
ただ、修理屋という仕事の現実を、できるだけ正直に書き残しておこうと思いました。
最後まで読んでもらえると、きっと「なるほど」となる構成になっています。
今回は少し長い話をします。
一件のトラブル対応が、年末から年をまたいで、いくつかの誤解と予想外の展開を経て、最終的に「犯人はウイルスでした」というオチにたどり着くまでの話です。
教訓もあります。笑えるところもあります。
修理屋の日常として、ゆっくり読んでいただければ。
第一章|始まりは「ExcelとWordが使えない」
年末の少し前、一件の連絡が入りました。
「ExcelとWordが使えなくなった」
よくある相談です。Officeのトラブルは原因がいくつかあって——ライセンスの期限切れ、アップデートの失敗、Microsoft アカウントの認証ズレ——だいたいそのあたりを確認すれば解決します。
ただその時期はちょうど年末の繁忙期。すぐに動ける状況ではなかったため、「年明けに改めて」という段取りになりました。
年明け、再度連絡があり、後日パソコンを持ち込んでいただくことになりました。
OfficeのインストールとMicrosoftアカウントの設定。それだけのつもりで待っていました。
第二章|来店。そしてまったく違う案件が始まる
来店されたのは、社員の方でした。
パソコンを受け取って状態を確認してみると——予想とだいぶ違う状況になっていました。
「パソコンを初期化してしまいまして」
……ん?
詳しい経緯は最後まで不明でしたが、確認した限りではOSそのものが削除されているか、それに近い状態になっていました。Officeのインストール作業のはずが、OS再インストールから始まる案件に変わっていた、ということです。
心の中でそう思いながら——まあ、困っているんだから、と。
OS再インストールと初期設定は、今回は無償で対応することにしました。
Microsoft Officeのライセンス費用だけ実費でいただいて、簡易的な初期設定を行い、お返しした次第です。
ここまでは、まあよかった。
第三章|「Wi-Fiがつながらない」——と、始まる責任の遡及
しばらく経って、再び連絡がありました。
「Wi-Fiが使えなくなった」
Wi-Fiのトラブルは珍しくないです。ただ今回は、一度OSが削除されて再インストールされた環境で起きている問題です。納品時の状態そのままで起きているわけでは、ない、というのは大事な前提でした。
② 社員の方が、何らかの理由でOSを削除・初期化した
③ 当店で無償でOS再インストール・初期設定を行った
④ その後、Wi-Fiトラブルが発生した
④の原因が①にある、とは言い切れない状況です。②③を経た環境で起きている問題として見るのが、事実として自然なはずでした。
そしてこのタイミングで、先方からこんな言葉が届きました。
「お前がさじ加減で金額を決めているんじゃないか」
最初の発言は、まあわかります。中古への後悔、新品への羨望、それは自然な感情です。
ただ「さじ加減で金額を決めている」は——さすがに、そこまでは、と思いました。
当店の料金は作業内容と時間に応じて算出しています。今回、OS再インストールを無償で対応していることも含めてのご発言だとすると、正直、言葉が見つかりませんでした。
おそらく、社員の方から社長様へ経緯が正確に伝わっていないか、あるいは伝わったうえでこういう話になっているか。どちらにしても、この時点では「もう難しいかな」と感じていました。
第四章|アポなし来店。ヤマダ電機、登場
そして、予想していなかった展開が訪れます。
ある日、お客様がアポなしで来店されました。
話を聞くと——Wi-Fi子機を求めてヤマダ電機に行ったところ、ソフトバンクエアを紹介されたとのこと。それが気に入らなかった。
「ピシコにアドバイスをもらったとおりに話したら、そう言われた」と、かなりご立腹の様子でした。
整理するとこうです。
↓
ヤマダ電機のスタッフが「ソフトバンクエア」を提案する
↓
お客様が「ピシコにこう言われた」と説明する
↓
ヤマダ電機のスタッフが、その内容に沿って対応する
↓
お客様が「思ってたのと違う」と感じ、ピシコへ不満を持って来店
ヤマダ電機さんが悪いわけでも、うちが悪いわけでも、おそらくないんです。
ただ、情報が伝言ゲームを経ることで、誰かが「悪者」になっていく。
今回、その「悪者」のポジションがピシコに回ってきた形でした。
まあ、正直かなり困惑しました。
