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データ復旧ソフト自作 Claude Codeでも3日で終わらない

データ復旧ソフト自作 Claude Codeでも3日で終わらない

データ復旧ソフトを自作しています。Claude Codeを使って、Windows用に。開発を始めて現在3日目、まだ終わっていません。むしろ終わる気配がありません。最初は「HDDやSSDが本当に正常なのか、SMARTだけでなく実際に読み書きして確認できるソフトが欲しい」くらいの軽い話だったんです。

それが「USBメモリも」「SDカードも」「ファイルシステムが壊れていても」「削除ファイルも」とやっていたら、Claude Codeに渡した仕様が160項目を超えました。そりゃ終わらない。

先に結論
市販のデータ復旧ソフトが約1万円から約16万円するのは、機能の数が多いからではなく、壊れたストレージを壊さずに扱うための工程が多いからです。
Claude Codeとサブエージェントを同時に5体動かしても、160項目の仕様は3日では終わりません。AIで速くなったのは各工程の処理であって、工程そのものは1つも減っていないからです。
そもそもどんなデータ復旧ソフトを作っているのか

対象はHDD、SATA SSD、NVMe SSD、外付けHDD、外付けSSD、USBメモリ、SDカード、microSD。要するに店頭に持ち込まれるものはだいたい全部です。

目的は「ファイルを復元する」だけではありません。その記憶装置がどう壊れているのかまで調べたい。単純なファイル復元ソフトとの違いはここです。

SMARTが正常でも、そのSSDは壊れている

このソフトを作ろうと思った理由のひとつが、店頭で実際に遭遇するSSDです。SMARTを見ると正常。Windowsからも普通に認識する。読み込みもできる。ところが書き込みができない。

普通のSMART確認ソフトだけで判断すると「正常です」と表示されて終わる可能性があります。でも実際には使えません。お客様には使えないSSDを「正常でした」と返すことになります。これが一番困る。

ピシコ店長 店長より
「SMARTは正常です」で終わらせず、実際に書いて、読み直して、一致するか確かめる。欲しかったのはそこなんです。

そこで今回のソフトでは、SMARTに加えて、実際に読み取れるか、実際に書き込めるか、書き込んだ内容を読み直して一致するか、特定のセクターだけ異常でないか、読み込みが極端に遅い場所はないか、タイムアウトしていないか、デバイスが途中で切断されていないか、NVMe内部のエラーログに異常がないか、温度上昇とエラーに関連がないか、を確認します。

さらに欲張って、HDDなら磁気媒体側・ヘッド系・コントローラー基板・USB変換・接続経路のどこが怪しいか、SSDならNAND側・コントローラー側・Firmware側・保護動作によるRead Only化・USB変換側のどこが怪しいかまで、取得できた情報から推定させます。

もちろんWindows上のソフトだけで「3番目のNANDチップが故障しています」なんて断定はできません。そこは無理に嘘をつかせず、複数の証拠から可能性を推定する設計にしています。

壊れかけのHDDを全部検査してはいけない理由

HDDについては、ディスク全体を実際に読み取って、各領域の応答速度まで記録します。通常なら数ミリ秒で読める場所なのに、そこだけ数百ミリ秒。周辺だけ速度が極端に低下。その後タイムアウト。となれば、かなり怪しい。そうした場所をマップ化して、どこに問題が集中しているかを見えるようにします。

ここまで書いて、良い機能だなと自分でも思ったんですが、実はこれ、そのままやると危険です。

検査そのものがトドメになります
壊れかけのHDDに対して「まず完全検査してから復旧しましょう」とやると、その検査中に致命傷を与えることがあります。ヘッドやモーターが弱っている個体では、全域を読みに行く行為そのものが負荷です。通電できる回数が残り少ない媒体では、診断より先にデータを逃がすのが正解になります。

なので、診断は次の順序で止められるように仕様へ入れました。この部分は今回いちばん強く指定した箇所です。

1
認識と最低限の情報取得
型番、容量、接続経路、SMART、NVMeのエラーログなど、負荷の小さい情報だけを先に取ります。
2
少量のReadで応答を見る
全域ではなく、限られた範囲だけを読み、応答速度とエラーの出方を観測します。
3
危険度を判定する
タイムアウトの増加、エラー範囲の拡大、途中切断の有無から、これ以上触ってよい媒体かを判断します。
4
危険なら診断を中止してイメージングへ
状態が悪ければ残りの検査は捨てて、読める領域の回収を最優先に切り替えます。
読めるところから先に回収する

壊れたHDDを普通にコピーすると、途中の不良セクターで止まります。そこでRecovery機能は多段方式にしました。1回目は大きなブロックで読めるところを高速回収し、問題のある場所は飛ばす。2回目に飛ばした場所を小さい単位で再読込。3回目は逆方向から。4回目はさらに細かく。5回目に必要なら限定的な再試行。

