Windows 11のアップデート後に不具合が出た——具体的には、昨日までふつうに遊べていたゲームが急に落ちる。ひどいときはPCごと勝手に再起動する。そんな症状の報告が、2026年8月中旬から一気に増えています。
先に種明かしをすると、犯人はゲームではありません。ゲームは無実です。私はこの一連の騒動を勝手に「無実のゲーム逮捕事件」と呼んでいます。落ちるのはゲーム、疑われるのもゲーム、再インストールされるのもゲーム。でも真犯人は、あなたのPCを七色に光らせているあのソフトかもしれない、という話です。
問題の更新プログラムは、2026年8月11日に配信された「KB5121003」です。Windows 11の24H2ならビルド26100.9168、25H2ならビルド26200.9168になる、いわゆる月例のセキュリティ更新。つまり自動で入ってくるタイプです。避けようがない。気づいたら入っている。そして気づいたらゲームが落ちている。
Microsoftが公式に挙げている症状は次の4つです。ゲームが応答しなくなる。ゲームが予告なく終了する。「EXCEPTION_ACCESS_VIOLATION」というエラーが表示される。そして、PCが警告なしに再起動する。報告で名前が挙がっているゲームは「ARC Raiders」「MARVEL Tōkon: Fighting Souls」「THE FINALS」の3本ですが、仕組み上、この3本だけと言い切れる段階ではありません。
大事なのは、この不具合が全員に起きるわけではないという点です。後述する特定のドライバが入っているPCで、特定のゲームを起動したときにだけ発生します。「更新が悪い」と「うちのPCで起きる」の間には、もう1人登場人物がいるんです。
「無実のゲーム逮捕事件」が厄介なのは、状況証拠が完璧にゲームを指しているところです。更新のあとに落ちるのはゲームだけ。ブラウザは元気。動画も見られる。そりゃゲームを疑いますよね。再インストールして、設定を消して、グラフィックドライバまで入れ直して、それでも落ちる。ここで多くの人が心を折られます。
真犯人は、キーボードやマザーボード、ケースファンのRGB照明を制御するユーティリティが、裏でこっそり入れているドライバでした。ゲーミングPCなら、光り物の同期ソフトが最初から入っていることが多い。しかも海外の報告では、周辺機器メーカーのアップデートツール経由でこのドライバが入っていた例もあります。つまり本人は「inpoutx64」なんて名前、一度も見たことがないまま被害者になっているわけです。
ここからは情報の確度を分けて書きます。Microsoftが公式に認めているのは「RGB関連のドライバと特定ゲームの組み合わせで問題が起きる」というところまでです。一方、ネット上でよく見かける「今回の更新でカーネルのハンドル検証が厳しくなり、これまで見逃されていたドライバの不正なハンドル操作がバグチェック0x93(INVALID_KERNEL_HANDLE)を引き起こすようになった」という説明は、ユーザーが投稿したクラッシュダンプ解析から出てきた有力な仮説であって、Microsoft自身はまだこの因果関係を明言していません。有力ではある。でも公式確定ではない。この区別は大事です。
……と、ここまで書いて気づいたんですが、カーネルのハンドル検証の話、町の修理屋のブログでする話か?というレベルまで潜ってしまいました。浮上します。ざっくり言えば「Windowsが行儀の悪いドライバに急に厳しくなった可能性が高い」、それくらいの理解で今日のところは充分です。
対処法は「安全な順」に3段階あります。おすすめは断然1つ目。Microsoftが公式に案内している、レジストリでドライバを一時的に無効化する方法です。削除ではなく無効化なので、あとで元に戻せます。
ここからは手順です。ふざけずに書きます。作業前に必ずレジストリのバックアップを取ってください。
THE FINALSとARC Raidersの開発元であるEmbark Studiosは、コマンドプロンプトからinpoutx64のサービスを停止・削除し、ドライバファイル自体を取り除く手順を公式に案内しています。こちらは「無効化」ではなく「削除」なので一歩踏み込んだ操作です。RGB系ソフトの更新や再インストールでドライバが復活して振り出しに戻ることもあれば、逆に関連機能が丸ごと使えなくなることもあります。私としては、可逆的な段階1を先に試すことをすすめます。
更新プログラム自体を削除すれば症状が消える可能性はあります。ただしKB5121003は多数のセキュリティ脆弱性の修正を含む月例更新で、外せばその修正もまとめて外れます。ゲームの安定と引き換えにPC全体を無防備にするのは、正直、割に合いません。どうしても外す場合は、Windows Updateを一時停止して自動再インストールを防ぎつつ、恒久修正が出たらすぐ入れ直す前提で。「外して終わり」ではなく「外して待つ」が正しい姿勢です。
なお、9月の更新でも「音が出ない」「画面が真っ暗」などの不具合が相次ぎ、緊急パッチKB5129195が配信されています。直ったものと直っていないものは、こちらにまとめました。
段階1を試しても落ちる場合は、原因が別にある可能性が出てきます。グラフィックドライバ、他の常駐ソフト、ハードウェアの不調——候補は一気に広がるので、ここからは切り分けの作業です。店頭でこの手のご相談を受けるとき、たいてい「ゲームは再インストール済み」の状態から始まります。その努力が無駄だったわけではなく、「ゲームは無実」という捜査結果が1つ手に入ったと考えてください。切り分けというのは、そういう地味な消去法の積み重ねです。
レジストリを触るのが怖いという方は、それが正常な感覚です。怖がりながら自己流でやるより、怖いまま持ってきてもらったほうが早くて安全なことも多いです。
「無実のゲーム逮捕事件」は、真犯人が光り物のソフトだと分かった時点で、事件としてはほぼ解決です。あとはドライバの無効化という手続きを踏むだけ。疑ってごめんなさいの一言とともに、ゲームを釈放してあげてください。
