BIOSの設定を変えようとした。あるいはWindowsが起動しないので、詳細スタートアップから「UEFIファームウェアの設定」を開こうとした。そうしたらBIOS画面が真っ黒のまま、何も映らない。キーを押しても反応がなく、ケースの中でファンだけが元気に回っている。
この「BIOS画面が真っ黒」問題、持ち込まれる方の第一声はだいたい「マザーボードが死にました」です。でも、死んでいないことのほうが多い。
私も昔、自分のPCでこれをやりました。深夜2時、基板交換を覚悟し、通販サイトでマザーボードをカートに入れるところまでいった。原因はモニターケーブルの挿し先でした。あの夜の覚悟を返してほしい。
先に結論
BIOS画面が真っ黒で固まる原因の多くは故障ではなく、BIOSの映像がWindowsとは別の端子に出ている「出口ズレ」です。グラフィックボードを積んだPCで特に起きやすい現象です。
ファンが回って電源ランプが点くなら、まずモニターケーブルを今と逆側の端子(グラフィックボード⇔マザーボード)に挿し替えて再起動。次に別のモニターやケーブル、メモリの挿し直し、最後にCMOSクリア、の順で切り分けます。
まず「どの真っ黒」かを切り分ける
「画面が真っ黒」と一口に言っても、中身は3種類あります。ここを混ぜたまま検索すると、対処法をいくら読んでも自分の症状に当たりません。深夜2時の私が、その人でした。
① 電源は入る(ファンが回る)のに、最初から何も映らない
メーカーロゴも出ない、Windowsも出ない。これはBIOS以前の話で、映像の出口かハードウェアのどちらかです。今回の手順はそのまま使えますが、原因の幅は少し広めになります。
② Windowsまでは映る。BIOSや詳細スタートアップに入った瞬間だけ真っ黒
これが今回の主役です。Windowsが映るということは、CPUもメモリもグラフィックボードも生きている。それなのにBIOSに入った瞬間だけ消える。つまり部品は無事で、「BIOSがどこに映像を出しているか」だけがズレている可能性が高い。
③ 一度は何か映るのに、途中で止まる
ロゴが出て固まる、点滅する、英語のエラーが出る。これは別の話(ストレージやブートローダー)なので、今回は扱いません。症状が③の方は、そのエラー文をそのまま検索したほうが早いです。
店長より
持ち込みのとき「Windowsは映るんですけど」の一言があるだけで、診断の半分は終わります。この一言、ぜひ持ってきてください。
なぜBIOS画面だけ真っ黒になる?「出口ズレ」の正体
最近のPCには、映像の出口が最大2か所あります。CPUに内蔵されたグラフィック機能(マザーボード背面の端子に出る)と、単体のグラフィックボード(拡張スロット側の端子に出る)。Windowsが起動したあとは、ドライバがどちらの端子にモニターがつながっているかを見て、うまく映してくれます。
問題はWindowsが起動する前です。BIOS(UEFI)はドライバなしで動くので、「最初に映像を出す装置」を設定で1つに決め打ちしています。マザーボードの設定項目でいう「Initial Display Output」「Primary Display」などがそれです。ここが「グラフィックボード優先」なのにケーブルがマザーボード側に挿さっている、あるいはその逆。BIOSは律儀に、誰もいない端子へ映像を出し続けます。 これが出口ズレです。
用語:UEFI(BIOS)とは
UEFIとは、電源を入れた直後にパソコンの部品を初期化し、どのディスクからOSを起動するかを決める、マザーボードに書き込まれたプログラムである。古い呼び名がBIOSで、今のPCはほぼUEFIだが、慣習的にBIOSと呼ばれ続けている。Windowsの「詳細スタートアップ」→「トラブルシューティング」→「UEFIファームウェアの設定」は、再起動してこのUEFIの設定画面へ飛ぶ機能。Windowsのドライバが動く前の世界なので、映像の出し方はWindowsとは別ルールになる。
