
ゲームをしていたら画面が固まって、次に目に入ったのは英語だらけのBIOS画面。パソコンが落ちてBIOS画面に戻る、という相談は、店頭でも季節を問わず持ち込まれます。買ったばかりのPCで起きると、たいていの方は初期不良を疑ってドライバーを握ります。待ってください。握るのは、まだ早いです。
最初に、言葉の話をさせてください。ここを直すと、そのあとの切り分けが全部ラクになります。
BIOS(正確にはUEFI)は、電源を入れた直後に必ず通る場所です。パーツの点呼を取って、Windowsの入ったドライブを探して、見つけたらそこにバトンを渡す。あなたが普段BIOS画面を見ないのは、この点呼が一瞬で終わってバトンが渡っているからです。つまりBIOS画面は最終目的地ではなく、全員が毎回通っている通過点。
そこに留まっているということは、渡す相手が見つからなかったか、点呼の途中で異常が見つかったか。戻ってきたのではなく、先に進めなかった。この言い換えができた時点で、疑うべき場所は「BIOSの設定」から「何が消えたのか」に移動します。

この症状を調べると、メモリ・電源・SSD・オーバークロックと原因が横並びで出てきます。並べられても困ります。読者が知りたいのは「自分はどれなのか」であって、原因の一覧ではありません。
そこで整理し直します。原因は横並びではなく、二本の道に合流してからBIOS画面に到着しています。この二本を二又のBIOSと呼ぶことにします。
ゲームや動画書き出しのような重い処理をかけた瞬間にM.2 SSDがバスから脱落し、監視ソフトからもBIOSからも姿を消す。海外の自作フォーラムでも同じ訴えが繰り返し出てきますし、店頭でも「ゲーム中だけ落ちる」という条件付きの相談は珍しくありません。犯人候補は発熱、電源の供給、SSDコントローラの不具合、M.2スロットとSATAポートのレーン共有あたりです。
XMP/EXPOは、メモリに書き込まれた高速動作プロファイルをワンクリックで適用する機能です。便利ですが、中身は定格を超えた動作です。CPU側のメモリコントローラが当たり外れの範囲でついてこられないと、起動時の初期化に失敗します。すると多くのマザーボードは、黙って走り続けるのではなく手を挙げて止まる。それが経路Bです。
そしてここが大事なところで、メモリのオーバークロックは経路Aにも顔を出します。メモリまわりが不安定になるとPCIeのリンク確立が巻き添えを食い、健康なSSDがバスから落ちることがある。つまりXMPをオフにする一手は、二又の両方に同時に効きます。
順番が命です。上から順にやってください。1と2は工具も分解も不要で、ここまでで原因の見当がつくケースがかなりあります。

経路Bのエラー画面は、思いつきの仕様ではありません。マザーボードメーカーが公式に案内している正規の挙動です。
この「消せるが推奨しない」という書きぶりが、私はかなり好きです。マザーボードは異常を握りつぶして起動してしまうこともできる。できるのに、あえて手を止めて人間に知らせている。F1の通知を切るというのは、性能を上げる操作でも安定させる操作でもなく、唯一の目撃者に黙っていてもらう操作です。異常は残したまま、報告だけが消える。

この症状の本当に嫌なところは、電源を入れ直すと何事もなかったように起動してしまうことです。直ってしまうから、人は忘れます。そして次に同じ画面が出たときには、SSDはもう一歩ぶん寿命に近づいている。経路Aは、直った回数がそのまま猶予の消費量です。
なお、古めのデスクトップで「電源を入れるたびに日付や起動順序がリセットされている」場合は、マザーボード上のボタン電池切れという安上がりな結末もあります。可能性としては地味ですが、確認と交換のコストが最も低い部類なので、頭の隅には置いておいてください。
二又のBIOS。行き先が消えたのか、失敗を検出されたのか。どちらの道を通ってきたかは、あの英語だらけの画面がちゃんと語っています。伝えたいことは書きました。次にあの画面が出たら、慌ててF1を押す前に一枚撮ってください。









