
Razer Blade 18から考える
先日、こんなノートPCが発表されました。GeForce RTX 5090を積んで、価格は85万円〜111万円、重さは3.2kg。Razerというゲーミングブランドが出した「Razer Blade 18」という製品です。
ニュース記事の見出しには「ゲームとAI開発を両立」と書いてありました。ゲーミングノートがAI開発機を兼ねる、という話です。
「へえ、すごいなあ」で終わってもいいんですが、ちょっと待って。これ、本当に「ノートPC」として買う人がいるの?という素朴な疑問が頭をよぎったんです。今日はその話をしようと思います。
難しい話は抜きにして、このPCがどんなものかを簡単に整理します。
| CPU | Core Ultra 9 290HX Plus(インテル最上位クラス) |
| GPU | RTX 5090 Laptop(最高グレード・VRAM 24GB) |
| メモリ | 32GB〜最大128GB(DDR5) |
| 画面 | 18インチ・4K+240Hz または WUXGA 440Hz |
| 重量 | 3.2kg |
| 価格 | 約85万6,000円〜(RTX 5090搭載・32GBモデル) |
数字だけ見てもピンとこないと思うので、比較感覚として言うと、一般的な家庭向けノートPCの10〜15台分くらいの価格帯です。修理店をやっている自分ですら「実物を触る機会があるのか?」という感じの製品です。
このPCの売り文句は「ゲーマーとAI開発者向けに設計された」というもの。ゲームはわかる。でも「AI開発」って何をするの?という疑問が湧きますよね。
簡単に言うと、最近のAI(特に生成AIや大規模言語モデル)は、動かすのにGPUの計算力とVRAM(GPU内部のメモリ)がたくさん必要です。ChatGPTとかClaudeはクラウド(AnthropicやOpenAIのサーバー)で動いているので手元のPCは関係ないんですが、「自分のPCで直接AIモデルを動かしたい」という開発者や研究者向けには、VRAMの容量がそのまま「何ができるか」の限界になります。
RTX 5090のVRAMは24GB。これは「個人の手元で、かなり本格的なAIモデルを動かせる」ラインです。ゲーミング用途とAI開発用途、どちらも同じGPUを使うので、「両方できる」という話になるわけです。
「AI開発」という言葉は難しそうに聞こえますが、要は「自分のPCでAIを動かす」ということ。普通の人がChatGPTをブラウザで使う感じとは違って、エンジニアや研究者が自前の環境でモデルをカスタマイズしたり、試したりするイメージです。
ここからが本当に言いたいことです。
3.2kgって、どのくらいの重さかというと、一般的なノートPCの2〜3倍くらいです。毎日カバンに入れて通勤・通学する人向けじゃないのは明らかですよね。18インチ画面ということもあり、「ノート」と呼ぶのが申し訳ないくらいの大きさです。
じゃあ、これを買う人はどんな使い方をするのか。おそらくほとんどの人は「デスクに置きっぱなしで使う」はずです。電源アダプターも相当大きいはずですし、バッテリー駆動でフルパワーを出し続けるのは現実的じゃない。
ただしその「持ち運び」は、机から机へ、部屋から部屋へ、という程度の話。カフェで広げるとかは正直ちょっと難しいサイズ感です。
これが正直なところ、一番核心をついた問いだと思うんです。
同じRTX 5090を使ったデスクトップ構成なら、価格はかなり下がります。冷却もしやすいので性能を安定して引き出しやすいし、メモリやストレージの拡張も自由。修理やパーツ交換のしやすさも段違いです。
それでもRazer Blade 18を選ぶ理由があるとしたら、こういう人だと思います。
- 出張や移動先でもフルスペックが必要
- デスクトップを置くスペースがない
- 1台にすべてまとめたい
- 外での発表・デモが多いエンジニア
- ほぼ自宅・オフィス固定で使う
- コスパを重視する
- 後から拡張・修理をしたい
- 重さ・サイズが気になる
修理屋の視点で言うと、ノートPCはデスクトップより修理の難易度も費用も高くなりやすいです。これほどのハイスペック機となると、壊れたときのパーツ調達や修理対応は相当ハードルが高い。買うなら最初からそこも計算に入れておいた方がいいです。
Razer Blade 18はほとんどの人には関係のないPCです。でも、この製品の発表には「時代の空気」が出ていると思っています。
ゲーミングノートという市場は、「より速く、より高画質に」を追い続けてきました。でもそれだけでは訴求しにくくなってきている。そこに「AI開発もできますよ」という新しい正当化の軸が生まれた。高い価格を納得させるための、新しいストーリーです。
そして面白いのは、ゲームのためのGPUと、AIのためのGPUが、同じハードウェアになってきたということ。数年前までは「AIを動かすにはNVIDIAの業務用GPU(何十万円もするやつ)が必要」だったのが、ゲーミング向けのGPUでもAI推論が現実的に動く時代になっています。
これは、普通の人たちの使うPCにも、少しずつ影響が出てくる話です。今すぐ関係なくても、数年後に「そういえばあのRazerの製品が先駆けだったな」となる可能性はあると思っています。
自分みたいなパソコン修理屋の目線で言うと、「高性能なのは間違いないけど、壊れたらどうするの?」という部分が気になります。性能が上がれば上がるほど、修理コストや依頼先の選択肢が限られてくるのが現実です。
買う前に「使い続けるための環境があるか」も含めて考えてほしいな、というのが正直な感想です。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/2108965.html
https://www.razer.com/gaming-laptops/razer-blade-18














