
メモリ増設で起動しない。電源ボタンを押すとファンは回るのに、画面は真っ黒のまま。マザーボードの「VGA」と書かれたランプだけが白く点いて、いつまでたっても消えない。メモリを足しただけのはずなのに、グラボまで壊したのでは、と背中が冷たくなりますよね。
でも、そのランプは「グラボが壊れました」という判定ではありません。しかも DDR5 のメモリは、増設した直後の起動で 10 分以上なにも言わずに黙り込むことがあります。私はこれを勝手に「沈黙の 15 分」と呼んでいます。慌てて電源を切る前に、確かめる順番があるという話をします。
先に結論:メモリ増設のあと VGA ランプが点いたまま起動しないときは、グラボより先にメモリを疑います。まず 15 分ほど電源を切らずに待ち、それでもだめなら挿し直し、元のメモリだけに戻して起動するかを確かめ、最後にグラボ側を見ます。
DDR5 は最初の起動でメモリトレーニングという調整を行い、32GB で 10〜15 分かかることがあるとされています。その間は画面が映らないので、故障と見分けがつきにくいのです。
メモリ増設で起動しないとき、VGAランプが点いたままでもグラボ故障とは限らない
最近のマザーボードには、起動のどこで止まっているかをランプで教えてくれる仕組みがあります。ASUS なら「Q-LED」という名前で、ほかのメーカーのマザーボードにも似た表示ランプが付いていることが多いです。
用語:Q-LEDとは、ASUS のマザーボードに付いている診断用のランプのことで、電源を入れたあと CPU・メモリ(DRAM)・映像(VGA)・起動装置(BOOT)を順に確かめ、止まった段階のランプを点けたままにします。ランプは「どこまで進めたか」を示すもので、「何が壊れたか」を言い当てるものではありません。
ASUS のサポートページでは、ランプの順番と意味がこう整理されています。
| 順番 | ランプ | 点いたままの意味 |
|---|---|---|
| 1 | CPU(赤) | CPU が未検出またはエラー |
| 2 | DRAM(黄) | メモリが未検出またはエラー |
| 3 | VGA(白) | グラフィックスカード・内蔵グラフィックスが未検出またはエラー |
| 4 | BOOT(緑) | 起動デバイスが未検出またはエラー |
Q-LED は CPU(赤)→ DRAM(黄)→ VGA(白)→ BOOT(緑)の順に対処方法を案内している。メモリの項では、奥まで垂直に挿し直す、ユーザーマニュアルの推奨メモリー構成と同じスロットに挿す、2 枚以上で映らなければ 1 枚だけで試す、といった手順を挙げ、それでも直らなければ CPU の再装着や別の CPU での確認まで勧めている。
出典:ASUS「Q-LEDインジケーターでマザーボードのトラブルシューティングを実施する方法」
ここで大事なのは、メーカー自身が「メモリの問題なのに CPU まで疑え」と書いていることです。ランプは一つの部品を名指ししているようで、実は「ここから先に進めなかった」という途中経過の報告にすぎません。
そして、メモリを交換した直後に起動しなくなったのなら、変えたのはメモリだけです。グラボには指一本触れていない(はず)。だったら、ランプが VGA を指していても、疑う順番はメモリが先です。犯人探しの基本は「最後に何を変えたか」で、これはパソコンでも推理小説でも同じです。

メモリ増設のあとは、まず待つ。DDR5は最初の起動が長い
DDR5 のメモリは、挿し替えたあとの最初の起動で「メモリトレーニング」を行います。マザーボードが新しいメモリに合わせて、信号のタイミングや電圧を一つずつ確かめて調整する作業です。この間、画面には何も映りません。ランプは点いたまま、ファンだけが回っている。見た目は故障そのものです。
DDR5 メモリは初回起動時にトレーニングが行われるため時間がかかる場合があり、目安はメモリ容量 32GB で 10〜15 分程度。2 回目以降は数十秒程度に短くなるが、CMOS クリアや UEFI の設定変更をすると、あらためてトレーニングが行われる。
出典:TSUKUMO サポートFAQ「DDR5メモリに関するよくあるお問い合わせ」
