
「WD My Passport 偽物」で検索してここにたどり着いた方は、たぶん今、机の上に届いたばかりの外付けHDDが置いてあると思います。相場より安かった。箱がなんだか茶色い。説明書が見当たらない。でもパソコンにつなぐと、ちゃんと「2TB」と出る。だから大丈夫……かどうかが、いちばん分からないところです。
この記事では、WD(ウエスタンデジタル)の外付けHDD「My Passport」を例に、届いた外付けHDDが本物かどうかを自分で確かめる順番を書きます。結論から言うと、パソコンに出る容量の表示は、本物の証拠になりません。
先に結論:WD My Passport の偽物かどうかは、「箱・ラベル・付属品を見る」「シリアル番号で WD の保証状況を調べる」「空のうちに容量いっぱいまで書き込んで読み戻す」の 3 段階で確かめます。最後の書き込みテストに通るまで、大事なデータは入れないでください。
シリアル番号は本物から流用されることがあるので、保証確認だけでは足りません。容量の偽装を見抜けるのは、実際に書いて読み戻すテストだけです。
WD My Passport 偽物で何が起きる? 表示は 2TB、中身は別物という仕組み
偽物の外付けHDDと聞くと、「すぐ壊れる安物」を想像するかもしれません。それならまだ優しいほうです。厄介なのは、つないだ瞬間は普通に動いてしまう偽物があることです。
用語:容量偽装とは、実際の記憶容量より大きな容量をパソコンに報告するよう細工された記憶装置のことです。本当は小さな容量しかないのに「2TB」と表示され、本当の容量を超えた分を書き込むと、すでに書いたデータが上書きされたり、読み出せなくなったりします。USBメモリやSDカードで多い手口ですが、外付けHDD・SSDの見た目をしたものでも報告があります。
この偽装の嫌なところは、最初のうちは何も起きないことです。写真を数百枚入れても、ちゃんと開ける。動画を入れても再生できる。そしてある日、本当の容量の境目を越えた瞬間から、古いファイルが静かに壊れ始めます。エラーの表示が出ないこともあります。気づくのは、何か月かたって昔の写真を開こうとしたときです。
私はこれを「最初だけ優等生問題」と呼んでいます。届いた日のテストで普通に使えたことが、かえって油断の材料になる。偽物を見抜くには、この優等生ぶりの「その先」まで確かめる必要があります。
海外でも同じ相談は続いていて、WD のユーザーコミュニティには「通販で買った My Passport が偽物ではないか」という投稿が繰り返し上がっています。中には、Linux につないだら製造元が「Western Digital」ではなく見慣れない名前で表示された、という報告もありました。

WD My Passport 偽物の見分け方。まず箱・ラベル・付属品を見る
いちばん手軽なのは、外から見て分かるところです。決め手にはなりませんが、怪しさの度合いをつかむには十分です。届いたら、捨てる前に箱ごと手元に置いて、次の点を確かめてください。
- 箱が無地の茶色の段ボールや、印刷のにじんだ箱ではないか(新品として売られていた場合)
- 保証や使い方の書類が入っているか
- 本体のラベルにシリアル番号(S/N)がはっきり印字され、箱のシリアル番号と一致しているか
- ラベルに「Recertified」「Refurbished」など、再生品を示す表示が無いか
- パソコンにつないだとき、デバイスマネージャーの「ディスクドライブ」に WD・My Passport の名前で出るか
- 同じ容量の正規品と比べて、値段が極端に安くなかったか
WD のコミュニティに寄せられた 4TB の My Passport の相談では、茶色い箱、書類なし、正規品より大きな箱、そしてラベルに「ベトナムで再認定」という表記がありました。投稿者が WD に問い合わせた結果、それは偽物ではなく新品として売られていた再生品だったそうです。投稿者は購入したオークションサイトで返品し、全額返金を受けています。
ここ、見落としがちです:箱が怪しくても偽物とは限らず、逆に箱が立派でも本物とは限りません。再生品を新品として売るケースもあれば、本物そっくりの箱を作るケースもあります。見た目は「怪しいかどうか」の入り口で、判定は次のシリアル番号と書き込みテストで行ってください。
SSD でも似た話があり、反対に本物なのに「偽物」と表示されてしまう例もあります。表示ひとつで決めつけない、という点では同じです。
シリアル番号で WD の保証状況を確かめる。ただし過信は禁物
次は、本体ラベルのシリアル番号を WD のサポートサイトの保証状況の確認(Warranty Status Check)に入れて調べます。WD のコミュニティでも、偽物かどうかを疑ったら「まずシリアル番号で保証状況を調べる」が最初の手として挙げられています。登録の無い番号なら、その時点でかなり黒に近いと考えてよいでしょう。
もう一つ、保証の条件そのものも知っておくと判断が早くなります。WD の日本語の保証規定には、次のような趣旨が書かれています。
WD の限定保証は、WD の正規代理店または正規販売店から購入した製品に適用される。保証期間は正規販売店が発行したレシートの日付から始まる。ラベルが判読できない・貼り替えられた・シリアル番号が一致しない製品は対象外で、返送された製品が偽造品と判断された場合、WD は法令に基づいてその製品を没収することがある。
出典:Western Digital「保証ポリシー」
ここから読み取れるのは二つです。一つは、販売元のはっきりしない出品で買った場合、本物であっても WD の保証が受けられない可能性があること。もう一つは、偽物を WD に送ると返ってこない場合があることです。中にデータが残っているなら、なおさら送る前に考えてください。
メモ:保証確認で番号が通っても、本物の証明にはなりません。WD のコミュニティでも、偽物を作る側が本物 1 台のシリアル番号を複製して何台にも貼ることができる、と指摘されています。また、表示される保証期限は「最初に正規ルートで売られた日」から数えるため、自分の購入日と合わないこともあります。
データを入れる前にできる書き込みテスト(H2testw)
容量偽装を確実に見抜けるのは、実際に容量いっぱいまでデータを書いて、それを読み戻して中身が合っているか確かめる方法だけです。Windows なら、ドイツの IT 誌 c't の編集部員が作った無料ソフト「H2testw」がよく使われます。空き容量がいっぱいになるまでテスト用のデータを書き込み、すべて読み戻して照合する仕組みです。
H2testw は記憶媒体のエラーを調べるツールで、ランダムなデータを媒体がいっぱいになるまで書き込み、検証する。Windows 用の無料ソフトで、Windows 10・11 でも問題なく動く。Linux・macOS では代わりに F3 などがある。
出典:heise Download「H2testw」
注意:テストは、何も入れていない空の状態で行ってください。偽物だった場合、書き込みの途中で本当の容量を越え、ドライブに入っていたデータが上書きされて読めなくなるおそれがあります。すでにデータを入れてしまった方は、テストより先に次の章を読んでください。
手順は次のとおりです。画面の表示はドイツ語と英語から選べます。
- heise の配布ページから H2testw をダウンロードし、ZIP を展開して h2testw.exe を起動する。
- 言語で English を選び、「Select target」でテストしたい外付けHDDのドライブ文字を選ぶ。
- 「all available space」(空き容量すべて)を選んだまま、「Write + Verify」を押す。
- 終わるまで待つ。HDD は容量が大きく、2TB なら何時間もかかるので、寝る前や外出前に始める。
- エラーなしで終われば容量は本物。読み戻しでエラーや「データが失われた」趣旨の結果が出たら、容量偽装か故障を疑い、そのドライブは使わない。
テストが済んだら、作られたテスト用のファイル(拡張子が .h2w のもの)は削除して構いません。ここまで通れば、少なくとも「容量をごまかした偽物」ではないと言えます。
少し深掘りすると、このテストが面白いのは「中身を信じない」ことを前提にしている点です。箱もラベルもシリアル番号も、作る側が真似できる情報です。でも、書いたものが本当に読み戻せるかだけは、ごまかしようがない。偽物との勝負は、見た目の真贋ではなく物理の真贋で決まる……と書くと格好いいのですが、要は一晩つないで放っておくだけです。

