Windows 10ならバージョン22H2以降、Windows 11なら任意のバージョンです。TPM 2.0の動作自体は20H2以降で成立しますが、ゲーム側はさらに新しい22H2以降を要求します。Windows 10で止まっている方は、まずWindows Updateでバージョンを確認してください。
なお、Windows 11のPCはこれらの機能がOSの要件として必要なため、すでに両方とも有効になっている可能性が高いと公式も書いています。詰まっているのはほぼWindows 10勢、それも数年前にショップやフリマで手に入れたゲーミングPCです。当時Legacyモードのまま組まれ、動作に支障がなかったので誰も気づかないまま、今日まで元気に動いてきた個体。それが今回、ゲームに掘り起こされました。
ここから先は正確さがすべてなので、飾らずに書きます。作業を始める前に、この警告だけは読んでください。
変換自体はデータを消さない仕組みですが、失敗時に起動できなくなる可能性はゼロではありません。作業前に、消えて困るデータのバックアップを外付けドライブに取ってください。これは省略しないでください。

全部有効にしたのにゲームが認めてくれない。この状態を公式は「Failed Attestation Status(認証失敗)」と呼んでいます。ここまで来た人が引っかかる原因は、だいたい3つに絞られます。
このAMDファームウェアの不具合があると、TPMの登録処理に失敗し、enrollaik.exe の確認画面で「はい」を選んでも同じ画面が何度も出続けます。該当する場合は、マザーボードメーカーのサポートに更新版BIOSの有無を確認してください。
ゲームを初回起動すると、CODBrokerInstaller.exe というプログラムのユーザーアカウント制御(UAC)の画面が出ます。ここでPCの管理者ユーザー名とパスワードを入力して「はい」を選ばないと、TPMの設定を検証できずプレイできません。環境によっては enrollaik.exe という名前で出ることもあります。見慣れない名前のプログラムなので反射的に閉じてしまいがちですが、これは正規の処理です。
また、CODBrokerInstaller.exeの認証拒否エラーが出るのにUACの画面自体が表示されない場合は、UACの通知設定が下がっている可能性があります。スタートメニューで「ユーザーアカウント制御設定の変更」を開き、通知レベルを既定または最上段に戻してください。
「TCG Event Log Failed」という通知が出た場合、これはWindowsが最新でないことが原因です。公式の案内も明快で、PCを再起動して最新のWindows Updateを適用してください、の一点です。ゲームのために半日BIOSと格闘した末の答えがWindows Updateだった、というのはなかなか味わい深い展開ですが、そういうものです。
ここまで書いてきて、お気づきの方もいると思います。TPM 2.0、Secure Boot、UEFIブート、GPTディスク。この4点セット、どこかで見たことがある。Windows 11のシステム要件です。ほぼそのまま重なっています。公式が「Windows 11のPCはOSの要件として必要なので、すでに両方有効になっている可能性が高い」と書いているのは、そういうことです。
つまり今回の騒動でやっていることは、実質的にWindows 11への引っ越し準備そのものです。Windows 10のサポートが終わった後も現役で使い続けている人にとって、ずっと先延ばしにしてきた宿題が、ゲーム会社から出された形になりました。ゲームメーカーが、OSメーカーができなかった移行を促している。マイクロソフトが5年かけて説得できなかった人たちを、Call of Dutyが一晩で動かしています。
この構造は面白くて、チート対策のために起動時の信頼性を検証したいゲーム会社と、セキュリティ基盤を刷新したいOSメーカーの利害が完全に一致している。今後、他の対戦ゲームも同じ要件を並べてくる可能性は十分にあります。ここから先は「オンライン対戦をするPCには一定のセキュリティ水準が要求される時代」という話に広がっていくわけですが——すみません、遊びたいだけの人にする話ではありませんでした。戻します。
実務的な結論はシンプルです。今回の作業をきちんと通しておけば、Windows 11に上がるときの前提条件は片付いています。ゲームのためにやった作業が、そのままPCの寿命を数年延ばす。悪い買い物ではありません。

Secure Bootは設定ではなく称号だ、という話から始めました。称号というのは、条件を満たした機体にだけ与えられるものです。そして今回の条件は、Activisionが決めたものではなく、この10年でPCの世界が静かに切り替えてきた標準そのものでした。ゲームは、その切り替えに気づかないまま走り続けてきたPCに、ようやく気づかせただけです。伝えたいことは書きました。あとは、無事に称号を取りに行ってください。









