
この記事は、たぶん本人には届かない手紙です。先日、自作PCのトラブルでご来店された若いお客様の「切り分け」が、あまりにも見事でした。パソコン修理歴16年の私が、カウンター越しに本気で嫉妬した話を書きます。
先日ご来店くださった若いお客様。ご自身で組んだ自作PCの調子が悪いとのことで、店頭で状況を伺いました。ここまではよくある光景です。問題はここからでした。
どこまでの問題が起きていて、どこまでのチェックを自分で行って、何が確認できなかったから当店に依頼するのか。この三点を、彼は最初の数分で冷静に説明しきったんです。修理屋が診断の入口でやる仕事が、もう終わっていました。
修理する人間には型があります。肌の感覚で直す人。データを参照して直す人。エラーコードを検索して直す人。彼はその全部を、たぶん無自覚に使い分けていました。私の出番は、本当に一言二言でした。
店長より
ここで一度、手紙の筆を置いて解説します。彼の何がすごかったのか、この一語に尽きるからです。
今のパソコン修理は、突き詰めると部品交換です。壊れた電子部品を特定して、交換すれば直る。交換手順そのものは、AIに聞けばかなりの精度で返ってくる時代です。つまりプロの価値は、「どの部品が犯人かを判別すること」と「ご本人が気づいていない点に気づかせること」に寄ってきています。
彼の場合、その判別が店に着く前にほぼ済んでいました。私が付け足せたのは、経験上の補足をわずかに数点。16年この仕事をしていて、こんな依頼はめったにありません。
プロがお客様に嫉妬するなんて、格好悪い話です。でも、しました。しかも当店には、嫉妬したときのルールがあります。必ずご本人に伝えるんです。
ここまでの才能があるなら、これで食べていく必要はないけれど、何らかの形で仕事につなげたほうがいい。趣味でもいい、頼まれてパソコンを組んであげるだけでもいい。トラブルの検証ができるスキルは、パソコンを組む人にとって一番大事な力だから。そんなことをお伝えしました。
私たちのように長くやっていると、「こうあるべき」が増えて頭が固くなります。彼らは柔らかいスポンジのように何でも吸収していく。AIを使い倒して、自分専用の修理エンジンみたいなものを組み上げる未来すら見えます。……と、若者の未来を勝手に背負って語りすぎました。修理屋は修理の話に戻ります。
店長より
最後に、この手紙を横から読んでくださったあなたへ。切り分けの才能は、特別な機材がなくても今日から鍛えられます。目安を置いておきます。
三つ以上当てはまったら、素質は十分です。全部当てはまったあなたは、たぶんもう化け物です。当店に来る前に、だいたい直ってしまうと思います。それでいいんです。
拝啓で始めたので、結びます。あの日の若いお客様へ。君はやばい。とんでもない化け物だ。そのスキルを、あわよくばこのまま磨き続けてほしい。ゲームで遊ぶだけじゃなく、パソコンを組むこと自体を楽しみ続けてほしい。伝えたいことは書きました。敬具。
店長より