10〜15 分というのは目安で、もっと長くなることもあります。PC Watch の記事では、ツクモの情報発信をきっかけに、初回起動に 20〜30 分程度かかるケースもあると紹介されています。メモリの増設や差し替えのたびに起こりうること、新しい CPU とそれに対応したファームウェア、特定のメモリの組み合わせで起きやすいことにも触れています(PC Watch「DDR5搭載PCが15分待っても起動しない?故障ではなくトレーニングかも」)。
ここ、見落としがちです:5 分待って映らないからと電源を切り、また入れて、また 5 分で切る。これを繰り返すと、トレーニングが最後まで終わらないまま「何度やっても起動しない」状態を自分で作ってしまいます。待つなら一度だけ、時計を見ながら 15 分以上待ってください。
待っている間にできることは、ほぼありません。お茶を淹れる。スマホで天気を見る。マザーボードのランプを見つめて念を送る(効きません)。この「沈黙の 15 分」を耐えられるかどうかで、その日の結末がだいぶ変わります。
もうひとつ知っておきたいのが、トレーニングは一度終われば次からは速い、という点です。一度でも画面が映って BIOS やWindows が立ち上がれば、次の起動からは普段どおりの時間に戻るのが普通です。逆に、30 分待っても何も変わらなければ、それは「待てば済む話」ではなかったと判断して次の段階に進みます。

挿し方と相性を見直す。元のメモリだけに戻すのが分かれ道
しっかり待っても映らないなら、次はメモリそのものを見直します。いちばん多いのは、単純に奥まで挿さっていないパターンです。メモリのスロットは思ったより固く、片側のツメが閉じていても反対側が浮いていることがあります。
注意:メモリやグラボを抜き挿しする前に、必ず電源ユニットのスイッチを切ってコンセントを抜いてください。通電したまま部品を抜き挿しすると、メモリやマザーボードが壊れるおそれがあります。作業の前に金属部分に触れて、体にたまった静電気も逃がしておきます。
次の順番で、ひとつずつ試してください。一度に全部変えると、どれが効いたのか分からなくなります。
- メモリをいったん全部抜き、スロットに対して垂直に、両側のツメがカチッと閉じるまで奥まで挿し直す。
- マザーボードの説明書(ユーザーマニュアル)で、推奨されている挿し位置を確かめる。2 枚なら「どの 2 本のスロットか」が決まっていることが多い。
- 増設したメモリを外し、元のメモリだけに戻して起動するか確かめる。ここで起動すれば、パソコン本体やグラボは生きている。
- 元のメモリで起動したら、今度は増設したメモリだけを 1 枚挿して起動するか確かめる。1 枚ずつなら動くのか、組み合わせると動かないのかを見分ける。
- メモリを入れ替えたあとに起動しない場合は、CMOS クリアで設定を初期状態に戻す。やり方はマザーボードの説明書に従う。CMOS クリアのあとは、もう一度トレーニングの時間がかかる。
手順 3 が、この記事でいちばん大事な分かれ道です。元のメモリだけで起動するなら、グラボ故障の線はほぼ消えます。逆に元のメモリに戻しても VGA ランプが消えないなら、メモリ以外を疑う番です。
メーカーや型番の違うメモリを混ぜると起動しないことがある
元のメモリだけでも、増設したメモリだけでも起動する。なのに両方挿すと起動しない。これが、いわゆる「相性」です。どちらも不良品ではないのに、組み合わせると合わない。人間関係でもよくある話で、メモリにもあります。
メモリは、同じ規格でも速度(データレート)、タイミング、容量、中のチップの作りがメーカーや型番ごとに違います。マザーボードは挿さったメモリ全部を同じ条件で動かそうとするので、条件の違う組み合わせだと、うまくまとまらないことがあります。4 本のスロットを全部埋める構成は、2 本のときより条件が厳しくなりやすいとも言われます。
メモ:マザーボードのメーカーは、動作を確認したメモリの一覧(QVL、メモリーサポートリスト)を公開しています。ASUS の案内でも、うまくいかないときは QVL に載っているメモリへの交換を挙げています。これから買い足すなら、自分のマザーボードの一覧に載っている型番か、同じ型番がそろった 2 枚組を選ぶと失敗しにくくなります。
