
SSDの健康状態を確認しようとCrystalDiskInfoを開いたら、モデル名の横に[FAKE]。いや待ってください、これフリマアプリでもなんでもなく、ちゃんとした店で買ったやつなんですけど。……という通報が実際に成立してしまう不具合がありました。
しかも犯人は模造品ではありません。模造品を見つけるために追加された機能のほうです。この記事では、正規品に偽物の札が貼られてしまうこの現象を「ラベル冤罪」と呼ぶことにします。
2026年7月25日に公開されたv9.9.2で、この冤罪は取り下げられました。ただし取り下げられたことを知らないまま「うちのSSDは偽物だったのか」と落ち込んでいる方がまだいるはずなので、順を追って書いていきます。ピシコの本田です、よろしくお願いします。
誤検出が起きていたのは、AMD RAID環境(RAIDXpert2)でSSDを接続している場合です。RyzenのPCでRAIDを組んでいる方、あるいはマザーボードの設定でRAIDモードのまま使っている方が該当します。ここに正規のSamsung製SSDをつなぐと、モデル名に[FAKE]が付いてしまうケースがありました。
なお「判定ロジックのどこがどう間違っていたのか」までは公表されていません。分かっているのは、この環境で起きていたこと、そしてv9.9.2で直ったこと。この2点です。原因の推測を書きたくなる場面ですが、そこは書けることの外側です。
つまり、ドライブは最初から何も悪くなかったわけです。悪かったのは札の貼り方。それでも[FAKE]の4文字は破壊力があって、見た瞬間に返品ボタンを探しに行く気持ちはよく分かります。

[FAKE]は、2026年5月18日公開のv9.9.0で追加された比較的新しい機能です。Samsung製を謳う模造品のSSDが市場に出回っていることへの対応として、偽物と判定されたドライブのモデル名にこの札が付くようになりました。
機能そのものは歓迎すべきものです。速度を測ったり分解したりしなくても、いつも使っているソフトの画面で怪しさに気づける。模造品対策としては、これ以上ないくらい正しい置き場所だと思います。
5月18日に登場して、7月25日に誤判定の修正。デビューから2カ月ちょっとで冤罪事件を起こしてしまった新人検事、という構図です。ただ、ここは擁護しておきたい。世の中に存在する全構成を事前に試すのは無理ですし、こういう機能は出してみないと分からない部分が必ず残ります。2カ月で直っただけ速いほうです。
ここが今回いちばんお伝えしたい部分です。v9.9.0とv9.9.2のあいだには、v9.9.1というバージョンが挟まっています。
そしてv9.9.1の変更点は、東芝製SATA SSDへの対応改善と言語ファイルの更新。[FAKE]の誤判定には手が入っていません。つまりv9.9.1に上げただけの人は、まだ冤罪の真っ最中です。
「最新版にしてください」という案内が役に立たない典型例です。数字まで見ないと分からない。
少しだけ仕組みの話をさせてください。ここが分かると、ラベル冤罪が「起こりうるもの」として腑に落ちます。
CrystalDiskInfoは、ドライブに内蔵されたS.M.A.R.T.という自己診断の仕組みから情報を取得して、読みやすい形に並べ替えて見せるツールです。ドライブを開けてもいないし、性能を測ってもいない。ドライブ自身が名乗った内容を、整えて表示しているだけなんですね。
模造品の判定も、突き詰めれば同じ土俵の上にあります。名乗ってきた内容が本物らしいかどうかの照合。相手の申告を読んでいる以上、読み取り経路が変われば結果も揺れる。今回それが起きた場所が、たまたまAMD RAID環境だったという話です。
この話を広げていくと、ウイルス対策ソフトの検知はどうなんだ、バッテリーの劣化表示はどうなんだ、スマホの「ストレージがいっぱいです」は何を根拠に言っているんだ……と際限がなくなるので、このへんでやめておきます。危ない。

最後の項目だけは、本物でも偽物でも先にやっておいて損がありません。模造品のSSDは寿命が読めませんし、本物だったとしてもバックアップが無駄になることはない。真贋の答え合わせより、データの避難のほうが先です。
それと、更新作業そのものにも小さな罠があります。
今回の件をまとめると、こうなります。模造品を見つける機能が5月に追加され、7月にその誤判定が修正された。間に挟まったv9.9.1では直っていない。該当環境の方は、数字を確認してv9.9.2以降にする。以上です。
ただ、この記事で本当に持ち帰ってほしいのは手順のほうではありません。ラベル冤罪という言葉を、今日から頭の隅に置いておいてほしい。PCまわりの画面は、推定を断定の顔で出してきます。ディスクの健康状態、ウイルスの検知、バッテリーの劣化度。どれも「そう読めた」という報告であって、確定した事実ではない。
表示を疑いすぎる人も、信じすぎる人も、同じくらい損をします。ちょうどいい距離は、四文字のアルファベットに冤罪をかけられたSSDが教えてくれました。伝えたいことは書きました。