ややこしいのは、内蔵グラフィックのないCPUがあることです。Ryzen 5000シリーズの無印(末尾にGが付かないもの)やIntelの末尾Fモデルは内蔵グラフィックを持たず、マザーボード背面の映像端子は最初から飾りです。 そこに挿しても、BIOSどころかWindowsも映りません。一方、Ryzen 7000以降は多くのモデルに内蔵グラフィックがあり、Intelの無印もほぼ内蔵しているので、こちらは出口ズレが起きる条件が揃っています。
店頭で同じ症状の機体を預かったとき、私が最初に見るのはマザーボードでもメモリでもなく、背面のケーブルがどっちの端子に刺さっているか、です。ドライバーを握る前に、目で見て終わることがある。
ここ、見落としがちです:モニターが犯人のこともある
出口が合っていても映らないことがあります。古いモニターやテレビの中には、BIOSが出す解像度や信号のタイミングを受け取れず、Windowsが起動するまで真っ黒のままになるものがあります。Microsoftのフォーラムには、CMOSクリアもクリーンインストールも効かず、モニターを新しいものに替えた瞬間に映った事例が報告されています。逆に、テレビにつないだら映ったという報告もあります。DisplayPortをHDMIに変える、別のモニターを借りてくる。この一手を飛ばして基板を疑う人が、本当に多い。
……と、ここまで出口だの信号のタイミングだのと語っていますが、思い出してください。私はケーブル1本で深夜にマザーボードをカートに入れた人間です。理屈を知っていても、その場になると焦る。だから理屈より先に、手順にしておきます。
自分でできる切り分け手順(5ステップ)
上から順に試してください。1つ試すごとに再起動してBIOSに入り直します(電源投入直後にDeleteかF2を連打するか、Windowsの詳細スタートアップから)。順番には意味があります。上ほど安全で、下ほど元に戻すのが面倒です。
1
ファンと電源ランプを確認する
電源ボタンを押して、ファンが回るか、ランプが点くかを見ます。回らない・点かないなら電源系の話で、この手順の対象外です。回るなら次へ。
2
モニターケーブルを「今と逆側」の端子に挿し替える
グラフィックボード側に挿していたならマザーボード背面へ、背面に挿していたならグラフィックボード側へ。背面の端子はUSBなどと縦に並んだ端子群、グラフィックボード側は拡張スロットの横向きに並んだ端子群です。挿し替えたら再起動してBIOSへ。映ったら、BIOSの「Initial Display Output」などの項目を普段使う端子に合わせて保存すると、次回から挿し替えずに済みます。
3
ケーブルの種類とモニターを変える
DisplayPortならHDMIに(またはその逆に)。モニター側の入力切替も手動で合わせます。できれば別のモニターか、家のテレビにつないで試してください。ここで映れば、部品はすべて無事です。
4
メモリを挿し直す(2枚以上なら1枚にする)
電源を切り、コンセントを抜き、電源ボタンを5秒ほど押して放電します。スロット両端のレバーを開けてメモリを抜き、金色の端子に触れないように挿し直します。2枚以上あるなら1枚だけで起動確認。1枚挿しの定位置はマニュアルに書いてあります(CPUから2番目のスロットが多い)。
5
CMOSクリア(BIOSの設定を初期化する)
コンセントを抜いた状態で、マザーボード上のボタン電池を5分ほど外して戻すか、CMOSクリア用のボタンやジャンパピンを操作します。位置は必ずマニュアルで確認。作業前にケースの金属部分に触れて静電気を逃がしてください。手順4までで直らないときの、最後の手段です。
5番目のCMOSクリアは効くこともあります。ただ、順番は守ってください。冒頭の私のように、いきなり電池を抜く人が多いので。そしてCMOSクリアには、電池を抜く前に絶対に確認してほしいことが1つあります。
CMOSクリアの前に、BitLockerの回復キーを確認
