
「AIコンサルはもう不要なんじゃないか」。SNSでAI導入支援の広告を見かけるたび、そう思ってしまう瞬間が増えました。断っておくと、私はパソコン修理店の店長でありながら、AI活用のご相談も受けている側の人間です。つまりこの記事は、かなりの部分で自分の足を撃っています。
かつてホームページを作るには、HTML、CSS、JavaScript、サーバー、ドメイン、FTP、WordPress、データベースといった知識が必要でした。だから「ホームページを作れる人」そのものに値段が付いた。制作費が数十万円、ときに百万円を超えても、それは技術の対価として成立していたわけです。
そこにWordPressが普及し、テーマが増え、ノーコードツールが来て、最後にAIが来ました。Wixは2026年1月に対話型AIエージェント「Aria」を中核とする Wix Harmony を投入し、業種と要望を会話で伝えるだけで、ページ構成もデザインも文章も、予約システムまで載ったサイトを生成するところまで来ています。旧来のWix ADIは2024年11月に廃止済みで、いまや入口そのものが会話です。
結果として起きたのが、SNSで見かける「3万円でホームページ作ります」「月額数千円で運用します」の乱立です。これ自体は悪いことではありません。技術が一般化すれば価格は下がる。市場原理としては教科書どおりの話です。
ただ、ここに見落としがあります。価格が下がったことが問題なのではありません。技術を持っているという事実が、そのまま商売の理由にならなくなったことのほうが問題なのです。
店長より
従来のIT技術では、この順番が守られていました。新技術が出る、専門家が生まれる、講師が生まれる、スクールができる、そして一般に広がる。専門家が先を走り、一般ユーザーが後を追う。その時間差が、そのまま受講料になっていたわけです。
AIはこの順番を壊しました。
たとえば「ChatGPTで文章を書きましょう」という講座を作ったとします。半年後にはAI自身が「文章を書くだけでなく、社内資料を読み込ませて回答システムを作りましょう」と提案し始める。さらに半年で「では実際に作ります」まで進む。教材を書いている最中に、教材の中身がAIに吸収されていくわけです。
しかも厄介なのは、AIが自分自身の使い方まで説明することです。Excelの使い方をExcel自身に聞ける時代は、長いこと来ませんでした。Photoshopがマンツーマンで教えてくれることもなかった。AIだけが、自分の取扱説明書を自分で書きます。
数年前、プロンプトエンジニアリングという言葉が飛び交っていました。「あなたはマーケティングの専門家です。以下の条件に従って分析してください」と書けるかどうかで、出力がまるで変わったからです。あの頃はたしかに、聞き方を知っている人に価値がありました。
いまのAIは、雑に聞いても勝手に深掘りしてきます。業種と人数と困りごとを少し話せば、連携できる業務、蓄積すべきデータ、権限管理の必要性、実装の順番まで向こうから出してくる。「他にない?」の一言で、その続きを考える。
ここで一度、話を戻します。私はこの節を書きながら、少し語りすぎている自覚があります。AIが賢くなったから人間が要らない、という話をしたいのではありません。効いているのは賢さではなく、AIを使うために必要な予備知識が減り続けていることのほうです。賢さは専門家の守備範囲を広げますが、予備知識の減少は守備範囲そのものを溶かします。
ここまでは肌感の話でした。数字を見ます。
触っている人は、もう十分すぎるほどいます。増えていないのは、触った結果で会社の形が変わった事例のほうです。
店長より
この数字が効くのは、それが「AIを使っていない企業の割合」ではないからです。使ってはいる。使ってはいるのに、仕事のやり方には手を入れていない。導入と変革のあいだに、はっきりした段差があるという意味の27.0%です。
そして海外でも、構図そのものは大きく変わりません。
段差があるということは、そこに人の仕事が残っているということでもあります。どこが残り、どこが置き換わるのか。整理すると、思ったよりくっきり分かれます。
つまり商品はAIではありません。商品は結果です。
「AIを導入します」では、もう弱い。「見積作成にかかる30分を5分にします」「毎日1時間のメール対応を10分にします」「社員が探している社内資料を10秒で見つけられるようにします」。ここまで言えて、ようやく値段の理由になります。ホームページ制作会社が生き残ったのも同じ理屈で、企業が本当に欲しかったのはホームページではなく、問い合わせと売上と信用でした。
「こういう業務をAI化したい」と相談されたコンサルタントが、その場でAIに設計案を書かせることができます。仕様書もコードもテストもマニュアルも。当然、参入障壁は下がります。障壁が下がれば業者が増え、業者が増えれば価格が下がる。
その先にあるのは、いま格安ホームページ業者が立っている場所と同じ景色です。「AI導入パック49,800円」が普通になる未来は、そこまで突飛な想像ではないと思っています。
AIは「こうしたほうが合理的です」とは言えます。ただ、その会社の人間関係までは知りません。新しい仕組みを嫌がる社員がいること。この取引先だけFAXが必要なこと。社長がスマートフォンしか使わないこと。経理担当者しか触ってはいけないデータがあること。現場は、そういうもので出来ています。
そして最後に残るのが責任です。AIは提案しますが、「この仕組みで会社を回します」と決めるのは人間です。
賞味期限のバグの話に戻ります。知識の鮮度は落ちる。落ちる速度は年々上がっている。ではこのバグの影響を受けない在庫は何かというと、資格でもプロンプト集でもAI歴でもなく、「それを実際にやったことがありますか」への答えだけです。経験と実績と責任には、賞味期限が付きません。
店長より
SNSに並ぶ格安ホームページ業者とAIコンサル業者は、まったく別の業界に見えて、同じ坂を違う地点で転がっているだけなのかもしれません。技術が普及し、参入障壁が下がり、業者が増え、価格が下がり、最後には「それができること」で誰も驚かなくなる。AIはそのサイクルを、過去とは比べものにならない速度で回しています。
「AIコンサル」という言葉が少しだけ古く感じ始めた理由は、たぶんそれだけのことです。伝えたいことは書きました。