1か所の不良領域に何時間も粘るより、まず読める99%を確保する。この考え方です。SDカードやUSBメモリでも同じで、元の媒体には極力触らず、最初にRAWイメージを作って、以降はイメージファイル側を解析します。

気が付けば仕様が160項目を超えていた

イメージができたら、MBR、GPT、NTFS、FAT12、FAT16、FAT32、exFATを自前で解析します。元のファイルシステム情報がある程度残っていれば、フォルダー構造を再現した状態での復旧を目指します。SDカードを挿して「フォーマットする必要があります」と出ても、物理的にはほぼ全領域が読めることがあり、その場合は媒体ではなくファイルシステムが壊れている可能性が高い、という判断ができます。

さらにFile Carvingも入れました。ここまで来ると、もう「ちょっとした診断ソフト」ではありません。

用語:File Carvingとは
File Carvingとは、ファイルシステムの管理情報を使わず、ディスクの生データからファイル形式ごとの特徴的な並びを探して復元する手法である。ファイル名もフォルダー名も分からない状態でも復旧できる代わりに、名前と階層は失われる。今回の対象はJPEG、PNG、HEIC、MP4、MOV、PDF、ZIP、DOCX、XLSX、PPTX、PSD、RAW画像、MP3、WAV。なお「先頭が一致した」だけで拾うと誤検出が大量に出るため、内部構造まで確認してから採用する設計にしている。

大分類だけでも、ストレージ認識、HDD診断、SATA SSD診断、NVMe診断、USBメモリ診断、SDカード診断、セクタースキャン、Slow Sector検出、SMART、NVMe Error Log、Recovery Imaging、Multi-pass Recovery、NTFS、FAT、exFAT、削除ファイル復旧、Lost Partition、File Carving、故障原因判定、復旧可能性判定、レポート作成。

仕様項目数
160項目超
同時稼働エージェント
最大5
経過日数
3日目・未完
※2026年8月20日時点の当店の開発状況
市販のデータ復旧ソフトはいくらするのか

気になったので調べました。今回作ろうとしているものは、ストレージ診断・障害推定・イメージング・論理復旧をまとめようとしているため、市販品では複数カテゴリーにまたがります。完全に同じ機能の製品はありませんが、近い価格帯を並べると相場が見えてきます。

ソフト ライセンス 価格(円換算)
DMDE Standard 永久・自分と自社の範囲 48ドル(約7,600円)
R-Studio 永久・単体版 79.99ドル(約1万2,700円)
R-Studio T80+ 期間制・最短80日・商用可 80ドルから(約1万2,700円から)
DMDE Professional 永久・商用復旧可・1 OS系統 95ドル(約1万5,000円)
Recovery Explorer Professional 永久・個人向け 209.95ドル(約3万3,000円)
Recovery Explorer Professional 永久・商用向け 539.95ドル(約8万5,500円)
UFS Explorer Professional Recovery 永久・更新期間つき・全OS 699.95ドルから(約11万円から)
R-Studio Technician 永久・技術者向け 899ドル(約14万2,400円)
Runtime Ultimate Bundle Technician 永久・技術者向けバンドル 999ドル(約15万8,200円)

円換算は2026年8月20日の1ドル158円台で計算した目安です。為替と税で前後しますし、各社とも上位版・複数OS版・ボリューム割引があります。ざっくり言えば、個人が自分の媒体を扱う範囲なら1万円前後から3万円台、他人の媒体を商用で扱う技術者向けになると10万円から16万円というのが今の相場です。

一次情報
上記の価格はいずれも各開発元の公式サイトを2026年8月20日に確認したものです。レビューサイトや販売代理店の表記にはユーロ建ての旧価格が残っている場合があり、公式の現行価格と一致しないことがあります。
お客様の媒体を扱うと、価格表の数字が変わる

ここが調べていていちばん勉強になった部分です。データ復旧ソフトの価格を比べるとき、金額だけを見ても意味がありません。同じ製品名でも、誰の媒体を触ってよいかで別ライセンスになります。

用語:Technicianライセンスとは
Technicianライセンスとは、自分や自社が所有していないコンピューター・記憶媒体に対して、商用でデータ復旧を行う権利を含むライセンス区分である。修理店や復旧業者のように「他人の媒体を預かって有償で作業する」用途はこれに該当する。個人向けライセンスとの差は機能だけでなく、使用が許される対象そのものにある。

たとえばRecovery Explorer Professionalには個人向け・商用向け・法人向けの3区分があり、当店のような修理店が使うなら商用向けになります。UFS Explorer Professional Recoveryも同様に技術者・調査者向けの製品です。DMDEはProfessionalエディションで顧客データの商用復旧が許可されています。

安いライセンスで他人の媒体を触ると規約違反になります
価格比較記事の多くは個人向けライセンスの金額だけを並べます。ですが個人向けは「自分の媒体」用です。修理店・情報システム部門・受託業者が預かった媒体に使うと、機能的には動いてもライセンス違反になります。導入前に必ず、対象媒体の所有者と商用可否の条項を確認してください。
ピシコ店長 店長より
「安く済ませた」つもりが規約違反、はいちばん避けたいところです。ここは金額より条項を先に読んでください。