CMOSクリアでセキュアブートやTPMの状態が変わると、次にWindowsを起動したときにBitLockerの回復キー(48桁の数字)を求められることがあります。キーが手元にないと、データは無事でもWindowsに入れません。Windows 11では初期設定で有効になっているPCが多いので、事前にMicrosoftアカウントの「デバイス」ページで回復キーを確認し、紙にメモしてから作業してください。あわせて、起動順序やメモリのXMP/EXPO設定など、自分で変えたBIOS設定はすべて初期化されます。
店長より
北海道の冬は静電気の季節です。カーペットの上でフリースを着てメモリを抜き差しするのは、本当にやめてください。指先が「パチッ」といって、次に部品が黙ります。
それでも真っ黒なら — 部品故障を疑う前のチェックリスト
5ステップをやりきってまだ真っ黒なら、ここから先は部品の話です。グラフィックボード、マザーボード、電源ユニットのどれか。店頭では検証用のグラフィックボード・メモリ・電源を1つずつ差し替えて、どこで映るかを見ます。予備の部品を持っていない人が自宅でやるのは難しく、このあたりが「自分でやる」の終点です。
特に、中のデータが必要なら、ここで止めてください。原因が電源やマザーボードならデータは無事なことが多く、分解を進めて逆に壊すのがいちばん悔しいパターンです。
持ち込む前に確認しておきたいこと
✓
Windowsまでは映るか、それとも最初から真っ黒か
✓
ケーブルはどの端子に挿していたか。逆側は試したか
✓
CMOSクリアはしたか。したならBitLockerの回復キーは手元にあるか
この6つを言える方は、私の中で静かに「できる人」認定されます。そして診断が速い。出口ズレか、モニターか、部品か。答えの半分は、このリストの中にあります。
店長より
一度もPCを開けたことがない方は、手順2と3だけやって持ってきてください。それだけで十分助かります。
店頭でよく聞かれる質問
Q
BIOS画面が真っ黒でも、パソコン自体は壊れていませんか?
A
ファンが回り、電源ランプが点き、Windowsまで映るなら、多くの場合は壊れていません。BIOSの映像がWindowsとは別の端子に出ている「出口ズレ」か、モニターがBIOSの信号を受け取れていないかのどちらかが疑われます。モニターケーブルを逆側の端子に挿し替える、別のモニターで試す、の2つで判断できます。
A
電源を切ってコンセントを抜き、マザーボード上のボタン電池を5分ほど外してから戻すか、CMOSクリア用のボタンやジャンパピンを操作します。位置は必ずマザーボードのマニュアルで確認し、金属部分に触れて静電気を逃がしてから作業してください。作業後はBitLockerの回復キーを求められることがあるので、事前にキーを控えておくと安心です。
Q
ケーブルもCMOSクリアも試したのに直らないときは?
A
グラフィックボード、マザーボード、電源ユニットなど部品レベルの故障が疑われます。予備の部品と差し替えて切り分ける必要があるため、自宅で続けるのは難しい段階です。中のデータが必要な場合は特に、これ以上の分解を進める前にご相談ください。
BIOSの真っ黒は、たいてい誰もいない端子に向かって映像を出し続けているだけです。出口ズレ。まずはケーブルを逆に挿す。マザーボードをカートに入れるのは、そのあとでいい。
この記事を書いた人
ピシコ店長
苫小牧市のパソコン・スマホ修理店「ピシコ」店長。PC・スマホ修理歴16年。店頭での実際の修理事例をもとに、地域の方に役立つ情報を発信しています。
プロフィール詳細
ケーブルを挿し替えても、電池を抜いても真っ黒。それはもう、あなたの手を離れていい段階です。
店頭では検証用のパーツを1つずつ差し替えて、どこで映るかを切り分けます。中のデータが心配な方は、分解を進める前にどうぞ。
まずはご相談から
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