でも来店されている以上、できることをやるしかない。
USB Wi-Fi子機を一つ、無償でプレゼントすることにしました。
第五章|そしてパソコンを開けたら、犯人がいた
USB子機を取り付けて、接続確認をしようとした時のことです。
パソコンの状態を改めて確認していたら——ウイルスが検出されました。
Wi-Fiがつながらなかった原因は、中古パソコンの品質でも、OS再インストール後の設定でもなく——ウイルスによるものだった可能性が高い、ということです。
ウイルス駆除と、USB子機の取り付けを、無償で対応しました。
これにて、この案件はクローズとなりました。
「ヤマダ電機で買えばよかった」
「さじ加減で金額を決めている」
「なんでこんなことになるんだ」
この件で向けられた言葉は、結局のところ、ウイルスに向けるべきものだったのかもしれません。
ウイルスは何も言い返してこないので、一番近くにいた専門家のところへ来てしまった、ということだと理解しています。
この話から、お客様に知っておいてほしいこと
「よくわからないけど触ってしまった」は、早めに教えてほしい
パソコンのことがわからないのは全然問題ないです。「なんかいじったらおかしくなった」もよくある話です。ただ、その情報が修理屋に届かないと、原因の見当違いが起きます。今回のように。「実は自分でいじってしまいました」を早めに教えてもらえると、その後がずっとスムーズになります。
Wi-Fiがつながらない=ウイルスの可能性もある
Wi-Fiがつながらない原因はいくつかありますが、ウイルスが原因のケースは見落とされやすいです。ドライバーを入れ直しても、設定を変えても改善しない場合、ウイルスチェックを先に行うことをおすすめします。
ヤマダ電機は悪くない。うちも悪くない。ウイルスが悪い
今回の件、登場人物の誰かが意図的に悪いことをしたわけではありません。情報が断片的に伝わりながら積み重なっていく中で、不満が修理屋へ向かってしまった、という構造でした。「誰かが悪い」より「何が起きているか」を一緒に探す方が、絶対に早く解決します。
担当者と決裁者が違う場合、情報共有をていねいに
持ち込む社員の方と、判断する社長の方が別人の場合——修理屋が話した内容が正確に伝わらないことがあります。ピシコでは作業内容・費用をメールや書面で共有することもできます。「うちはその方が安心」という法人のお客様はお気軽にどうぞ。
それでも、こういうお客様を大事にしたい
長い話でした。
でも最終的に、お客様はちゃんとパソコンを使える状態になって帰りました。
Wi-Fiもつながった。ウイルスもいなくなった。
それでいいんです。それが、修理屋の仕事なので。
余裕がない時、人は正確に状況を伝えられなくなります。
困っている時、怒りが一番近くにいる専門家へ向かうことがあります。
それは——わかるんです。
だから、困っているをそのまま持ってきてほしいと思っています。
「自分でいじってよくわからなくなった」でも、「何をしたか覚えていない」でも、全然かまわない。
それを一緒に解きほぐすのが、修理屋の仕事です。
今回の件で、一つだけ確かなことがあります。
犯人はウイルスでした。うちじゃなかった。
それだけは、記録として残しておきたかった。
info 「触ったらおかしくなった」は早めに教えてください。一緒に原因を探します
manage_search Wi-Fiがつながらない場合、まずウイルスチェックをおすすめします
payments 「まず相談だけ」「持ち込む前に聞きたい」は無料です
checklist 法人のお客様:作業内容・費用は書面・メールで共有します
「ExcelとWordが使えない」との連絡。年明け対応の約束。
社員の方が来店。しかしパソコンはOS削除済み状態。
OS再インストール・初期設定を無償で対応。Officeライセンス費用のみ実費。
「Wi-Fiがつながらない」との連絡。「ヤマダ電機で買えばよかった」「さじ加減で金額を決めている」との発言。
ヤマダ電機でソフトバンクエアを紹介されたことに立腹し来店。
USB Wi-Fi子機を無償でプレゼント。
ウイルスを検出。Wi-Fi機能が無効化されていた。
ウイルス駆除・USB子機取り付けを無償で対応。クローズ。
でも「伝わっていない経緯」は、なかなか直せない。
だから最初から、ちゃんと話してほしいんです。
困ったことを持ち込んでくれるお客様を、
ピシコはずっと大事にしたいと思っています。