相性で動かないと分かったときの現実的な選び方は二つです。同じ型番の組で容量を増やし直すか、元のメモリを外して新しい大容量の組に入れ替えるか。「今あるメモリを活かして足す」のがいちばん安く見えて、実はいちばん当たり外れが大きい方法です。
それでもVGAランプが消えないならグラボ側を確かめる
元のメモリに戻しても、1 枚だけにしても、CMOS クリアのあとでしっかり待っても VGA ランプが消えない。ここまで来て、ようやくグラボ側を疑う順番です。メモリの増設で PC ケースを開けたとき、グラボに腕や工具が当たってずれた、ケーブルを引っかけた、ということも起こりえます。
電源を切ってコンセントを抜いた状態で、次の項目を確かめてください。
- グラボが PCIe スロットの奥まで挿さり、スロットのツメが掛かっているか(ASUS の案内でも、取り外して挿し直すことが最初の手順)
- グラボの端子とスロットにホコリが無いか
- グラボの補助電源ケーブル(6 ピン・8 ピンなど)が根元まで挿さっているか
- モニターのケーブルを、マザーボード側ではなくグラボ側の映像端子に挿しているか
- CPU に内蔵グラフィックスがあるなら、グラボを外してマザーボード側の端子で映るか
意外と多いのが、モニターのケーブルの挿し先です。掃除のついでにケーブルを抜いて、戻すときにマザーボード側の端子に挿してしまう。グラボを積んだパソコンでは、マザーボード側の端子からは映らないことが多いので、これだけで「映らない」が起きます。いちばん恥ずかしい原因ほど、いちばん最後に見つかるものです。
ここで少しだけ深掘りすると、VGA ランプの厄介さは「映像が出ない」という結果しか見ていない点にあります。メモリの調整が終わらない、グラボの電源が足りない、ケーブルの挿し先が違う。原因がどれでも、マザーボードから見れば「映像の段階に進めない」で同じ顔をしている。だから、ランプの名前より自分が何を変えたかのほうが、よほど正確な手がかりになる……と語りはじめると長くなるので、このへんでブレーキをかけます。
部品をひととおり挿し直しても変わらないときは、電気が残っていて誤作動していることもあります。コンセントを抜いたまましばらく置く「放電」も試してみてください。

よくある質問
VGAランプが点いているのに、なぜメモリを疑うのですか?
マザーボードのランプは起動の途中経過を順に示しているだけで、壊れた部品を特定するものではないからです。メモリを増設した直後に起動しなくなったのなら、変えたのはメモリだけなので、まずメモリ側から確かめるのが近道です。
DDR5のメモリトレーニングはどのくらい待てばいいですか?
まず 15 分ほどは電源を切らずに待ってください。TSUKUMO のサポート FAQ では、DDR5 の初回起動のトレーニングに 32GB で 10〜15 分程度かかることがあるとされています。容量や構成によってはさらに長くかかる場合もあります。
元のメモリに戻したら起動しました。新しいメモリは不良品ですか?
不良品とは限りません。新しいメモリを 1 枚だけ挿して起動するなら、元のメモリとの相性の可能性が高いです。同じ型番の組でそろえるか、元のメモリと入れ替える形で容量を増やすほうが安定しやすくなります。
まとめ
メモリ増設で起動しないとき、マザーボードの VGA ランプが点いたままでも、グラボが壊れたとは限りません。ランプは起動の途中経過を示しているだけです。DDR5 なら初回起動のトレーニングで 10〜15 分、ときにはそれ以上黙り込むことがあるので、まず一度しっかり待つ。それでもだめなら挿し直し、元のメモリだけに戻して起動するかを確かめ、最後にグラボ側の挿し込みと補助電源、映像ケーブルの挿し先を見ます。
いちばん避けたいのは、「沈黙の 15 分」に耐えきれずに電源を切り、グラボを買い替え、それでも直らない、という流れです。順番を守れば、たいていは途中で答えが出ます。それでも分からないときは、パソコンごとご来店いただくか、出張でご相談ください。










