
データ復旧ソフトを自作しています。Claude Codeを使って、Windows用に。開発を始めて現在3日目、まだ終わっていません。むしろ終わる気配がありません。最初は「HDDやSSDが本当に正常なのか、SMARTだけでなく実際に読み書きして確認できるソフトが欲しい」くらいの軽い話だったんです。
それが「USBメモリも」「SDカードも」「ファイルシステムが壊れていても」「削除ファイルも」とやっていたら、Claude Codeに渡した仕様が160項目を超えました。そりゃ終わらない。
対象はHDD、SATA SSD、NVMe SSD、外付けHDD、外付けSSD、USBメモリ、SDカード、microSD。要するに店頭に持ち込まれるものはだいたい全部です。
目的は「ファイルを復元する」だけではありません。その記憶装置がどう壊れているのかまで調べたい。単純なファイル復元ソフトとの違いはここです。
このソフトを作ろうと思った理由のひとつが、店頭で実際に遭遇するSSDです。SMARTを見ると正常。Windowsからも普通に認識する。読み込みもできる。ところが書き込みができない。
普通のSMART確認ソフトだけで判断すると「正常です」と表示されて終わる可能性があります。でも実際には使えません。お客様には使えないSSDを「正常でした」と返すことになります。これが一番困る。
店長より
そこで今回のソフトでは、SMARTに加えて、実際に読み取れるか、実際に書き込めるか、書き込んだ内容を読み直して一致するか、特定のセクターだけ異常でないか、読み込みが極端に遅い場所はないか、タイムアウトしていないか、デバイスが途中で切断されていないか、NVMe内部のエラーログに異常がないか、温度上昇とエラーに関連がないか、を確認します。
さらに欲張って、HDDなら磁気媒体側・ヘッド系・コントローラー基板・USB変換・接続経路のどこが怪しいか、SSDならNAND側・コントローラー側・Firmware側・保護動作によるRead Only化・USB変換側のどこが怪しいかまで、取得できた情報から推定させます。
もちろんWindows上のソフトだけで「3番目のNANDチップが故障しています」なんて断定はできません。そこは無理に嘘をつかせず、複数の証拠から可能性を推定する設計にしています。
HDDについては、ディスク全体を実際に読み取って、各領域の応答速度まで記録します。通常なら数ミリ秒で読める場所なのに、そこだけ数百ミリ秒。周辺だけ速度が極端に低下。その後タイムアウト。となれば、かなり怪しい。そうした場所をマップ化して、どこに問題が集中しているかを見えるようにします。
ここまで書いて、良い機能だなと自分でも思ったんですが、実はこれ、そのままやると危険です。
なので、診断は次の順序で止められるように仕様へ入れました。この部分は今回いちばん強く指定した箇所です。
壊れたHDDを普通にコピーすると、途中の不良セクターで止まります。そこでRecovery機能は多段方式にしました。1回目は大きなブロックで読めるところを高速回収し、問題のある場所は飛ばす。2回目に飛ばした場所を小さい単位で再読込。3回目は逆方向から。4回目はさらに細かく。5回目に必要なら限定的な再試行。
1か所の不良領域に何時間も粘るより、まず読める99%を確保する。この考え方です。SDカードやUSBメモリでも同じで、元の媒体には極力触らず、最初にRAWイメージを作って、以降はイメージファイル側を解析します。
イメージができたら、MBR、GPT、NTFS、FAT12、FAT16、FAT32、exFATを自前で解析します。元のファイルシステム情報がある程度残っていれば、フォルダー構造を再現した状態での復旧を目指します。SDカードを挿して「フォーマットする必要があります」と出ても、物理的にはほぼ全領域が読めることがあり、その場合は媒体ではなくファイルシステムが壊れている可能性が高い、という判断ができます。
さらにFile Carvingも入れました。ここまで来ると、もう「ちょっとした診断ソフト」ではありません。
大分類だけでも、ストレージ認識、HDD診断、SATA SSD診断、NVMe診断、USBメモリ診断、SDカード診断、セクタースキャン、Slow Sector検出、SMART、NVMe Error Log、Recovery Imaging、Multi-pass Recovery、NTFS、FAT、exFAT、削除ファイル復旧、Lost Partition、File Carving、故障原因判定、復旧可能性判定、レポート作成。
気になったので調べました。今回作ろうとしているものは、ストレージ診断・障害推定・イメージング・論理復旧をまとめようとしているため、市販品では複数カテゴリーにまたがります。完全に同じ機能の製品はありませんが、近い価格帯を並べると相場が見えてきます。
