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Ryzen 9000系ゲーミングPCが起動しない? EXPOとBIOS更新まで行った診断事例

今回は、ゲーミングPCの診断をご依頼いただいた際の事例をご紹介します。

症状としては、Windowsがそのまま起動せず、BIOS画面を経由しないと立ち上がらないというもの。さらに別件として、使用中に突然電源が落ちることがあるというご申告もありました。

こういう症状は、最初に話だけ聞くと「熱暴走かな」「電源ユニットかな」と思いがちです。
ですが、実際には原因がひとつとは限りません。今回も、診断を進めるうちに「起動しない問題」と「突然落ちる問題」は、分けて考えるべき内容だと分かってきました。

今回お預かりしたPCのおおよその構成

今回確認した範囲での、おおよその構成は以下のような内容でした。

  • CPU:AMD Ryzen 9000系
  • マザーボード:ASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFI
  • メモリ:DDR5 32GB構成
  • CPUクーラー:NZXT系の240mmクラス簡易水冷
  • グラフィックボード:搭載ありのゲーミング構成
  • ストレージ:NVMe SSD構成
  • 用途:ゲーム用途を想定した高性能PC

CPUクーラーについては、正式な型番までは断定していませんが、見た目や構成からNZXTのKraken系に近い簡易水冷と見てよい内容でした。

Windowsが起動しないように見えて、実はBIOSが止めていた

まず最初に確認したのは、Windowsが起動しないように見える症状です。起動時の画面を確認したところ、BIOS上でCPU Fan speed detection errorというエラーが出ていました。

この表示が出ると、マザーボード側が保護動作として起動を止めてしまうことがあります。つまり、お客様から見ると「Windowsが起動しない」ように見えるのですが、実際にはWindows以前の段階でBIOSが止まっていたわけです。

ここで大事なのは、「CPUファンエラー=本当に冷えていない」とは限らないことです。

簡易水冷の配線とBIOS監視が噛み合っていなかった

今回のPCは、空冷ファンではなく簡易水冷でした。確認したところ、ポンプ回転は AIO_PUMP 側で正常に検出されていました。

BIOS上で確認した内容では、

  • CPU温度はおおむね30~40℃台
  • パッケージ温度も大きな異常なし
  • マザーボード温度も正常
  • AIOポンプ回転数も正常に表示

という状態でした。つまり、CPUクーラーが壊れていて冷えていないわけではなかったのです。

今回の原因は、簡易水冷の接続方式と、BIOSが見ているCPU_FAN監視の条件が一致していなかったことでした。

簡易水冷では、ポンプをAIO_PUMP端子で管理している構成がよくあります。しかしマザーボードによっては、CPU_FAN端子から回転信号が来ていないと「CPUファンが検出できない」と判断して起動を止めることがあります。

まさに今回はこれでした。

BIOS設定を調整し、通常起動を回復

このため、BIOS内のCPUファン監視設定を確認し、現在の簡易水冷構成に合わせてCPUファン回転数下限の監視条件を調整しました。これにより、起動時のCPU Fan speed detection errorは解消。

結果として、BIOS画面を経由しなくても、通常通りWindowsが起動する状態に改善しました。

ここでのポイントは、ただ警告を消したのではなく、実際にポンプが回っていること、温度が正常であることを確認したうえで設定を合わせたという点です。この確認なしに適当にエラーを無視するのは危険ですが、今回のように構成が把握できているなら、正しい方向の調整になります。

ただし「突然電源が落ちる」症状は別問題

一方で、お客様が気にされていた使用中に突然落ちる症状については、これは別件として扱うべき内容でした。なぜなら、BIOS上の温度は正常で、ポンプも回っており、少なくともその場の確認では熱暴走を主原因と断定しにくい状態だったからです。

こういうとき、修理では「ひとつの原因で全部説明しようとしない」ことが大切です。

今回の整理としては、

  • Windowsが起動しない件
    → CPUファン監視設定と簡易水冷構成の不一致
  • 使用中に突然落ちる件
    → まだ別要因の可能性があり、切り分けが必要

