
― 修理できるかと、修理すべきかは別の話
ゴールデンウィーク明けは毎年バタバタします。今年もご多分に漏れず、朝から予約が詰まった状態でスタートしました。そんな中で、ちょっと印象に残るお客様がいらっしゃいました。今回はそのお話です。
パソコン修理屋にとって、連休明けというのはなかなか大変な時間帯です。
お休みの間に溜まっていたお問い合わせが一気に入り、着信履歴が何十件もある状態になっていたり、オンライン予約がすでに週末まで埋まっていたりします。加えて、連休前から止まっていた仕事や、部品待ちだった案件も動き出すので、初動はどうしてもバタバタしてしまいます。
そんな朝に、少し印象に残るお客様がいらっしゃいました。
当店のオンライン予約は、基本的に朝10時から受付できるようになっています。その日も、10時にご予約をいただいていたお客様がいました。
予約メモを確認すると、どうやら車で旅をされている途中の方のようで、苫小牧に立ち寄ったタイミングで「どうしてもパソコンを見てほしい」とのことでした。
ところが、その方から電話があったのは朝8時半ごろ。予約時間まであと1時間半あります。
「10時に予約してる者なんだけど、もう着いちゃったんだけど、今すぐ見てもらえない?」
思わず「ちょっと早くないですか?」と返してしまいました。お互いに少し笑ってしまったのですが、お客様は本当に急いでいる様子でした。
ちょうどその時こちらは出張サポートで不在だったため、「少しだけお待ちください」とお伝えし、急いで戻ることになりました。
9時半ごろには店舗に到着できたのですが、お客様はどこか落ち着かない様子でした。何か不安があるのかなと思っていたところ、開口一番に言われたのが——
「すみません、トイレ貸してもらえますか?」
つまり、パソコンの修理も急いでいたのですが、それ以上にトイレもかなり急いでいたようです。心の中で「どっちが本命なんだい」とツッコみながらも、もちろんお貸ししました。
その後のお客様は、驚くほど落ち着いていました。人間、まずは目の前の問題を解決することが大事なんだなと、妙に納得した瞬間でもありました。
改めてパソコンを確認しました。症状はヒンジ部分の破損と、フリーズしてしまうというふたつでした。
ノートパソコンのヒンジとは、画面(ディスプレイ)と本体をつなぐ蝶番(ちょうつがい)のような部品のことです。パソコンを開いたり閉じたりする動作を支えている部分で、長年使っていると負荷がかかって壊れることがあります。
- プラスチックの土台部分にひびが入る・割れる
- ヒンジ周辺の外装がパカパカと浮いてしまう
- 画面を開くとギシギシ音がする・固くなる
- 金属フレームそのものが折れてしまう(今回のケース)
今回は最後のケースで、外装補修や固定で対応できる段階をすでに超えていました。
フリーズの症状についても、軽いメンテナンスで改善できるとは言い切れない状態で、部品交換や本格的な診断が必要になりそうでした。
お客様に正直にお伝えしました。
「この状態ですと、無理に修理をするのはおすすめできません」
すると、関西方面の方だったのか、
「なんとかしてほしいんや」
「頼むわ、なんとかならんか」
というお話になりました。こちらとしても、目の前で困っている方を見ると、できる限りのことはしたくなります。
ただ、長年この仕事をしていると分かることがあります。無理に修理をして、良い結果になることは少ないのです。
- 一時的に動いても、あとから別の部分が壊れる
- 応急処置のつもりが、余計な不安を残す結果になる
- 修理後に「やっぱり直っていない」となった時、お互いに良い結末にならない
「無理は承知」「文句は言わない」とおっしゃるお客様に、できる範囲の応急処置と費用をお伝えしました。
するとお客様の反応はとても早かったです。
「なんや、そんなにかかるんかいな」
「それなら中古買ったほうが安いわな」
こちらとしても、その判断は間違っていないと思いました。修理費、部品代、今後の再故障リスクを考えた時に、中古パソコンや買い替えの方が現実的なこともあるのです。特に旅の途中で使うパソコンであれば、安定性がなによりも大事です。
「修理できるかどうか」と「修理すべきかどうか」は、まったく別の話です。状態によっては、修理よりも買い替えをおすすめする場合があります。それは手を抜いているからではなく、あとからお客様が困らないようにするためです。
そのままお客様は帰られたのですが、30分ほどしてまた戻ってこられました。何かと思ったら——
「スマホ忘れてしもうて」
先ほどお貸ししたトイレにスマホを忘れていたようです。朝早く到着し、トイレを借り、修理の相談をして、買い替えを考え、スマホを忘れて戻ってくる——なかなか濃い方でした。
最後に少し笑いながら、こう言って帰られました。
「中古のパソコン、どこ探してもなかなかないんだよな」
「まあ、あんたとは何らかの関係があるのかもな。これも縁かもな」
こちらとしては「何が縁なんだろう」と思いながらも、最後は手を振ってお見送りしました。
今回の出来事で改めて感じたのは、修理というのはただ直せばいいものではないということです。
もちろん、できる限りのことはします。応急処置で助かる場合もあれば、部品交換で十分に使えるようになる場合もあります。でも、すべての修理がお客様にとってベストとは限りません。
- できることとできないことを、はっきり区別してお伝えします
- おすすめできることとおすすめできないことを、費用含めて正直に話します
- 修理するかどうかを決めるのは最終的にお客様。当店はその判断材料を正確にお伝えする役割だと思っています
旅の途中で立ち寄られたあのお客様が、この先どこかで良いパソコンに出会えていることを願っています。
パソコンの調子が気になっている方、まず状態を見てもらいたいという方は、お気軽にご連絡ください。修理するかどうかは、話を聞いてから一緒に考えましょう。まずはご相談から、大丈夫ですよ。