ただし「商用でやるなら必ず10万円以上」というわけでもありません。調べていて見つけたのが、R-StudioのT80+という期間制ライセンスです。

一次情報
R-Studio T80+は、Technician版と同じ機能を最短80日単位で購入できるライセンスです。開発元の比較表では機能制限なしと明記され、商用利用と第三者媒体の取り扱いが認められています。有効期間は実際に使った日数ではなく、初回アクティベートからの連続した暦日で計算されます。データ復旧を毎日はやらない小規模店にとっては、この計算方法が損得の分かれ目になります。
Claude Codeでも3日で終わらないのはなぜか

今回はサブエージェントをかなり使わせています。親のClaudeが全体を見ながら、こっちはRaw I/O、こっちはNTFS、こっちはテスト、こっちはエラー処理、こっちはRecovery Engine、という具合に仕事を振っていく。場合によっては一気に5体くらいが同時に動きます。AIがプログラミングするというより、AIの開発チームをAIが管理している感じです。眺めているだけで面白い。

面白いんですが、Max 20xプランがものすごい勢いで溶けます。親が動いて、その下で5体が動いて、それぞれがコードを読み、調査して、書いて、テストして、エラーを調べて、また修正する。この数日、Claudeを普通の用途にほとんど使えていません。

ピシコ店長 店長より
「あ、また上限が」と言いながらこの記事を書いています。Max 20x、もうちょっと耐えてください。
AIになっても工程は消えない

今回いちばん感じたのはここです。AIのおかげで開発速度は劇的に速くなりました。でもソフトウェア開発の工程そのものが消滅したわけではありません。やることが100個あるならAIも100個やる必要があるし、160項目なら160項目あります。設計、実装、テスト、修正、安全確認、再テスト、機能同士の整合性確認。データ復旧ソフトの場合はさらに、バグったら元データを壊す可能性まであるので、画面が出たから完成、では済みません。

そう考えると、R-Studio Technicianが899ドル、UFS Explorer Professional Recoveryが699.95ドルからという値付けの理由も少し分かります。何年も開発して、大量のファイルシステムに対応して、変な壊れ方をした媒体に対応して、エラー処理を作って、ユーザーのデータを壊さないようにして、さらに新しい規格へ対応し続ける。むしろソフトウェアの値段としては安いのでは、と思えてきました。

完成後は、正常なHDD、不良セクターのあるHDD、SMART正常なのに不調なSSD、NVMe SSD、USBメモリ、RAWになったSDカード、削除済みデータのあるSDカードを用意して実機で試すつもりです。どこまで実用になるのか、市販ソフトと比べてどこが弱いのか、逆に修理屋目線だからこそ便利な部分があるのか。そのあたりも改めて記事にします。

3日目のまとめ
データ復旧ソフトの自作は、個人でも着手できる時代になりました。ただし着手できることと、お客様の媒体に使えることの間には、まだかなりの距離があります。
その距離の正体が、市販ソフトの価格に乗っている工程の量でした。少なくとも今の当店では、実際の復旧作業に自作ソフトを使う予定はありません。まずは自分の検証環境で、どこまで通用するかを確かめるところからです。
Q
データ復旧ソフトは自作できますか?
A
作ること自体は個人でも可能になりました。ただし実際に大切なデータへ使えるレベルにするには、ファイルシステムの解析、不良媒体の安全な扱い、エラー処理、そして元データを壊さないための検証が必要で、機能を書き終えた時点ではまだ完成ではありません。当店でも現在3日目で未完成です。
Q
市販のデータ復旧ソフトはいくらぐらいしますか?
A
個人が自分の媒体に使う範囲なら48ドルから210ドル程度、他人の媒体を商用で扱う技術者向けなら899ドルから999ドルが目安です。2026年8月20日時点の各公式サイトの価格で、1ドル158円台の換算では約7,600円から約15万8,000円になります。
Q
SMARTが正常なら、そのSSDは安心ですか?
A
安心とは限りません。店頭では、SMARTが正常で認識も読み込みもできるのに書き込みだけができないSSDに実際に遭遇します。読み書きの実測や保護動作の有無まで確認しないと、使えない媒体を正常と判定してしまうことがあります。
ピシコ店長
この記事を書いた人
ピシコ店長
北海道苫小牧市のパソコン・スマホ修理店「ピシコ」店長。PC・スマホ修理歴16年。店頭での実際の修理事例をもとに、地域の方に役立つ情報を発信しています。プロフィール詳細
そのHDD、まだ通電していいか分からないときは。
異音がする、認識しなくなった、フォーマットを要求される。この状態で何度も試すほど状況は悪くなります。苫小牧近郊の方は、触る前に一度ご相談ください。
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