という形になりました。

EXPOが有効だったため、切り分けとして無効化

次に確認したところ、BIOS設定ではメモリの高速動作設定であるEXPOが有効になっていました。

今回の環境は、Ryzen 9000系CPUにDDR5メモリ32GB構成。こうしたAM5環境では、BIOSやAGESAの熟成状況、メモリ相性、EXPO設定の影響で、起動不安定や使用中の不安定症状が出ることがあります。

そのため今回は、突然電源が落ちる症状の切り分けとして、EXPOをいったん無効化しました。これは「性能を落として使うため」ではなく、あくまで不安定の原因がメモリ高クロック動作にあるかを見極めるための作業です。

実際、診断ではまず安全寄りの基準状態へ戻し、そこからどこで不具合が出るかを確認していくのが基本です。

BIOSも更新し、安定性改善を実施

マザーボードはASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFIでしたので、BIOS更新履歴も確認しました。

この機種では、Ryzen 9000系やDDR5高クロック動作に関する安定性改善、起動エラーの修正、メモリ互換性向上などが、複数回にわたって行われています。今回の症状とも関係しそうな内容が見られたため、BIOSは段階的に更新しました。

  • まず Ver.3827
  • その後 Ver.3841

まで適用しています。3841はベータ版ではありましたが、内容としては

  • DDR5高周波動作時の安定性改善
  • Ryzen 9000系構成での起動エラー改善
  • 安定性問題の修正

などが含まれており、今回の診断内容とかなり関係が深い印象でした。

分解清掃と内部メンテナンスも同時に実施

今回の作業では、診断だけではなく、内部の分解清掃も実施しました。ケース内部には埃の蓄積が見られたため、

  • 本体内部の分解確認
  • 埃の除去
  • ファン周辺の清掃
  • エアブローによる内部清掃
  • 冷却まわりの状態確認

を行っています。ゲーミングPCは性能が高いぶん、吸排気量も多く、時間が経つと内部にかなり埃を抱え込みます。これが直接の主原因ではなかったとしても、冷却効率や今後の安定性に影響するため、内部清掃は非常に大切な作業です。

今回の診断で分かったこと

今回の内容をまとめると、次のようになります。

まず、Windowsがそのまま起動しなかった原因は、CPUファン故障ではなく、簡易水冷構成とBIOS監視条件の不一致でした。このため、BIOS設定を適切に調整することで、通常起動は回復しました。

一方で、使用中に突然電源が落ちる症状は別件の可能性が高く、EXPO設定やBIOSの安定性要素を含めて切り分けを進める必要があるという判断になりました。

このため、EXPO無効化とBIOS更新を行い、安定性優先の状態へ調整しています。

症状をひとつにまとめないことが大切

今回の事例で改めて感じたのは、複数の症状を全部ひとつの原因にしないことの大切さです。

  • 起動できない
  • BIOSでエラーが出る
  • 使用中に突然落ちる

これらは一見すると全部つながっているように見えます。ですが実際には、別々に原因を持っていることも珍しくありません。

今回も、

  • 起動停止はBIOS監視設定の問題
  • 突然落ちる件は別切り分け対象

というように、原因を分けて考えることで、かなり見通しがよくなりました。

Ryzen 9000系+DDR5対応ASUSマザーは安定してきたってこと

今回のゲーミングPCは、Ryzen 9000系CPU、ASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFI、DDR5 32GB、NZXT系簡易水冷という構成の中で、起動不具合と動作不安定が重なっているケースでした。

診断の結果、Windowsが起動しないように見えていた原因は、CPUクーラー故障ではなく、簡易水冷とBIOS監視設定の不一致による起動停止でした。また、別件の突然の電源断については、EXPO設定やBIOS安定性も視野に入れ、切り分けを進める内容となりました。

あわせて、内部清掃、ファン周辺清掃、埃除去、エアブロー清掃、BIOS更新も実施しています。

ゲーミングPCは高性能なぶん、不具合の原因もひとつではないことがあります。だからこそ、決めつけず、温度・配線・設定・BIOS・メモリ構成などを一つひとつ確認しながら進めることが大切です。同じように、

  • BIOSエラーで止まる
  • 簡易水冷なのにCPUファンエラーが出る
  • Windowsが起動しない
  • 使用中に急に落ちる
  • ゲーミングPCの内部清掃も含めて見てほしい

といった症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。