| ソフト | ライセンス | 価格(円換算) |
|---|---|---|
| DMDE Standard | 永久・自分と自社の範囲 | 48ドル(約7,600円) |
| R-Studio | 永久・単体版 | 79.99ドル(約1万2,700円) |
| R-Studio T80+ | 期間制・最短80日・商用可 | 80ドルから(約1万2,700円から) |
| DMDE Professional | 永久・商用復旧可・1 OS系統 | 95ドル(約1万5,000円) |
| Recovery Explorer Professional | 永久・個人向け | 209.95ドル(約3万3,000円) |
| Recovery Explorer Professional | 永久・商用向け | 539.95ドル(約8万5,500円) |
| UFS Explorer Professional Recovery | 永久・更新期間つき・全OS | 699.95ドルから(約11万円から) |
| R-Studio Technician | 永久・技術者向け | 899ドル(約14万2,400円) |
| Runtime Ultimate Bundle Technician | 永久・技術者向けバンドル | 999ドル(約15万8,200円) |
円換算は2026年8月20日の1ドル158円台で計算した目安です。為替と税で前後しますし、各社とも上位版・複数OS版・ボリューム割引があります。ざっくり言えば、個人が自分の媒体を扱う範囲なら1万円前後から3万円台、他人の媒体を商用で扱う技術者向けになると10万円から16万円というのが今の相場です。
ここが調べていていちばん勉強になった部分です。データ復旧ソフトの価格を比べるとき、金額だけを見ても意味がありません。同じ製品名でも、誰の媒体を触ってよいかで別ライセンスになります。
たとえばRecovery Explorer Professionalには個人向け・商用向け・法人向けの3区分があり、当店のような修理店が使うなら商用向けになります。UFS Explorer Professional Recoveryも同様に技術者・調査者向けの製品です。DMDEはProfessionalエディションで顧客データの商用復旧が許可されています。
店長より
ただし「商用でやるなら必ず10万円以上」というわけでもありません。調べていて見つけたのが、R-StudioのT80+という期間制ライセンスです。
今回はサブエージェントをかなり使わせています。親のClaudeが全体を見ながら、こっちはRaw I/O、こっちはNTFS、こっちはテスト、こっちはエラー処理、こっちはRecovery Engine、という具合に仕事を振っていく。場合によっては一気に5体くらいが同時に動きます。AIがプログラミングするというより、AIの開発チームをAIが管理している感じです。眺めているだけで面白い。
面白いんですが、Max 20xプランがものすごい勢いで溶けます。親が動いて、その下で5体が動いて、それぞれがコードを読み、調査して、書いて、テストして、エラーを調べて、また修正する。この数日、Claudeを普通の用途にほとんど使えていません。
店長より
今回いちばん感じたのはここです。AIのおかげで開発速度は劇的に速くなりました。でもソフトウェア開発の工程そのものが消滅したわけではありません。やることが100個あるならAIも100個やる必要があるし、160項目なら160項目あります。設計、実装、テスト、修正、安全確認、再テスト、機能同士の整合性確認。データ復旧ソフトの場合はさらに、バグったら元データを壊す可能性まであるので、画面が出たから完成、では済みません。
そう考えると、R-Studio Technicianが899ドル、UFS Explorer Professional Recoveryが699.95ドルからという値付けの理由も少し分かります。何年も開発して、大量のファイルシステムに対応して、変な壊れ方をした媒体に対応して、エラー処理を作って、ユーザーのデータを壊さないようにして、さらに新しい規格へ対応し続ける。むしろソフトウェアの値段としては安いのでは、と思えてきました。
完成後は、正常なHDD、不良セクターのあるHDD、SMART正常なのに不調なSSD、NVMe SSD、USBメモリ、RAWになったSDカード、削除済みデータのあるSDカードを用意して実機で試すつもりです。どこまで実用になるのか、市販ソフトと比べてどこが弱いのか、逆に修理屋目線だからこそ便利な部分があるのか。そのあたりも改めて記事にします。