偽物だったら? 返品の進め方と、入れてしまったデータの扱い
偽物、あるいは「新品のはずが再生品だった」と分かったら、まず購入した通販サイトやフリマの返品・返金の窓口に連絡します。先ほどの 4TB の相談でも、解決したのはメーカーではなく購入したサイトでの返品でした。そのときに証拠として役立つものを、先にそろえておきましょう。
- 注文の画面と出品ページのスクリーンショット(「新品」の表記が分かるもの)
- 箱・本体ラベル・シリアル番号の写真
- H2testw の結果の画面のスクリーンショット
- WD の保証状況の確認の結果の画面
- 箱と付属品(捨てずに残しておく)
難しいのは、すでにデータを入れてしまった場合です。容量偽装の偽物では、本当の容量を越えて書き込まれた部分は上書きされて失われていることが多く、読めるのは残っている分だけです。それ以上ファイルを書き込まない、フォーマットしない、テストもしない。これが残っている分を守るための鉄則です。
そのうえで、開けるファイルから順に、別の信頼できる保存先へコピーしてください。「開かない」「フォーマットしますか?と出る」といったときに、良かれと思ってやった操作が状況を悪くすることもあります。
店頭では、SDカードの不具合で見られなくなった運動会や旅行の動画・写真が戻った、というお声を Google のクチコミでいただいています(クチコミは 139 件・平均 4.9、2026-10 時点)。偽物の外付けHDDの場合は上書きされた分は戻せないので、残っている分を守ることが先です。

これから買う方は、家電量販店、メーカー公式ストア、通販なら販売元がはっきりした正規販売店を選んでください。WD の保証規定のとおり、正規の販売店から買い、レシートや注文の記録を残しておくことが、そのまま保証の条件にもなります。
よくある質問
パソコンで「2TB」と表示されていれば本物ですよね?
いいえ、表示だけでは本物とは言えません。容量偽装の偽物は、実際の容量より大きく表示されるよう細工されています。箱とラベル、シリアル番号による保証状況の確認、空のうちに容量いっぱいまで書き込んで読み戻すテストの順で確かめてください。
偽物の外付けHDDに入れてしまった写真は取り戻せますか?
本当の容量を超えて書き込まれた部分は、上書きされて失われていることが多いです。残っている分は取り出せる場合があるので、それ以上書き込まず、フォーマットもテストもせずに使用を止め、開けるファイルから別の保存先へコピーしてください。
本物の WD My Passport を安全に買うにはどこで買えばいいですか?
家電量販店、メーカー公式ストア、通販なら販売元がはっきりした正規販売店で買うのが確実です。WD の保証は正規の代理店・販売店から買った製品が対象で、保証期間はレシートの日付から数えるため、購入の記録も残しておいてください。
まとめ
WD My Passport の偽物かどうかは、箱・ラベル・付属品を見て、シリアル番号で WD の保証状況を調べ、最後に空のうちに容量いっぱいまで書いて読み戻すテストで確かめます。見た目とシリアル番号は真似できても、書いたデータが読み戻せるかだけはごまかせません。
「最初だけ優等生問題」に引っかからないために、新品の外付けHDDは最初の一晩をテストに使ってください。それに通ってから、大事な写真や書類を預ければ十分です。すでにデータを入れてしまって不安な方は、手を止めたうえで、気軽に相談してください。










